ドリトル先生と姫路城のお姫様
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第十二幕その三
「やっぱりね」
「これがイギリス軍だと」
「紅茶一択だね」
「それもストレートティーかミルクティー」
「どっちかだね」
「僕もそう思うよ、これまでのお料理も美味しかったけれど」
先生はここでレーション全体の感想を言いました。
「一番美味しかったのはね」
「紅茶だね」
「それが一番だったね」
「紅茶が第一」
「そうだったんだね」
「うん、最後の紅茶がね」
まさにというのです。
「一番嬉しくて美味しいね」
「それは何よりだね」
「じゃあ先生も満足したのね」
「そうだよね」
「満足しているからこう言うんだよ」
まさにというのです。
「心からね」
「美味しいものを食べられてイギリスの料理文化の向上も感じられた」
「だからだね」
「本当によかったって思ったのね」
「先生も」
「そうなのね」
「先日の宴もよかったけれど」
姫路城のお姫様が開いたそれもというのです。
「それでもね」
「今回もだね」
「よかった」
「美味しいものを食べられて」
「それでそう思えたのね」
「心からね」
先生は笑顔でした、そしてその笑顔のままお家で論文の執筆に取り掛かりその論文も遂になのでした。
「脱稿してだね」
「さっき学会に送ったよ」
先生は次の日研究室で王子にお話しました。
「泉鏡花のそれをね」
「天守物語だね」
「今回は日本語の論文だけじゃないんだ」
「英語の方でもだね」
「そしてイギリスの学会にも送ったよ」
そちらにもというのです。
「そうしたよ」
「イギリスにも泉鏡花を紹介する為にだね」
「もっと知られてもいい作家さんだからね」
こう思うからとです、先生は王子に言うのでした。
「世界的にね」
「確かにいい作家さんだね」
「日本の幻想文学の歴史は実は長いけれど」
「泉鏡花さんもその中にいるんだね」
「明治から昭和にかけての幻想文学の第一人者だよ」
そう言っていいというのです。
「あの人はね」
「だからイギリスの学会にも論文を送って」
「世界的に知られて欲しいと思っているんだ」
「だから英語でも書いたんだね」
「その分普段よりも時間がかかったけれど」
論文の執筆にというのです。
「けれどね」
「苦労の介はあったかな」
「泉鏡花が世界にもっと知られることを望むよ」
「先生の苦労はいいんだ」
「僕は苦労していたか」
その問題はといいますと。
「別に苦労と思っていないから」
「そうなんだ」
「時間はかかったけれど楽しく調べて書いていたから」
だからだというのです。
「苦労とは思わなかったよ」
「そういえば先生は学問のことだとね」
「いつもこうだね」
「そうだね、それで今みたいに言うんだ」
「そうなんだ、それでね」
それでというのです。
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