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レーヴァティン

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第百十九話 ナイル川へその七

「ここは」
「そうだよね」
「俺っちはこの戦術を知っている」
「確かこれは」
「トラファルガーだ」
 十九世紀初頭のイギリスとフランス及びスペインの連合軍との間で行われた海戦だ、イギリス海軍の司令官ネルソンはこの海戦で壮絶な戦死を遂げたが完勝しフランスのイギリス上陸への野心を砕いたとされている。
「あの戦いだ」
「そうだよね」
「敵は操船技術がいいな」
「それを活かしてかな」
「攻めてきているな」
「思い切ったことをしてきたね」
「そうだな、だがこちらもな」
「自信あるよね」
 剛は芳直に微笑みを向けて問うた。
「そうだよね」
「あの海戦ではフランス軍とスペイン軍は練度が低かった」
 イギリスの海上封鎖を受けていて海に出られず船を動かせなかったのだ、そしてフランス革命で多くの海軍士官である貴族達が処刑若しくは亡命していて人材不足でもあった。尚且つフランス海軍とスペイン海軍も相互不信の状況で連携も悪かった。
「それで通用したが」
「僕達の水軍は違うね」
「常に船を動かしてだ」
 それでとだ、芳直はさらに話した。
「湖賊やモンスター達とも戦ってきた」
「だからだね」
「フランスやスペインと違う」
 あの時の彼等とは、というのだ。
「だからだ」
「勝てるよね」
「確実にな」
 剛に確かな声で言い切った。
「そうはさせない、敵がそう来るならな」
「こちらはだね」
「敵の動きは速いが」
 それでもというのだ。
「迫る敵の軍船達をだ」
「大砲と術でだね」
「攻撃してだ」
 そのうえでというのだ。
「攻めていく」
「そうして倒すね」
「そうだ、それに俺達は船に乗り込んでな」
「うん、その時は僕の出番だね」
 剛は自身の武器である斧を出して芳直に応えた。
「その時は」
「そうだ、銃を持った兵も多くいてな」
「白兵戦も出来るしね」
「勝てる、備えは万全だ」
「ではね」
「敵がそう来るならな」
 三列縦隊での突撃、彼等が起きた世界で言うネルソン=タッチで来るならばというのだ。
「こちらも勝つ手段がある」
「じゃあここはね」
「それで勝つ」
 こう言ってだった、芳直は敵軍が射程内に入るとだった。
 各船に砲撃を命じた、そして術者達には甲板から術を放たたせた。そうしてまずは先頭の船からだった。
 次から次に攻撃を仕掛けた、ほぼ水平に放たたせている砲弾は敵の軍船達に命中していきまずは真ん中の列の先頭の船がだった。
 火を噴きだした、そしてその次には。
 右の列の船がそうなった、続いて左の列が。そしてだった。
 後続の船達は進路を変えてそれぞれの先頭の船を避けて進もうとした、だが芳直はその船達に対しても。
 攻撃を仕掛けた、進路を変えようとした船達はそこで攻撃を受けて彼等もだった。
 炎上し動きを止めた、それはさらに後の船達も同じだった。
 彼等は攻撃する間もなく次々と動きを停めた、芳直はその彼等を見て言った。
「あの戦術は弱点がある」
「そうだな」
 久志が答えた。 
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