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戦国異伝供書

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第四十六話 砥石攻めその十

「治めるとする」
「さすれば」
「さて、それでじゃが」
「これより兵をですな」
「進める」
 その葛葉城にというのだ。
「これよりな」
「全軍を以て」
「そうじゃ、これでじゃ」
 砥石城を攻め落としてというのだ。
「あの城に楽に行ける」
「そうなりましたな」
「敗れることも覚悟しておった」
 この度の城攻めについてはというのだ。
「実はな」
「はい、砥石城はあまりにも険しい場所にあったので」
「真田の者達がいてよかった」 
 これは晴信の偽らざる心境だった。
「まことにな。ではな」
「これからはですな」
「あの者達もじゃ」
 真田家の者達もというのだ。
「存分に働いてもらう」
「そしてですな」
「当家の股肱の一つとなってもらう」
「わかり申した、真田殿も軍師となられれば」
 それではとだ、山本も応えた。
「当家はよりです」
「強くなるな」
「はい、軍師もです」
「多くいればじゃな」
「その分です」
「使いこなせばじゃが」
 この前提を置いてだ、晴信は言うのだった。
「強くなる」
「それでは」
「うむ、そして真田家の中でもな」
「あの者はですか」
「そうじゃ、源次郎はな」
 彼のことを特に言うのだった。
「最初に見た時から思っておったが」
「まさに天下の逸材ですな」
「そうじゃ、ただ武芸や兵法がよいだけでない」
「その心も」
「天下の逸材じゃ」
 そうだというのだ。
「あの者もおると」
「我等にしても」
「大きな力じゃ」
 それに他ならないというのだ。
「これ以上はないまでにな」
「ですな、ですが天下一の武士になれますが」
「国の主としてはな」
「十万石もです」
「ないのう」
「そうした者ではありませぬ」
 山本は幸村のその器も見ていた、国の主としてのそれを。
「本人もそこまでは望んでいませんが」
「一国一城の主にはなれてもな」
「十万石ではなく」
「精々五万石か」
「それ位の器です」
「政も出来るがな」
「それでもです」 
 そちらも特に抜かりなく行っている、ただしそれは晴信達から見て抜かりなくといったところであり特に秀でてはいない。 
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