戦国異伝供書
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第四十七話 義に従いその十一
「誓いを立てましたが為に」
「そうされますか」
「そして武田殿は」
「殿の下にですな」
「入って頂き」
信濃を村上や小笠原に返したうえでというのだ。
「そしてです」
「この天下の為に」
「働いてもらいます」
こうも言うのだった。
「必ず」
「若しあの御仁が殿の家臣となれば」
「わたくしの片腕になってくれれば」
その時はというと。
「天下、正道はです」
「行えますな」
「そうなります、武田殿に」
晴信、彼だけでなくというのだ。
「織田殿も」
「尾張のですな」
「あの御仁もです」
「殿の家臣となってくれれば」
「それで、です」
「殿の目指される正道が為る」
「必ず、そして」
その時はというのだ。
「天下に泰平が訪れます」
「そうなりますか」
「世の者はわたくしを越後の龍と呼んでいるとか」
景虎はこうした話もした。
「そして武田殿は甲斐の虎ですね」
「その様ですな」
「織田殿は尾張の蛟龍であり」
「龍、虎、蛟ですか」
「面白いではないですか」
景虎は笑ってこうも言った。
「それはまた」
「面白いですか」
「龍と虎、蛟龍が一堂に会せば」
その時はというのだ。
「天下が定まるのなら」
「獣達がですな」
「それもまたよし、ただ」
「ただといいますと」
「どうも織田殿も」
信長、彼もというのだ。
「わたくしとは道が違います」
「確かに。織田殿は」
景虎も彼に感じていることを話した。
「天下にです」
「大きな野心を抱いておられますね」
「この天下を一つにされるとか」
「その様にお考えで」
「そして」
それで終わりでなく、というのだ。
「治めると」
「幕府についても」
「若し邪魔だと思われるなら」
その時はというのだ。
「廃することもです」
「されますか」
「わたくしはその様に見ています」
信長はというのだ。
「だからです」
「あの御仁については」
「武田殿よりもです」
今対している彼以上にというのだ。
「危ういものを感じています」
「では」
「いざとなれば」
その時はというのだった。
「私は武田殿だけでなく」
「織田殿もまた」
「正そうとです」
その様にというのだ。
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