戦国異伝供書
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第五十話 再び向かい合いその八
「そしてです」
「公方様の権威もなくなり」
「それで北条家にです」
「古河においてですね」
「神輿にされています」
「左様ですね、ですが」
それでもとだ、政虎は言うのだった。
「その乱れをです」
「虎千代殿がですな」
「正しますので」
「それでは。そして虎千代殿が立たれたなら」
それならとだ、憲政はさらに話した。
「関東の多くの家がつきましょう」
「佐竹家や結城家等がですね」
「そうです、関東八家の多くが」
関東において名家とされ勢力だけでなく格も持っている彼等がというのだ。
「虎千代殿にです」
「ついてくれますか」
「そうなりましょう」
「それは何よりです」
「はい、ただ」
「ただ、とは」
「北条家は近頃伊達家と結んでいるとか」
憲政は奥州のこの家の名も出した。
「どうやら」
「伊達家ですか」
「はい、あの家と」
「そうですか、わたくしは奥州のことはよく知らないので」
越後の北が境を接している羽州のことは知っている、そちらの最上家や大崎家との関係は良好である。
「伊達家のことも」
「あまり、ですか」
「存じません、ですが佐竹家とですね」
「はい、仲が悪く」
関東八家のその家と、というのだ。
「戦になるやも知れぬとか」
「そうなのですか」
「伊達家の当主もかなりの御仁だとか」
「確か」
伊達家の主については政虎も知っていた、それで言うのだった。
「伊達藤五郎殿ですね」
「はい、伊達家の十七代目の」
「何でも右目が見えぬとか」
「その為独眼龍とも言われています」
「奥羽を席捲せんとしているとか」
「左様です、そして北条家ともです」
政虎が関東を乱すとしているこの家と、というのだ。
「結び」
「そうしてですか」
「そのうえで奥羽を手中に収めんとです」
「考えていますか」
「その様です」
「それはよくなきこと」
政虎は伊達家のことについてこう述べた。
「では関東の後は」
「奥羽をですか」
「戻しましょう」
「そして伊達家に対しても」
「正します、しかし伊達家は鎌倉の頃よりの家」
政虎もこのことは知っている、伊達家が古い名家であることを。
「関東では先程お話に出た佐竹家と並ぶ」
「奥州探題でもあります」
「実質的に守護職にありますね」
「そこまでの家です」
憲政も話した。
「伊達家は」
「そうですね、ですがそれでもですか」
「北条家や武田家の様にです」
「乱していますか」
「そうなのです」
「武田家の振る舞いも許せないですが」
甲斐の守護でありながら信濃を攻めて手に入れたことを言っているのだ、このことから政虎は晴信を幕府の定めに逆らう奸臣と言っているのだ。
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