魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers
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第39話 お休みの予定を
――sideはやて――
「にしても意外やなー?」
「? 何がでしょう?」
隊長室に設置されてるテーブルで作業している響が首を傾げる。その対面に座る奏もや。
まぁ、突然のことやもんね、分かるはずもない。
「いやな、エリオとキャロのお兄ちゃんをやってる響がなー、ヴィヴィオからはお兄ちゃん扱いされてないことになー」
「あぁ、なるほど」
苦笑をしながら止まっていた手が再度動き出す。奏も響が何を考えたのか察したのかクスクスと笑っとる……。なんというかこの2人って……。まぁ、それはあとで聞いてみよう。
「響に限らず、私達って案外兄妹居ないんですよ。響と震離がある意味兄妹みたいなもんですケドね」
「え、いや……あー、まぁ」
恥ずかしそうに頬を掻いて、顔が若干赤いところを見ると誤魔化しきれてへんで響?
「それにヴィヴィちゃんの兄と言うか、姉は既に流が確立させてますしねー」
「ふ……はは、そうだな」
奏の一言に思わず吹き出してしまった。確かに思い返してみればなのはちゃんやフェイトちゃんが居ない時って、大体流に引っ付いとるもんなー。しかし、なんで流に引っ付くようになったんやろ?
「まぁ、きっとヴィヴィオは流の本質見抜いたんでしょ。ちょっと前までは落ち込んでたけど、いい人感が滲み出てるというか」
「流も遠慮してる所あるだけで、中身は凄くいい子というか、なんというか。この前のあの一件以降はちゃんと感情と表情出すようになりましたしねー」
2人の評価と言うか見方に思わずため息が漏れる。私はよう分からへんけど、流っていい子っていう所あったんやね。
そういや、ヴィータがあんなにこっそりサポートできるんだからいいやつだよって言っとったなぁ。
「ん? あぁそうか、はやてさんあんまり訓練見ないですもんね。アイツ分隊同士の訓練だと、フォローが凄い上手いんですよ。人を立ててくれると言うか、なんというか」
「文字通りの何でも屋。最近なのはさんもそれを鍛えようとしてるみたいで、何が苦手で、どういう局面で動きが鈍るか見ようって色々試してますよ」
ほー、そう言えばなのはちゃんも同じこと言うとったなー。しかし、皆色々見てるなー。私なんて、この前ロッサに流(女装)の写真持って詰め寄られたで。
はやての所にこんな子が居るって聞いたんだけど!? 今度合わせてもらってもいいかな?
って。いやー、ティアナが居ないタイミングやったし、男やって伝えたら流石に引くやろって考えたんやけど……引かなかったなぁ。逆に……。
それは本当かい? 是非合わせてもらってもいいかな? あぁ、勿論教会からの謝罪の品を持っていくからね。セッティング宜しく、じゃあね!
……アカン。嫌なこと思い出した。けど、近いうちって何時くるのか……コワイワー。
「はやてさんどうしました?」
「さて、終わったので、これで私達は戻りますねー」
おっと、気がついたら手伝いを頼んだ2人が作業を終わらせてもうてる。アカンアカン。
「ちょお待って。せっかくやし……お茶でも飲んでって」
「え、いや……しかし」
2人で顔を見合わせた後、気まずそうにしとる。
「ええよ。本当は私がせなあかん事を2人に手伝わせてるんやし、些細な御礼や。受け取ってくれると嬉しい」
この部屋に設置されてる冷蔵庫から、三人分のロールケーキを取り出して、テーブルに置く。ここまでしてようやっと観念したみたいで席に座り直した。それを確認してから、お茶の用意もして、よし。
「はい、どうぞー」
「「いただきます」」
それにしてもこの2人の正体が割れてから、ほんま色々助けられてるなーと実感する。始めは響の些細な一言からやったし。この書類は後回しでも良いと思いますよーって。
普通ならば一隊員……って言ったら失礼やけど、本来なら聞き流す所。やけど、その時の私は態度には出さなかったけど、割と追い込まれてたんよね。
そこでなんとなく代わりにやってくれると助かるわーって言ってみたら、良いですよって2つ返事で言ってくれたしなー。それ以来なんやかんやで頼るようになってもうた……、実は部隊長……と言うより艦長の仕事をしてたっていうのはやはり大きいなぁって。処理の手順は違えど、内容は同じってことで色々理解してるのは有り難い。
最近は奏も手伝ってくれて、大分楽になった。月日が経てば経つほど、どんどん処理する物が増えていくのに、今もこうしてゆっくり出来るのは、本当に有り難いんや。
あ、せや。
「響はなのはちゃんのお話受けるん?」
「え?」「ん?」
アカン、奏が一瞬メラッと燃えたように見えたけど……。
「あぁ、休みの日なのはさんの家の道場の件ですよね?」
「そうそう!」
よし、鎮火した、危なー!
