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オズのキャプテン船長

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第三幕その九

「はじめて会ったね」
「そうよね」
「はじめて会ったけれど」
 それでもというのです。
「皆は僕のことを知っているかな」
「ええ、知ってるわ」
「白鯨さんだよね」
「白くて大きなマッコウクジラだね」
「僕達も知ってるよ」
「貴方は有名だから」
「そうなんだ、僕は有名なんだ」
 五人に言われてです、マッコウクジラはこうも言いました。
「そうなんだね」
「外の世界の小説で出ているのよ」
 恵梨香がお話します。
「それでなのよ」
「ああ、白鯨だね」
「貴方も知ってるのね」
「船長さんに前教えてもらったんだ」
 そうした小説があることをです。
「それで知ってるよ」
「そうなのね」
「ただね」
「ただ?」
「僕は鯨だから」
「あっ、いつも海の中にいるから」
「それで泳いでいるからね」
 だからだというのです。
「小説は読まないんだ」
「そうよね、やっぱり」
「お話を聞くことは出来るけれど」
 それでもというのです。
「読書は出来ないしね」
「しないのね」
「そうなんだ、だからその本を読んだことはないけれど」
「知っているのね」
「そうだよ、ただ僕人も船も襲わないから」
 このことはしっかりと言う白鯨でした。
「絶対にね」
「そうなのね」
「そんなことしないよ」
 本当に絶対にという口調でした。
「そんな怖いことは」
「ただ泳いでいるだけなのね」
「オズの国の海をね、この海には色々な生きものがいるけれどね」
「それは私も聞いてるわ」
「もうね、リバイアサンがいて」
「リバイアサンっていうと」
「とても大きな海のドラゴンだよ」
 それがリバイアサンだというのです。
「そしてオズの国の周りは一匹の大蛇が囲んでいるんだ」
「それはどんな大蛇なの?」
「ヨルムンガルドっていうんだ」
「ヨルムンガルドっていうと」
「北欧の神話に出て来るね」
「その大蛇よね」
「その大蛇はオズの国にもいて」
 そうしてというのです。
「オズの国の海を囲んでいるんだ」
「そうだったの」
「外の世界との境界ギリギリにいるよ」
「じゃあヨルムンガルドのいるところまでが」
「オズの国だよ」
「そこから先は外の世界ね」
「君達が本来いる世界だよ」
 そうなるというのです。
「外の世界だよ」
「そうなのね」
「それでね」
 白鯨はドロシーにさらにお話しました。
「海からオズの国に辿り着くことは出来るけれど」
「何かあるの?」
「オズの国に来る運命の人が来るんだ」
「じゃあそういった運命でないと」
「オズの国には来られないんだ」
「そうだったのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。 
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