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おっちょこちょいのかよちゃん

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13 武器を授けた本当の意味

 
前書き
《前回》
 組織「次郎長」と「義元」の決戦が始まった。その闘いは激戦となる中、すみ子の恐怖心が増していく。そしてフローレンスとイマヌエルはその戦いを止めるために二人の少女の元へと向かった!! 

 
 かよ子は胸騒ぎが収まらなかった。
(杉山君・・・!!)
 その時、誰かが窓を叩く音が聞こえた。かよ子は驚いて椅子から転げ落ちてしまった。
「いたたた・・・」
「山田かよ子君、私だ、イマヌエルだよ」
「イマヌエルさん!?」
「大変だ、とうとう争いが始まってしまったよ。止めに行かなければならない」
「うん、行くよ!」
 かよ子は家を出てフローレンスから貰った羽根を使い、宙に浮いてイマヌエルと共に秘密基地のある高台へと向かった。

 冬田の所にもフローレンスが現れた。
「冬田美鈴ちゃん、争いが始まりましたわ!」
「ええ!?」
 冬田もフローレンスから貰った羽根で空を跳んだ。
(大野くうん・・・)
 冬田とフローレンスは高台へと急いだ。

 「次郎長」と「義元」の戦闘は続く。まる子の熱風、ブー太郎の波攻撃によって山口、川村、ヤス太郎はやられた。杉山はヤス太郎の「眠り玉」を喰らった為、未だに寝ている。大野は川村の目眩ませを喰らって目が開けられなかったが、ブー太郎の反撃でやっと見えるようになった。
「よし、さくら、ブー太郎、後は基地にいる女子だ!俺は杉山を起こす!」
 大野はまる子とブー太郎に命じた。自分は杉山を起こそうとした。
「さあ、あんたの仲間はやられたよ!あんたまでやられたくなかったら降りてきな!」
 まる子が吠える。一方のすみ子は動けなかった。
「拒否するならこっちから行くブー!」
 ブー太郎が水の石の能力を行使する。水鉄砲を地面に打ち付け、上がった。
「や、やめて!」
 すみ子は銃を発砲した。しかし、ブー太郎に何のダメージはない。
「その銃、オモチャかブー?」
 ブー太郎は構わず水鉄砲を飛ばす。しかし、すみ子に当たらない。すみ子は銃で見えない壁を作り出していたのだった。
「な、お前も能力(ちから)があるのに何で戦わないブー?」
「う、それは・・・」
「すみ子!おい、やめろ!」
 山口、川村、ヤス太郎が再起して基地の入り口に近づいた。
「何だ、まだやる気か?しぶとい奴らだな!」
 大野は草の石を、まる子は炎の石を使おうとした。杉山はまだ起きない。山口も弓矢の、川村はバズーカの、そしてヤス太郎はパチンコの再支度を終えていた。
「お願い、皆もうやめて!」
 すみ子が嘆きの言葉を放った。皆は「えっ!?」とすみ子の方を向いた。
「すみ子君の言う通りだ、諸君」
 別の声がした。
「イマヌエルさん!?」
 すみ子は自分ら「義元」に武器を授けた相手が現れ、驚いた。
「大野くうん、喧嘩はやめてええええ!!」
「えっ、冬田!?」
 その場にイマヌエル、フローレンス、冬田、そしてかよ子が到着した。
「大野くうん!この子達は悪者じゃないわあ!」
「はあ?何言ってんだ?それから何でお前と山田が来たんだよ!?」
 大野は冬田の言っている事が理解できなかった。
「皆さん、下らない争いはお止めなさい」
 フローレンスが告げる。
「だ、誰だブー!?」
「私はフローレンス、そしてこちらはイマヌエル。私達は異世界から来て平和維持の為に動いています」
「異世界だと!?」
 大野は前に杉山やかよ子と共に異世界から来たというアレクサンドルとアンナの兄妹と対峙した時や石松と出会って草の石を貰った時を思い出した。
「君達、私が授けた武器を使う対照を間違えているよ。それからその武器を託した本当の意味を理解していない」
「え!?」
「今この世界はある人間達によって侵食され始めている。その人間達は自分達と同じ理想を持つ世界の者達と結託し、この世界、特に日本を再び戦争への道へ誘おうとしているのだよ。私は君達にそれを止め、この世界の平穏を取り戻す為にこれらの武器を託したのだよ。基地の取り合いの喧嘩の為ではない」
「う・・・」
 山口達は自分らの行為を愚かしく感じた。
「貴方達にも忠告すべきですわね」
 フローレンスは「次郎長」の面々にも諭さなければと思った。かよ子はブー太郎、まる子、大野を見て、そして杉山を見た。杉山は倒れていた。
「す、杉山君!!」
 かよ子は杉山がこの抗争でまさか殺されてしまったのではないかと思って杉山の元へ駆け寄った。
「杉山君、嫌だ、死んじゃだめ!!」
 かよ子は泣きながら杉山を起こそうとする。フローレンスが近づいた。
「大丈夫ですよ、山田かよ子ちゃん。杉山さとし君は眠っているだけです。今起こしてあげますわ」