「改めて断ろうかと。確かに気になるところですけど、急ぐ必要も無いですし。流石に俺だけ休みってのも変だなと」
「あー……休みの件やけど、近いうちそれぞれ両分隊に2日づつオフをあげようかなーと」
「え、公開意見陳述会も近いのに?」
「せやから休ませるんやよ」
そう言うと少し考えた後、納得したみたいや。まぁ、私もどうかと考えたけど、もし予言の内容が公開意見陳述会に来るとしたら、予言を阻止した後も暫く緊張が続く。その一発でスカリエッティを止められるとは考えられへんしね。
「まぁ、それでも行かないですねー。怖いし」
「そっかー。そしたら、休み貰ったら何するん? フェイトちゃんはエリオとキャロとで旅行いこうと計画立ててるみたいやけど?」
「……どうしよっか?」
「どうしようね?」
2人で、顔を見合わせて笑い合うのを見せられる私の立場にもなってもらいたいなー。悲しくなってくる……けど。この2人見てると、なのはちゃんとフェイトちゃんみたいにも見えるのはなんでやろ?
なんというかあの2人みたいに信頼し合うのは分かるけど、相棒感が凄いんよね。
「まぁそれは置いといて。そうすると流と震離が暇するのかね?」
「そうだね……フフフ、どうするんだろ?」
……おっと? 意味深な笑いやけど、なんや?
「響もはやてさんも気にしちゃ駄目ですよ」
心読まれた!? 響もむせこんどるし。
「ゲホッ、けほっ……、ま゛ぁそれはさておき……はやてさん?」
「な、なんや?」
あ、無理やり話題変えに来た。
「優夜達4人の配置決まったんですか?」
「……うん。彼らをランクをBに設定。そして、ロングアーチ所属の予備武装隊員。各小隊で欠けたりした時に入れるようにと、あくまで彼らは事務員として、な」
「……そうですか」
二人共残念そうに苦笑を浮かべとる。正直な所、彼らもどっちかに配置したかったけど、そうすると部隊保有制限に掛かりそうなのと、保険として置いときたい。そう考えた末の結果や。あ、でも。
「この事なのはちゃんに話したら、明日模擬戦するって言っとったで」
あ、二人共ガッツポーズ取った。いや、これは多分……。
「……そうか、久しぶりに揃うんよね?」
「えぇ、久しぶりに戦える。優夜とも煌とも」
「うん。時雨と紗雪と戦える。久しぶりにあの子達と」
2人の表情がわかりやすく生き生きし始めた。せやけどなー。
「優夜はまだやで。色々引き継ぎ案件が多いみたいで、明日は見学するだけって」
あ、響が落ち込んだ。
けど、明日の模擬戦は私も楽しみなんよね。煌達はあの日戦ったのはわかってるけど、煌は今一目立ってなかったし、紗雪は強くて、何か変わった術式を使ったことしか分からへん。時雨は対空弾幕を張ってたし。
明日はわかりやすく、優夜を除いた3人対、響達3人で模擬戦。楽しみやなって。だって、数年ぶりの戦いだしね。その為になのはちゃん、わざわざ3人のランクをAに戻すための申請書類を提出しとったし。
何はともあれ。明日は盛り上がるとええなぁ。
――side響――
やー、ロールケーキ食べたはずなのにあんまりお腹膨れないっすねー。いやほんと。それよりも話の内容が濃ゆかった。近いうち連休がもらえるだとか、明日あいつらとの模擬戦とか。色々楽しみですねぇ!
