ドリトル先生と姫路城のお姫様
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第九幕その五
「案を出してくれたし褒美をやろう」
「褒美といいますと」
「持って行くがいい」
こう言ってです、お姫様はぽんと手を叩くと控えていた一つ目小僧があるものを出しました、それはといいますと。
「少ないがのう」
「あの、これは」
先生も皆もその出されたものを見て驚きました、何とです。
それは小判でした、小判が十枚単位で重ねられています。お姫様はその膳の上に置かれた小判達を出させて言うのでした。
「百両じゃ」
「百両もですか」
「だから少ないがのう」
「いえ、少ないなんてとんでもない」
先生は驚いたまま言いました。
「これは」
「そうなのか」
「これだけあれば」
それこそというのです。
「今のお金に換えたら」
「これ凄い額ですよね」
トミーもこう言います。
「江戸時代は十両で一人が一年暮らせましたから」
「それで百両なんてね」
「凄い額ですよ」
「本当にね」
「妾の一日の暮らし分もないがのう」
お姫様はごく自然のお顔でした。
「だからじゃ」
「少ないですか」
「妾にとってはな」
「そうですか」
「問題ない」
お姫様にとってはです。
「だから遠慮せずにじゃ」
「それで、ですか」
「受け取っておくのじゃ」
「そうですか」
「何なら今の時代のお金に換えるか」
こうも言うお姫様でした。
「これからな」
「そうして頂けるのですか」
「ならばこれ位か」
こう言って出したのは札束でしたが。
「四千万あるぞ」
「四千万ですか」
「遠慮しては駄目であるぞ」
つまり絶対に受け取ってもらいたいというのです。
「よいな」
「では」
「その様にな」
こうしてでした、先生は四千万の謝礼を受け取りました。そのうえでお城を後にしましたが。
その四千万円分の札束をちゃぶ台の上に置いてです、先生は腕を組んでどうかというお顔で言うのでした。
「お金があるのは嬉しいけれどね」
「ううん、ちょっとね」
「これだけあるとね」
「困るよね」
「具体的にどう使うべきか」
「それはね」
「どうしようかな」
動物の皆も考えています。
「これは」
「どうしようか」
「この四千万円ね」
「ぽんと出されても」
「嬉しいことは嬉しくても」
「どうしようかしら」
「先生、どうするの?」
王子も先生に尋ねます。
「ここは」
「それがね、僕もね」
先生は王子にどうかという顔のまま答えました。
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