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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第七幕その九

「それを読んでるんだ」
「ハムレットなんだ」
「ハムレットはハムレットでも」
「太宰のハムレットだね」
「だからまた趣が違うよ」
「ふうん、そうなんだ」
「だからね」
 それでというのです。
「また違うから」
「読んでいて面白いんだ」
「シェークスピアも独特の作風があるけれど」
「太宰もそうだよね」
「太宰節っていうかね」
「ああ、それあるよね」
 先生が今出した太宰節という言葉についてです、王子は気付いたお顔になってそのうえでこう言ったのでした。
「太宰の作品って」
「そうだね、それがね」
「その新ハムレットにもなんだ」
「出ているかな」
 そうかも知れないというのです。
「これがね」
「そうなんだね」
「僕は実はその太宰節が好きでね」
 先生はウイスキーも楽しみつつ王子にお話しました。
「読んでいて出たらついね」
「笑顔になるんだ」
「うん、出たなってね」
 そう思ってというのです。
「つい笑顔になってしまうよ」
「そうなんだね」
「あと新ハムレットの次は」
 先生は今読んでいる作品の次はということもお話しました。
「後期の作品だけれど冬の花火もね」
「それ普通にあるじゃない」
 冬の花火と聞いて王子はすぐに言いました。
「スキー場に」
「昔はスキー場はなかったじゃない」
「ああ、昔の日本には」
「スキーが日本にメジャーになったのは戦後だよ」
「戦前は珍しかったんだ」
「まだまだね、戦後暫くも」
 日本ではというのです。
「スキーは日本ではメジャーでなくて花火なんて」
「スキー場であげる様になったのは最近かな」
「そうだからね」
「じゃあ冬の花火は」
「太宰の頃は考えられないものだったんだ」
「そうだったんだ」
「日本ではね」
 太宰だけでなく日本自体でというのです。
「花火といえば夏」
「季語にもなってるね」
「江戸時代から大々的に打ち上げられる様になってね」
「日本では夏がそうで」
「今もだからね」
「スキー場で打ち上げてもだね」
「もう夏って決まってるから」
 日本ではというのです。
「太宰も作品に書いていたらしいよ」
「成程ね」
「本当に最近だよ」
 まさにともいう先生でした。
「スキー場でも花火が打ち上げられる様になったのは」
「成程ね」
「太宰もその時代の人だから」
 昭和前期に活躍した作家さんです。
「その時代の感性や常識からね」
「考えて書いているんだ」
「そうしたものだから」
 それ故にというのです。
「冬の花火は常識じゃなかったんだ」
「変わったもの、考えられないものだったんだ」
「意味がないとか場違いとか」
「そんなものだったんだ」
「うん、けれどこれがね」
 先生は王子にあらためてお話しました。 
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