まぁ、それはさておき。現在の状況はと言うと。自分の仕事こなしてたら、フェイトさんに呼び出されたでござる。で、呼び出された場所に行ってみたら、フェイトさんも奏もそこに居て。直ぐに察する。これがはやてさんが言ってた件かなぁと。
「ごめんね響、奏?」
「いえ、大丈夫ですよ。どうされました?」
「うん、実は近いうちに各分隊で2日休みが貰えるんだけどね。エリオとキャロと一緒にリンディ母さんの所に遊びに行こうと考えてるんだけど……二人共一緒に行かない?」
あー、やっぱりかー。でもなー。ちらりと奏を見てみると、一瞬目があって。
「キャロに相談されてねー。私は行く予定」
「あー、なるほど」
んー、別に行っても良いんだけどなー。さて、どうするか。
すると、何かを思い出したようにフェイトさんが。
「一日だけクロノも帰ってくるし、また話をしたいって言ってたよ?」
「……あー、それはそれは……うーん」
少し考える。だけどなぁ。いやしかし……あー……丁度いいタイミングではあるのよな。よし。
「行きましょ。この前の御礼もしっかり言いたいですし、色々聞きたいというかなんというかがありますしねー」
「そう! 良かった!」
ニッコリと笑顔になるフェイトさんをみて、これでよかったのかなぁと思う。
この後、エリオとキャロに着いていくよと伝えたら凄く喜ばれたから、うん。これでよかったんだろう、きっと。
――side流――
「というわけでさ、流。これがアナタのリンカーコアの状況なんだけど、どう?」
「いえ……その、なんというか、はい。としか言えないです」
震離さんに呼び出されて、部屋に伺うと。何やら突然私のリンカーコアの流れ?を画像化されたものを見せられました。曰く、この滞ってる部分や、薄くなってる部分を復活させる事ができたら大分魔力効率等が上がると言われたんですが……。
「まぁ、突然言われてもわからないよね。あと流? 2人の時は敬語禁止?」
「……努力してます」
少し前に言われた敬語禁止令。なんとか直そうとしているのですが、なかなか難しいというかなんというか。
「で、やってみると大分変わるって実感してもらいたい……んだけど、流の場合、何回か施した上でじゃないと効果なさそうなんだよね。多分痛いと思うし……痛いだろうし」
「……そう言われても、何とも。ただ、我慢してみます。わざと痛くしちゃ嫌ですよ?」
「……ウン」
……何故か目を合わせてくれない震離さんに若干の不安を抱くけど……きっと大丈夫だと思う。
「で、私はどうしたら?」
「え、あぁ……そしたら、私のベッドにうつ伏せになってくれると有り難いかな。あ、服は脱いでインナーだけでね? ズボンはそのままで、腕は上げといてね」
そう言われてテキパキと何かの用意を始める震離さんを横目に、上着を脱いで適当に畳んで、震離さんのベットにうつ伏せになる。なんというか最近まで一緒に寝ていたので、ちょっと久しぶりの匂いを感じて、少し安心する。と言うよりも、これだけで眠くなる。
「よし、ちょっと触ってくよー」
この一瞬で少し意識が遠のいてたようで、気がつくと震離さんもベッドに上がっていた。
「はい、手は顎の下へ置いてねー」
言われたとおりに両手を顎の下に置いて。軽く深呼吸。さわさわと背中や肩、腰に続いてお尻から太もも、足先まで触っていくのが分かった。
「はい、検診が終わったから。楽にしててねー」
何か書き込んでいるようだけど、それ以上に眠くて仕方がない。ウトウトとしていると。
「うーん、肉体は全然問題ないんだけどなー、しいて言えば肩こりなんだけど、それ以上に触って分かったよ。魔力循環よくできてるね……」
後ろでため息を付く声が聞こえたけれど、そうなんだとしか思えなかった。震離さんから説明を受けている間も、よく分かってなかった。それでも運用できてるし、困ることではないと。
「それじゃあ、力抜いてね? 痛いと思うけど」
「了解です」
背中の真ん中に手を置かれた感覚を感じながら、少し警戒。痛いと言ってもそんなに……。
グッと力が入ったと認識した瞬間。
「……ッ!」
その瞬間、電気が走ったような痛みが背中を覆った。思わず首を竦めてしまう。
「あ、ごめん! 大丈夫?」
「……少し驚いただけですよ。どうぞ続けて下さい」
顔を見られまいと、顎の下に置いてた手を額に移動。思わず涙が出そうなほどだった。今のは一体?
