ある晴れた日に
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565部分:鬼め悪魔めその一
鬼め悪魔めその一
鬼め悪魔め
次の日の朝だった。咲の家では珍しく家族四人揃っていた。大きなテーブルに揃ってそのうえで。母が作った朝食を採っているのだった。
レタスとトマト、セロリとブロッコリのサラダにベーコンエッグ、それとトーストといった欧風の組み合わせだった。そして飲み物は豆乳と野菜のミックスジュースだった。
「何か随分と健康的な朝食だな」
「そうだよね」
少し年配の眼鏡の男と太く短い眉をした精悍な顔の青年がそれぞれ言った。二人共白いワイシャツにネクタイといった格好である。
二人が咲の父と兄だ。二人はそれぞれそのトーストやジュースを口にしながら咲をそのまま成長させたような外見の中年の女性に対して言っていた。
「また最近どうしてなんだい?」
「夕食だってそうだし」
「気をつけてるのよ」
その彼女が言ってきたのだった。
「だからなのよ」
「気をつけてるのかい」
「健康に?」
「そうよ。まずは朝からよ」
こう二人に言うのである。
「しっかりと身体にいいものを食べないと駄目なのよ」
「成程、それでか」
「お母さんも考えてるんだね」
「ああ、考えたのは私じゃないわ」
しかし彼女はここでこう二人に話すのだった。
「私じゃないのよ」
「あれっ、っていうと」
「誰なんだい?」
「誰って一人しかいないじゃない」
母は笑って二人にまた話した。
「そうでしょう?一人しかね」
「じゃあ袴田さん?」
「あの人?」
家のお手伝いの人である。この家で長い間働いている人である。
「いや、流石袴田さんだよ」
「流石だよね。こういうところまで考えてくれてるなんて」
「袴田さんじゃないわよ」
だが母はそうではないと返すのだった。
「袴田さんは夕食のことを考えてくれてるけれど」
「じゃあ誰なんだよ」
「わからないけれど」
「咲よ」
ここで彼女が出してきたのは娘だった。
「咲が考えてくれたのよ」
「えっ、咲がかい」
「それ本当!?」
「嘘言ってどうするのよ」
自身もサラダを食べながら二人に返す。男二人女二人でそれぞれ向かい合って座りそのうえで朝食を採っているのである。その中での話だ。
「こんなことで」
「それはそうだけれど」
「咲がかい」
「そうなの」
ここでこの朝はじめて口を開いた咲だった。その野菜ジュースと豆乳をミックスさせた如何にも健康的なジュースを飲みながら話すのだった。
「最近毎日飲んでるし」
「飲むのはいいけれどな」
父がそれを聞いて言ってきた。娘が未成年で飲んでいるがそれについては全く言わない。
「やっぱり健康が第一だからな」
「だからなの」
こう父に答える咲だった。
「それで朝はしっかりって思って」
「いいことだ、それは」
父親らしく温かい包容力を見せて娘に告げた。
「後はそれで自分で作れば満点だ」
「今朝の食事は半分は咲が作ったのよ」
しかしここで母がまた言ってきた。
「ジュースとハムエッグはね」
「おっ、そうだったのか」
「そうよ。最近毎朝そうしてるのよ」
「咲がだったんだ」
兄もこれには驚いたようだった。トーストを持つ手が止まっていた。
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