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戦国異伝供書

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第五十一話 関東管領就任その十五

「織田殿は是非わしの家臣にしたいしのう」
「そこは、ですな」
「どうしてもですな」
「お館様としても」
「引き下がれませぬな」
「そうじゃ、あの御仁を迎え入れて」
 そしてというのだ。
「長尾殿もと考えておるしな」
「だからですな」
「今川殿に便宜を計り」
「そしてですな」
「織田殿は」
「わしの左腕、長尾殿は右腕よ」
 そうしていくというのだ、晴信は家臣達に話して出陣した。だがここで幸村はふと父昌幸に対して言った。
「お館様はこれを機に越後には」
「長尾殿がおられぬうちにか」
「はい、さすればです」
 越後を攻めればというのだ。
「その時は確実にです」
「長尾殿は戦を止めるな」
「ご自身の国が攻められると」
 そうなればというのだ。
「必ず兵を退かせます」
「そうであるな、当然お館様もじゃ」
「そのことはおわかりですな」
「うむ、しかしじゃ」
「ここであえて越後を攻めると」
「長尾殿は確実に越後に戻られてじゃ」
「当家とですか」
 ここで幸村もはっとなって言った。
「戦に入ると」
「そうじゃ、若し甲斐から信濃に向かえば」
 その時点でというのだ。
「長尾殿はすぐに越後まで戻る、そしてあの城はじゃ」
「春日山城ですか」
「少しの兵が守れば」
 それでというのだ。
「それで難攻不落となる」
「そして我等が攻めあぐねている間に」
「長尾殿が戻って来る」
「だからですか」
「越後攻めはな」
「一見それがよさそうでも」
「いかぬ、それにお館様は」
 晴信、彼はというのだ。
「長尾殿とそうした戦は望まれておらぬわ」
「そう言われますと」
「お主にもわかるな」
「はい、お館様は長尾殿とはです」
 まさにとだ、幸村も述べた。
「正面からです」
「堂々と戦われてな」
「雌雄を決されたいですな」
「その様にお考えであろう」
「はい、おそらくは」
「だからじゃ」
 晴信がその様に考えているからだというのだ。 
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