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【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-

作者:炎の剣製
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第016話 3日目・2月02日『平行世界での桜の真実』

 
前書き
更新します。 

 




――Interlude



「さて、本題に入るとしようか」

そのアーチャーのセリフによってセイバーは先ほどの気持ちと決意を今は置いておくことにして真剣な目つきになり無言で頷いた。
おそらくこれから話されることはシロ達との議題で上がった桜の事なのだろうことは容易く予想できる。
おそらくアーチャーは桜の事に関してもなにかしら知っているという事になるのだろう。
キャスターも志郎様のご友人の事だ、出来ることはしようと言う気持ちで話に集中した。

「本題とは、二人が思っている通り桜の事だ」
「サクラですか。先日に知り合いになりましたがシロの話を思い出す限り、マトウという家系の魔術師(メイガス)によってひどい仕打ちを受けているのでしょうね」
「そうね。私も直接会ってはいないけど、彼女からは薄幸そうな雰囲気が強く感じられたほどだからね。まったくいつの世になっても………」

そう言ってキャスターは歯ぎしりをする。
キャスターの過去を知っている者がいるのなら彼女の反応も疑いなく頷けることだろう。
彼女は女神アフロディテの呪いによってイアソンという男を盲目的に愛し父を、国を裏切り着いていったのにイアソンには裏切られて以降様々な不幸な目にあい裏切りの魔女とまで言われた過去があり、その過去の経験から自己嫌悪にも似た感情で薄幸の運命を背負わされている女性をとことん嫌う節がある。
同時にお気に入りになれば逆に好意の対象にもなる。これは辛い過去を持つ志郎がいい例だろう。


―――閑話休題


「ああ。桜は生前の私の前では志郎と同じように健気に振る舞ってくれた。しかし、私は最後まで彼女が抱えている苦しみを理解してあげることができなかった。
そしてこれは私の座に流れてくる様々な衛宮士郎の記録の事なのだが、衛宮士郎は数多くの平行世界で桜を………その手にかけて、殺している」
「なっ!?」
「………」

セイバーはそのアーチャーの告白に今日何度目かになる驚愕の表情を浮かべ、キャスターは神妙な顔つきになっていた。
『殺している』。
その単語だけ聞けばいかに衛宮士郎が犯した罪は重いことだろう。
しかし、それには訳があったのだ。

「言い訳をするつもりはない。それも私の罪なのだから…。
だが一つわかっているのは彼女も聖杯戦争の犠牲者だということだ」

そしてアーチャーの口から語られる桜の真実。

「………どういった訳で手に入れたのかは知らないが、間桐臓硯は第四次聖杯戦争の終結後に聖杯のカケラと言うものを手に入れたという」
「聖杯の、カケラ…? ッ! まさか!?」

セイバーはどういう事か分かったのか顔を青くする。

「あぁ。セイバーの考えていることで当たっているのだろう。
セイバーがエクスカリバーで破壊したはずの聖杯…。
しかし完全に破壊できずに破片が残ったのだと私は思う。
そして間桐臓硯はあろうことか桜の体内にその聖杯のカケラを移植してしまった…」

聖杯のカケラを移植。そこから推察できることは。

「アーチャー? つまり間桐桜と言う少女はあのイリヤスフィールという小聖杯を体内に宿している少女と同じく…」
「そうだ。キャスターのいう通り桜は小聖杯となっていたのだ」
「何という事だ…」
「ゲスね…その間桐臓硯とかいう魔術師は」

セイバーはその表情を悲痛そうに歪め、キャスターは間桐臓硯に対して不快を顕わにしていた。
それだけ間桐臓硯のやり方は非道に近いことなのだろう。
だがアーチャーはまだ話の続きがあるのだというように話を続ける。