 フローレンスは杉山の顔に手を当てた。そして5秒程で杉山は何もなかったかのように起きた。かよ子はまた自分がおっちょこちょいをしてしまったと己を恥ずかしく思った。
「・・・ん?何があったんだ?」
「杉山君、今まで寝ちゃってたんだよ!秘密基地の取り合いで!」
「ああ、そうか・・・。って山田あ!?何でお前が基地の事知ってんだよ!?」
「う、ご、ごめん・・・」
 かよ子は謝るしかできなかった。もう杉山から嫌われると思った。
「杉山さとし君」
「だ、誰だ!?」
「私はフローレンス。この世界の平和を維持する為に異世界から来た者です。山田かよ子ちゃんは貴方達に基地の取り合いの喧嘩を止める為に協力して貰っていたのですよ」
「秘密基地の事はフローレンスさんから聞いたんだよ。ごめんね、秘密を知っちゃって・・・」
「ああ、そうだったのか・・・」
「杉山さとし君、大野けんいち君、富田太郎君、そしてさくらももこちゃん。貴方達が持っていますのは森の石松から貰いました『力の石』ですわね?」
「あ、ああ、そうだ・・・」
 大野が答えた。
「石松は貴方達にその石を授けました時、何とおっしゃいましたか?」
 杉山は石松の言葉を思い出した。
《今この世界、特にこの日本は破滅へと導かれる危機にある。その石はそれを防ぐ為の鍵になるという事だ》
「貴方達が石の能力(ちから)を使いこなせていますのは素晴らしいですが、もっと倒さねばなりません敵はもっといるのです。石松の言いましたようにもっと大きな事に役立てなければなりませんよ」
「う・・・」
「そうだったぜ・・・」
「ごめんなさいブー・・・」
 フローレンスはイマヌエルの方を向く。
「イマヌエル。濃藤すみ子ちゃんにこの基地を見つけ、それらの武器を手にした本当の理由を喋らせてあげましょう」
「そうだな。すみ子君、皆にも話して解らせる時だよ」
「うん・・・」
 すみ子は基地から降りてきた。
「ごめんね、基地を勝手にとって・・・。私、実はこの前の地震のような現象があって、この町がどうなるのか恐くなっちゃったの。そしたらこのイマヌエルさんに会ってに日本が違う世界から攻められているって聞いたの。それでこの町を守りたかったらこの高台に行くといいって言われたの。そしたらここにイマヌエルさんが置いてくれた武器があって私達はそれを手にしたんだけど、そこにはこの基地があって登ってみたら見晴らしがよくて、私達の町まで見えてきれいだったの。表札を見て誰かが造った基地だってのは分かってたんだけど、この眺めをずっと見ておきたいって私が言ったら私の友達がじゃあここ俺達の基地にしようって言ってくれたの。全ては私のワガママが悪いの。ごめんね・・・!!」
 すみ子は少し泣きながら謝った。
「そうなんだよ、すみ子ちゃんは悪気はなかったんだよ!だから許してあげて!」
 かよ子もすみ子の肩を持った。
「そうか、お前らこの子の為にこの基地を乗っ取ったのか!」
 大野は基地を乗っ取った理由を知って驚いた。
「ああ、そうだよ・・・」
「色々悪かったな」
「でも、凄いよな、お前らあんな基地造るなんて、それにその石も凄いぜ!」
 山口は感心した。
「お前らだってそのイマヌエルって奴から貰ったその武器すげえ手強かったぜ!」
「ああ・・・」
「それから・・・」
 杉山はさらに続ける。
「俺達、この前異世界から来たって奴と闘った事があるんだ。今後そういう奴が来る可能性はある。その時は何かあったら共に協力しねえか?」
「本当でやんすか!?」
 ヤス太郎は驚いた。
「ああ、そうだな。これから何が起こるか分からないしな」
 川村は賛成した。
「あのさ」
 かよ子は皆に聞く。
「この眺めを見るくらいなら基地に上がらせてもいいじゃない?」
「山田・・・。ああ、そうだな」
 杉山は賛成した。
「かよ子ちゃん、ありがとう」
「いやあ・・・」
「君達が分かってくれたなら、私達はそろそろ行こうか」
「そうですね」
 フローレンスとイマヌエルは宙に浮きだした。
「あ、あのお!」
 冬田は二人を呼び止めた。
「何ですか?」
「この羽根は持っていていいんですかあ!?」
「はい、困った時にお使いください。貴方達がこの世界を守る為に大いに役立てる事を期待しています。それでは」
 フローレンスとイマヌエルは空を高く上がっていく。そして見えなくなった。
(フローレンスさん、イマヌエルさん、私、この世界守るよ・・・)
 かよ子は二人にそう誓うのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「これからの町の為に」
 二つの組織同士の和解に成功したかよ子達。杉山組織「義元」に自身が以前異世界からの敵と戦った事を告白する。そしてすみ子はこの清水を守る事を誓う・・・。
 
  
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