前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話
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へぶん
ベルがフレイヤとデートした日の夜。
ロキの私室にて。
「ベル、魔法発現したで」
「本当?」
「嘘言うてどないすんねん」
ロキはベルの上から退くと、ベルに紙を渡した。
[〈孔雀の翼-アルゴス・アイ〉
左目にマインドを集め、透視、千里眼、全方位視点、視覚補正、暗視等を行う。距離や精度はつぎ込んだマインドに依存。
詠唱【我が百の瞳よ開け。真を映し嘘を見抜け。千里を駆け抜け闇を照らせ。虚ろを正し霧中を見通せ】]
「…………地味」
「そうかぁ? ダンジョンで視界補助は重要ちゃうん?」
「なるほど…それに千里眼があれば弓の射程も……」
「試しにどれくらい視界ひろげられるかやってみぃ」
ベルが渡された紙の詠唱文に眼を走らせる。
「【我が百の瞳よ開け。真を映し嘘を見抜け。千里を駆け抜け闇を照らせ。虚ろを正し闇を見通せ】」
ベルの左目に、魔力が集まる。
「どうや?」
「いや…特に変化は…」
「んー…じゃぁ自分の背中見ようとかんがえてみぃ」
ベルがロキに言われた通りの事を思うと、背中が見えた。
道化師のエンブレムと、ヒエログリフが書かれている。
「あ、見えた」
「ふむ…セミアクティブ系…考えるだけで発動するんか……ベル、覗きにつこうたらアカンで」
「のぞかないよ!」
「ま、ぶっちゃけティオネ以外なら覗いてもおとがめなしやろ。
ベルは好かれとるからなー」
「だからのぞかないったら!」
「服の下透視するのもやでー。いやベルの瞳ちょーっと光っとるから目の前でならわかるか……。
ベル覗くなら部屋の中からのぞくんやでぇ」
「………ロキのは透視しないから安心していいよ」
強烈な意趣返しがロキを襲う。
「ぬぐ…言うやないか」
「ロキを透視するくらいならリリかティオナさんを透視するね」
「はぁ!? 」
「あ、ヘスティア様もなかなか…」
「ベル!? ウチぎゃん泣きするで!?」
ベルをからかっているつもりがいつの間にか攻守逆転していた。
「じゃぁ僕もう寝るから」
ベルが服を着ながら出て行く。
「ぬぁ!? 勝ち逃げされたぁ!?」
その晩、ベルはダンジョンに来ていた。
十四階層の、ヘルハウンドの巣の近くだ。
「【我が百の瞳よ開け。真を映し嘘を見抜け。千里を駆け抜け闇を照らせ。虚ろを正し闇を見通せ】」
真昼のように明るくなった視界。
ベルが駆け出す。
無数の穴のある場所に出る。
「バルグレン」
ベルが焔の双剣を構えると同時、周囲の穴から一斉に炎が放たれる。
辺りがオレンジ色一色に染まった。
ヘルハウンドの火炎放射によって地面がこげる。
だが、その炎もベルには届かない。
灼熱の炎はベルを取り囲み渦を描き、双剣に吸われていく。
「フランロート」
双剣から溢れた焔がベルを包む。
ベルが駆け出す。
敏捷と筋力がもたらした一歩の踏み込みが、ダンジョンの地面を僅かに凹ませた。
ヘルハウンドは飛び出してきたベルを見て勝利を確信した。
燃える中での最期のあがきだと。
だが、焔の雷と化したベルによって、一撃を受け、消えない焔で内側から焼かれて行った。
「見える!」
ベルはヘルハウンドの炎の中でもはっきりと敵が見えていた。
その炎を壁にして、ヘルハウンドへ接敵。
斬りつけた後、即座に火線を辿り、また斬りつける。
首を、顔を、腹を、背を。
一撃でも受けたなら消えない焔が毒のようにまわる。
そして火線の元を全て灰にした後。
「見えてるよ。オルトレスク」
バルグレンが輝き、幾つかの穴から肉の焦げる音がする。
オルトレスク。
任意の場所の温度をあげる竜技。
任意の場所、つまりは知覚できる場所。
今のベルに、死角は存在しない。
「行ける…」
「何処にいくの?」
「これ以上ソロで下層には行かせねぇからな」
「うっ……この声は……」
ベルが振り返る。
「アイズさん…ベートさん…何故ここに………」
「ロキの命令だよ。魔法が発現したからお前が夜ダンジョンに行くだろうってな」
「ベルが一番よく使う竜具はバルグレン。バルグレンを使ってベルが戦う時一番相手をしやすいのはヘルハウンド。
さらにベルが試したい魔法の効果を考えれば、ここしかなかった」
質問に完璧に答えた二人に、ベルが肩を落とした。
「僕そんなに分かりやすいですか?」
「「うん」」
ベルがため息をつく。
「おら、帰るぞ。さっさとゲート開け」
「はい…」
双剣が燃え上がり、焔が闇と化す。
ベルが構えた大鎌を振った。
「アイズ、先行け。俺はウサギが逃げねぇよう後ろから見てる」
「わかりました」
アイズがヴォルドールをくぐり、ベル、ベートと続いた。
ベルがヴォルドールを閉じた時。
トン、とベルの首筋にベートの手刀が落ちた。
崩れ落ちたベルをアイズが受け止める。
「寝るか」
「ん」
翌朝、ベルはヘヴン状態だったがヘヴンすぎて即座に気絶した。
「プークスクスクス…童貞ワロタ」
「レフィーヤ先輩と同じ部屋に閉じ込めますよモビーさん?」
「あ、はい、スイマセン」
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