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レーヴァティン

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第百十三話 返す刀でその四

「ふてぶてしい」
「あまりにもな、それは自信の様に見えるが」
 その実はとだ、英雄はさらに話した。
「違う」
「悪事を悪事と思っていない」
「その性根が出てだ」
「ふてぶてしくなっていますか」
「そうした奴もわかる、だがそうした奴でも利があるなら裏切らないならだ」
 その場合はというのだ。
「それでいい」
「そうですか」
「タレーランやフーシェの様な奴でもな」
 フランス革命の激動を生き抜いた者達だ、二人共革命家に入れられることが多いがそれ以上に政治家であると言える者達だった。
「有能であるならだ」
「裏切る様な人物でも」
「利があるなら裏切らないならな」 
 それならというのだ。
「俺はいい」
「使いますか」
「なら利を出してだ」
 そうしてというのだ。
「それを与えてやる」
「そうして裏切させない」
「それだけだ」
「大胆でござるな」
 智は英雄の今の言葉に驚いて述べた。
「裏切る様な人物でも使われますか」
「やはり人によるがな」
「利があれば裏切らないならでござるか」
「それでいい」
「だからタレーランやフーシェであっても」
「流石に俺もあの二人は使いこなせないが」 
 英雄はこの二人についてこうも言った。
「怪物だからな」
「確かに。あの二人は」
「政治力と知力はナポレオン以上だった」
 このことは確かだった、二人共悪魔的と言えるまでの政治力と知力を持っていた。このことは紛れもない事実だった。
 だが資質と人格は別のものだ、それはこの二人も同じであり英雄もまた今彼等がいなかった世界でこのことについて言及するのだ。
「そして倫理観はなかった」
「政治的な」
「そうだ、なかった」
 一切とだ、英雄は言うのだった。
「怪物と言ってよかった」
「そしてその怪物達には」
「ナポレオンですらだ」
 歴史に名を残す彼ですらというのだ。
「敵わなかった」
「それが為にでござったな」
「二人に背かれだ」
「足を引っ張られたでござるな」
「そうして破滅に至った」
 これもまたナオレオン没落の要因であったのだ。
「二人はそれぞれフランスの外交と内政を司っていたが」
「ナポレオンの下で」
「その彼等に裏切られたからな」
「ナポレオンは破滅に至ったでござるな」
「そうなった、俺はナポレオン程ではない」
 自分の資質を見極めての言葉だった。
「だからだ」
「タレーランやフーシェの様な人物は」
「若しこの浮島にいるならだ」
 それならというのだ。
「流石にな」
「用いないでござるか」
「あまりに過ぎる、あの二人を用いられるなぞだ」
「この世にいないでござるか」
「ナポレオンですらだったのだ」
 またこう言うのだった。 
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