「しかもだ。イリヤの小聖杯はまだ無色のままだったが、桜のは一度顕現したものをそのまま使っているためにこの世全ての悪(アンリ・マユ)を宿している大聖杯と繋がっているために黒い小聖杯だったのだ。
桜はこの世全ての悪(アンリ・マユ)に精神を汚染されてしまい、ある平行世界では聖杯戦争中に暴走をし冬木の町の人々を大量殺害していき結果は衛宮士郎に殺され、またある平行世界では第五次聖杯戦争から何年後かの世界線でまたも暴走して冬木の町を滅ぼしてしまい次は世界を滅ぼそうとしていた時に正義の味方として世界を回っていた衛宮士郎に殺され、一番酷かったのは世界の危機と言う状況にまで発展してしまい抑止力が発動し抑止の守護者(カウンター・ガーディアン)として呼び出された私に殺されている…」

そうアーチャーは語り終えて静かに目を瞑る。
おそらくその光景を思い出しているのだろうか…?
衛宮士郎は一つの世界に留まらず数多くの平行世界で桜と言う薄幸の少女をその理想ゆえに手にかけている。
それの集合体が今のアーチャーの姿なのだ。
まさに地獄も生ぬるいとはこのことか。
生きている時に自身を慕ってくれていた女性を殺し、死後に世界と契約して英霊になってからも何度も殺し続けている。

「サクラは抑止力が発動するほどの凶悪な力を秘めているのですね…アーチャー、あなたは何度も仕方なくですが彼女をその手で…」
「ああ。だから私にはいまさら彼女の手を直接取る資格はない。もしかしたら彼女を救えた世界もあるかもしれないが、そのような事例も稀な事だろう。
だが、今回は世界から意思を奪われただの殺戮兵器(キリングマシーン)と化す抑止の守護者(カウンター・ガーディアン)ではなく使い魔(サーヴァント)として呼び出された…。
だから手遅れになる前に桜を間桐臓硯の手から、いや聖杯戦争と言う呪いから救ってやりたいのだ」

そう言ってアーチャーは瞑っていた目を開いて真剣な目でそう言い切った。
その目にはやり遂げるという強い意志が感じられるほどだ。
そしてそのアーチャーの強い思いに共感したのだろうセイバーはアーチャーに負けず劣らずの強い意志を目に宿して、

「サクラを救いましょう! それがアーチャーだけではなく私にも課せられた役目だと今は感じています」
「そうね…薄幸そうな子は見ていて不愉快極まりないから私も手伝ってあげましょうか。もちろん志郎様のためですけどね」

キャスターにとっては志郎が第一優先であるためセイバーやアーチャーほど強い思いは抱けないが、だが志郎が関係していて尚且つ救おうとしているのなら手間を省いても救おうというスタンスである。

「すまない二人とも、恩に着る」

そう言ってアーチャーは頭を下げる。

「やめなさいアーチャー。あなたがそこまで頭を深く下げることはありません。これらはすべてこの聖杯戦争に関わっているものの罪です。ですから私にもその罪を背負わせてください。もとは第四次聖杯戦争での私の至らなさも原因の一つですし…」
「だが…」
「アーチャー? そこまで謙遜するのは私達にとっても不快だからやめなさい。見ていてあまりいいものではないから」
「…わかった」

それで少しばかり無言の間が続いた。
しかしそれは別段悪いものではなかった。
三人とも気持ちは一つと言うわけではないが今のところ腹の探り合いなどと言った陰気臭い物とはほぼ無縁の位置に座していたからである。

「それで? アーチャーはなにか彼女を救う良いプランは考えているのかしら?」
「あぁ。今回はキャスターが志郎に着いていたのはまさに僥倖と言えるかもしれない。神代の魔女である君ならまず桜を解放するのはそう難しいことではないのだろう…? そして君にはとんでもない“切り札”がある」

キャスターがそう尋ねるとアーチャーは“切り札”という単語を出した。
それはおそらくキャスターの宝具を指しているのだろう。キャスターは余裕の笑みを浮かべながらも、

「そう。さすが第五次聖杯戦争をマスターとして経験しただけの事はあるわね。私の真名や宝具を知っているのは必然と言ったとこかしら?」
「…いや、そんなことはない。実際ほとんどの記憶は摩耗してしまっていてほとんど使えたものではないし、世界からの制約でいまだにサーヴァント全員のことは思い出せない。
………だがある条件が満たされれば思い出せるのかもしれない。その条件はおそらくその特定の人物と関わりを持つことなのだろう。それで桜や凛、セイバーといった者達の記憶もある程度戻ったのだろう。
それがたとえご都合主義と言われようと構わない。有効に使わせてもらうさ」