「……それじゃ、行くよ?」
「……はい、どうぞ」
少し深呼吸をしてから、もう一度身構える。少し間を置いて背骨に沿って指圧を始まった。同時に凄まじい痛みが走る。だけど、背中に力を入れてしまっては震離さんに痛がってることがバレてしまう。
ぎゅ、ぎゅと、力を込められる度に、激痛が走り、思わず涙が出て来る。せっかくやってもらっているのに、痛がってしまっては申し訳ない。その一点で痛みを堪えるけれど、どうしようもなく痛いし、声が出そうになる。
それから、少し経った辺りで意識を手放した。
――sideギンガ――
なんであんなに控えめなんだろう?
今日戦ってみて、正直驚いた。私の左の一撃に合わせられるのはまだ分かる。リボルバーナックルを装備している以上見られるのは当然だ。
だけど、合わせられたのは右の早い連打。勿論当てるつもりで攻撃していたけれど、それでも回転をあげた時、その拳の引き際に合わせて踏み込まれたのは驚いた。早い右を見切られた、ということは。既に左も見切られてると考えるのは当然だ。
あれが自分を弱いと言う緋凰響。まだまだ底は見えないなぁ。
「……やっぱり、強いね」
「うん、もう少しで届きそうなのに届かないんだ、響は。だからいっつもエリオと一緒にどうしたら届いたんだろうって考えて、実践したらその上をいかれるんだよね。偶に撃ち抜けるけど、次からは通らないし」
悔しそうにマッハキャリバーを握りながら呟く。だけど。
「ギン姉も居る内に、もっと隠してるもの引っ張り出して、次こそ勝ーつ!」
うぉーっと両手をあげるスバルを見て微笑ましくなる。ふと、定期検診の事を思い出して。
「……スバル、私達の事は?」
「……話そうと思ってるんだけどね、だけど今日隠し事してたらどう思うって聞いてみた。そしたら、皆あるんだから気にするなって感じの事言われた。だから……その」
「……大丈夫、私も居るしティアナも居る」
「……うん、ありがとう」
まだ出会ってそう経っていないけど、きっと大丈夫。
――――
不思議な人達だと思う。響もだけど、アーチェも、同い年だって言うあの人達も。
響がいい人で、すごい人だって。でもわからないのが、アーチェも響を立てている。そして、それはあの人達も同じだ。
私も知らない、人を惹き付ける何かを持っているんだろうって。
指揮が上手いから、強いからじゃない何かが……。だから、艦長に成れたんだろう。スバルや私がお父さんに話した時には言ってたっけ。
だろうな、って。
多分、何かあるって分かっていたんだと思う。もっと言えば初めて会ったあの日からきっと。
あーあ。もっと早く出会いたかったな。
そしたら……もっと、ずっと……!
――sideフェイト――
割とすんなり応えてくれたのは意外だった。エリオとキャロにお休み出たら行こっか? って話をして、それなら誘ってみてもいいですかって言われた時は驚いた。
そしたら奏が応じてくれて、そのまま響も来てくれるっていうのは……ちょっと嬉しかった。
何か思う所はあったみたいだけど。それでも一緒なのは嬉しい。
まだ、叩いたい事を謝れていない。きっと気にしなくていいと言うんだろうけど……それでもだ。
何処かでタイミングを掴めたらいいなぁって。実家に帰った時に……いや、本局から依頼された調査任務に連れ出すか……。
もう少し時間があるんだ。それまでになんとかしていこう。
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。
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