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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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くえすと!

アイズさんとの訓練の後、朝食を取ってから出かける準備をする。

「来て、デュランダル」

呼び出したデュランダルを鞘に納める。

キン…と澄んだ音が響く。

部屋から出て、黄昏の館を出る。

門に、リヴェリアさんが寄り掛かっていた。

「お前もお人好しだな、ベル」

「こういうのが誉められた行為じゃないのは知ってます。
でも、ダンジョンの外でくらい、助け合っててもいいと思うんです」

「そうか、なら私は止めん。行ってこい、ベル」

「はいリヴェリアさん」







馬車に乗って街の外に出る。

「結構揺れるね。サスペンションとかないのかな」

「さす…?」

「こういう馬車とかの揺れを押さえる装置だよ」

「マジックアイテムですか?」

「魔法は使わないよ。バネを使うのさ」

「よくそんなの知ってますね」

「まぁ…色々あったのさ」

馬車に揺られながら、とりとめの無い話をすること数時間。

セオロの密林に到着した。

「ここでモンスターの卵をとるんですよね?」

「そう、ドロップアイテムとは違うモンスターの卵」

ダンジョンから出て地上に進出したモンスター達は、子孫を残す為に卵を生む。

モンスターに普通の動物みたいに種を残す本能があるとは思えないが、ともかく卵を生むらしい。

モンスターと普通の動物の違いは魔石の有無。

つまり地上のモンスターにも魔石はある。

そしてモンスターは繁殖の際自分の魔石を削り子に与えることで増えてきた。

同じ量のリソースから作られる個と群体。

言うまでもなく群体の個の力は弱くなる。

それを繰り返してきた結果、地上のモンスターには魔石がほとんど無く、力も弱いそうだ。

「ベル、これ」

渡されたのは小さなバックパック。

「中身はエサですか?」

「よくわかったね」

「つまり僕が囮ですか」

「目当てのモンスターを見つけたら開けて走って」

「わかりました」

密林の奥へと行くと、ナァーザさんに止まるよう言われた。

「あれが標的。ブラッド・サウルス」

「ダンジョンなら結構なモンスターですね」

「その口振りなら大丈夫そうだね。ナインヘルに教わったの?」

と言いながらナァーザさんがバッグの紐を解く。

「はい」

「そう…わかった。じゃぁ…」

トン、と背中を押された。

「頑張って」

「はい!」

女の子に『頑張って』なんて言われたら頑張らない訳には行かない!

それに、ちょうどいい練習になる!

「【我が百の瞳よ開け。真を映し嘘を見抜け。千里を駆け抜け闇を照らせ。虚ろを正し闇を見通せ】」

視界が広がる感覚と同時に、ヴェーダを使った時のような感覚。

魔力が減っていく感覚だ。

これじゃぁ持たない。

ここはヘルハウンドの巣じゃない。

バルグレンでの回復はできない。

視界を絞る。

自分の前方と、ブラッド・サウルスに固定。

「よし…」

まだ気づかれてない。

だから。

「ウウォオオオオオオオオオッッッ!!!」

「!?」

驚いたブラッド・サウルスが振り向く。

「僕についてこいトカゲ野郎!」

走り出すと、エサを求めてブラッド・サウルスが追ってくる。

後ろから来るブラッド・サウルスをしっかりと視界に納めながら密林を駆ける。

奴が足を止め、地面を踏みしめた。

次の瞬間、空気が揺れた。

大音響の咆哮が僕を揺さぶる。

「それがどうしたッッ!」

ダンジョンの外のモンスターの咆哮なんて、ただただうるさいだけだ。

アイズさんの殺気と比べれば、この程度。

振り返り、奴を見据える。

「そう、そこだ。その方向なら、撃てる」

デュランダルを担ぐ。

「行くよデュランダル!」

担いだデュランダルに力を吸われる。

チャージした分だけ、威力は上がる。

ブラッド・サウルスがこちらを攻撃すべく、背を向けて尻尾で薙ごうとした。

それを、飛び上がって避ける。

そして…。

「不滅の刃よ! 眩き光で万象を断て!」

振り下ろしたデュランダルから、斬撃が放たれた。

三日月形のそれがブラッド・サウルスの中心を貫いた。

side out












黄昏の館から、三人の女性が出てくる。

主神であるロキの傍らにナインヘルと剣姫が控えている。

「さーてほな、ディアンの奴脅しに行こか」

ロキの言ったことに対し、リヴェリアは頭に手を当てる。

「言い出しっぺではあるが…はぁ…」

「そんな顔すんなやリヴェリア。大丈夫やて」

「そもそもこの件はカードとして取っておくべきだと言っただろう?」

リヴェリアが報告したのは、ディアンケヒトが法外な値段でアガートラムを売り付けたという事だ。

私情で商品の値段を吊り上げる商人は信用出来ない。

と、リヴェリアはロキに警告したのだ。

それを聞いたロキはその事を山車にしてディアンケヒトを脅そうと考え付いたのだ。

普通ならばそんな脅しは無意味なのだがそこはオラリオ最大派閥でありディアンケヒトファミリアの大口取引先。

それこそ、ロキの一言でディアンケヒトファミリアは潰れかねない。

「ディアンとミアハの中の悪さは折り紙つきや。
ま、息子の方が有能やったら親としては目の上のたん瘤やろな」

「だからといってアイズまで連れてくるのはやりすぎではないか?」

「大丈夫大丈夫。ディアンなら要求飲むよ。そっちの方が安う済むしな」

「はぁ…」

で、そのアイズはと言えば。

(明日はベルを独占していいってロキが言ってた。
どこ行こうかな)

と呑気なものだった。
 
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