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レーヴァティン

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第百十四話 長田にてその十一

「不安を感じることもじゃ」
「当然か」
「それが自然ぜよ、恋愛はじゃ」
 当季はさらに話した。
「戦や政とはまた違ったもんでじゃ」
「こちらはこちらでだな」
「怖いもんじゃ」
「成功するかどうかとだな」
「そうぜよ、だからじゃ」
「今の俺はか」
「不安を感じても当然ぜよ、ではのう」
 ここでお茶を飲んでだ、当季はさらに笑って話した。
「その不安とも戦って勝つ様にしてじゃ」
「そしてか」
「告白するぜよ」
「ではな」
 英雄は当季の言葉に頷きそのうえでお静を待った、そのうえでお静を本丸の御殿まで案内してその茶室でだった。
 二人きりになりだ、自分が淹れた茶を差し出して言うのだった。
「ここに来てもらった理由は他でもない」
「はい、文のことですね」
「そうだ、あの文に書いた通りだ」
「では」
「多くは言わない」
 自分にも茶を淹れつつの言葉だった。
「それはな」
「そうですか」
「返事を聞きたい」
「私からですね」
「そうだ、一言な」
 こうお静に言うのだった。
「いいか」
「はい、それでは」
 一呼吸置いて緊張した面持ちでだ、お静は頷いた。見れば町娘としてはいい着物だ。彼女が持っている服の中で一番いいものであるのがわかる。
 今の英雄から見れば質素な服だ、だが町娘としては見事なそれも見つつだ。お静からの返事を待つのだった。
 そしてその彼にだ、お静は言った。
「お願いします」
「それが返事だな」
「私でよければ。周りの人達にも相談しましたが」
「誰もが驚いていたな」
「返答に困っていましたが」
「では誰が決めた」
「私です、あの文にお心を感じました」
 英雄のそれをというのだ。
「ですから」
「そうか、俺の心をか」
「はい、ですから私でよければ」
「そう言ってくれるか」
「宜しくお願いします」
 深々と一礼しての言葉だった。
「是非」
「俺は女が好きだ」
 英雄は前以てこのことも話した。
「既に側室も多くいる。だが正室はな」
「まだで」
「その正室にだ」
「私をですね」
「そう思ってだ」
 お静を見て彼女に文を送ったというのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「今返事を貰った、ではな」
「これからですね」
「宜しく頼む、俺はこれから浮島を統一してだ」 
 そのうえでと言うのだった。
「それからだ」
「世界をですね」
「救う、ではいいな」
「その貴方の背中をですね」
「守ってくれ」
 こう言ってだ、英雄は茶を飲んだ。そしてだった。 
 お静も飲んだ、二人は二杯目は同じ碗の茶を飲んだ。英雄が自分の流儀でそうしようと言いお静も頷いてのことだった。
 二人はすぐに祝儀を挙げた、英雄は正室も迎えそうした時でもこれからのことを思うのだった。


第百十四話   完


                     2019・5・15 
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