戦国異伝供書
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第四十八話 去った後でその十一
「ですから」
「それで、ですね」
「降った者は許し」
そしてというのだ。
「民達にはです」
「決して手出しをしない」
「奪うことも襲うことも」
そうしたこともというのだ。
「許していません」
「そのこともですね」
「わたくしはしません、無論この度もです」
関東への出陣の時もというのだ。
「それは誓いかつ」
「兵達にもですね」
「させません」
決してというのだ。
「そうしますので」
「そのことはまことにです」
「守っていきます、では」
「はい、これより」
「出陣です」
景虎は家臣達に馳走を出しふんだんに食わせた、そうして自ら黒い具足と陣羽織を身に着け黒い馬具を着けた馬に乗ってだった。
越後の兵達を率いて春日山城を出た。その目指す先は。
「まずは越後に入り」
「そしてですな」
政景が応えた。
「上野に進み」
「そしてです」
さらにというのだ。
「小田原に向かいます」
「小田原ですか」
「そこにです」
北条家の本城であるこの城にというのだ。
「向かいます」
「そうされるのですか」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「北条家を降し」
「そしてですか」
「そのうえで」
まさにというのだ。
「関東の公を取り戻します」
「その為の戦ですか」
「上杉様の願いは」
関東管領である彼の、というのだ。
「ですから」
「それを適える為に」
まさにというのだ。
「出陣してです」
「小田原まで向かい」
「そしてですね」
「あの城を攻め落とします」
「そうですか、ですが」
「あの城はですね」
小田原城はとだ、景虎も応えた。
「天下一の城とさえ言われる」
「ただ堅固ではなく」
「町さえも掘と石垣、壁で囲んだ」
「惣構えと呼ばれるです」
「とてつもなく大きな城ですね」
「異朝や南蛮では常とのことですが」
小田原の様な城はというのだ。
「ですが」
「本朝では他にない」
「そうしたです」
「とてつもない城ですね」
「ですから」
それ故にというのだ。
「攻めるにしても」
「容易には攻め落とせぬ」
「そうした城ということは」
くれぐれもと言うのだった。
「ご承知下さい」
「そうですね、しかし」
「小田原までですか」
「攻めます」
この越後からというのだ。
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