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戦国異伝供書

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第四十六話 砥石攻めその九

「この度です」
「真田に応えてか」
「動かせて頂きました」
「わしは裏切った者は信用出来ぬが」
 しかしとだ、晴信は矢沢に話した。
「最初からならな」
「それではですか」
「よい、お主は当家の家臣じゃ」
 このことを認めるというのだ。
「所領はそのままでじゃ」
「そのうえで」
「これからも戦ってもらう」
 その様にというのだ。
「よいな」
「それでは」
「これからも頼むぞ。そして」
 今度は幸村を見て言った。
「お主はじゃな」
「はい、禄や銭や位はです」
 幸村は慎んで晴信に答えた。
「それがしはです」
「いらぬな」
「はい」
 その通りだと言うのだった。
「別に」
「そうであるな。ではじゃ」
 幸村にそのことを確認してから言うのだった。
「そうしたもの与えぬ」
「そうして頂けますか」
「しかし褒美はやる」
 論功は絶対のことであるからだ、これに報いらずして家の主であることは出来ないことは晴信自身が最もよくわかっていることだ。
 それでだ、晴信は幸村に十振りの刀を見せて言うのだった。
「まずこれじゃ」
「刀ですか」
「うむ、どれも名刀じゃ」
 その十振り全てがというのだ。
「これをじゃ」
「それがしに与えてくれますか」
「十勇士達にな」
 幸村の股肱の臣である彼等にというのだ。
「与えよう、そして」
「それがしにもですか」
「これをやる」
 今度は鞍を出して言うのだった。
「お主の鞍はもうこの旅の戦で限界であろう」
「だからですか」
「この鞍を使ってじゃ」
 そしてというのだ。
「以後馬に乗るがよい」
「その鞍は」
 幸村はその鞍を見て言った。
「まさに」
「わかるな」
「はい、見事な鞍です」
「この鞍をやる」
 こう言うのだった。
「よいな」
「それでは」
「うむ、ではな」
「有り難く頂きます」
「その様にな、してじゃ」
 さらに言う晴信だった。
「ここからじゃ」
「はい、いよいよですな」
 山本が応えた。
「次は」
「葛葉城じゃ」
 この城だというのだ。
「この城に向かうぞ」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
 晴信はさらに言った。
「信濃の北をな」
「遂にですな」
「全て手に入れてじゃ」
 そしてというのだ。 
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