アーチャーはそう言ってニヒルに笑う。
それに納得いったのかキャスターも満足そうに頷くのであった。

「それで私の宝具を必要ってことはまずは私の宝具、『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』で聖杯との繋がりを断ち切るって事でいいのかしら?」


キャスターの宝具、『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』。
それは裏切りの魔女メディアの伝説がそのまま宝具として昇華されて具現化した契約破りの短剣。
それを刺されたならば宝具でない限りは契約内容は破戒されて初期化されてしまう反則級の宝具である。


それを使うのならば桜の事はこれで一気に解決すると言ってもいい。
だがアーチャーは首を振った。

「それも必要な工程ではある。が、まずはキャスターのクラススキルである道具作成で作ってもらいたいものがある」
「なぁに? 言って見なさい」
「ああ。桜の体内に潜んでいる間桐臓硯の蟲を一気に抹消できる秘薬を作ってもらいたい」
「おお! その手がありましたねアーチャー!」

セイバーも納得がいったのか相槌を打った。
それにキャスターも了解の意も込めて頷き、

「なるほどね。聖杯との繋がりを断つ前に必ず邪魔をしてくるだろう間桐臓硯の蟲を一網打尽にするのね」
「そうだ。間桐臓硯はおそらくいつも桜の体内から我らの事を監視しているだろう。だからまずは蟲を殺すのが先だ」
「でも、それにはタイミングがいるわよ? まず正直にお嬢ちゃんが飲んでくれるという保証はないわ。気取られたらそこで体内の蟲が暴れ出すのは目に見えているわ」
「そうだな。だから今回はなにも知らない志郎にその薬を飲ます任を任せたいと思う」
「シロに、ですか…? アーチャー」
「うむ。桜が今一番信頼していて慕っているのは間違いなく志郎だろう。志郎がいうなら桜は間違いなく飲んでくれると思う。あと、志郎には秘薬の件だけは隠しておいた方がいい。………そうだな、ただの健康飲料とでも言って渡しておけばいいのではないか…?」
「そうね…」

それで少し考え込んだキャスターだったがすぐに結論がついたのか、

「その線で行きましょう。志郎様を利用するようで心苦しいけれど志郎様なら理解してくれるはずだわ」
「そうですね、シロなら大丈夫でしょう」
「そうだな。そして桜の体内の蟲が消えたのを合図にキャスターは破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を刺してくれ」
「了解したわ」

それからも三人は細かい作戦などを立てていきこうして夜は更けていく………。



Interlude out──



私はなかなか三人が帰ってこなかったので心配していたが一時を過ぎた頃に三人は帰ってきた。
それで少しばかり驚いた。
セイバーの表情はどこか憑き物が落ちたようなスッキリとした顔になっていたから。

「セイバー…? アーチャーとなにを話してきたの?」
「シロ…」

そう聞くとセイバーの表情は一変して泣きそうになり次いで私にいきなり抱き着いてきた。

「ひゃっ!? ど、どうしたのセイバー…?」
「すみませんシロ…すみません…」

セイバーはただただ私に謝罪の言葉だけを言ってきた。
なにがあったのかわからないけど、とりあえず私は気休めでもいいから背中をさすってあげた。
それから今夜はセイバーとキャスターと一緒になって寝ようとも言ったけどキャスターは少し用があるとのことで私の誘いを辞退した。何の用なのかな…?
とりあえず今日はセイバーと一緒のお布団で寝ることにした。
寝る前の際に、

「シロ…必ず無事に聖杯戦争を生き抜きましょうね」

そう再び誓いを立ててくれたので「うん!」と答えて次第に眠くなってきてそのまま私は眠りにつくのであった…。


 
 

 
後書き
セイバーとキャスターに桜の真実を知ってもらいました。
そしてやっとのこと三日目が終了です。


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