戦国異伝供書
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第四十六話 砥石攻めその七
「そしてそれがです」
「武田殿への合図になるな」
「そうなっております」
幸村はこうも答えた。
「まさに」
「そうか、ではな」
「それではですな」
「我等も動く」
まさにというのだ。
「そしてな」
「城の中で、ですな」
「暴れるとしよう」
「お願いします」
「うむ、その様にな」
こう話してだった、矢沢は動きはじめ幸村が率いる真田の忍者達も動きだした。矢沢の兵達が騒ぎだして。
幸村と十勇士達は城の中に火を放った、そこで幸村は十勇士達に言った。
「これでよい」
「はい、それではですな」
「この火が合図となりますな」
「下にいる横田殿に」
「それになりますな」
「そうじゃ、そしてじゃ」
そのうえでと言うのだった。
「我等も城の中で暴れてじゃ」
「城の中を乱し」
「下から来る軍勢どころでしなくしますな」
「そしてですな」
「城の門を」
「開けるのじゃ」
こう命じてだった、幸村は十勇士をはじめとした真田の忍達を率いて城の中で矢沢家の軍勢と共に暴れた。
そしてだ、そのうえでだった。
門も占領した、そして城の中で火が出たのを見てだった。
晴信は確かな顔でこう言った。
「ではな」
「はい、横田殿にですな」
「これよりですな」
「動く様にですな」
「命じる、今こそじゃ」
晴信はすぐに先陣の横谷攻める様に命じた、横田もその話を聞いてすぐに兵達に対して強い声で言った。
「よいか、これよりじゃ」
「はい、山を登ってですな」
「そしてですな」
「城に攻め入りますな」
「そうしますな」
「そうじゃ」
そうすると言うのだった。
「崖になっておるがな」
「はい、それでも登ってみせまする」
「我等は山国育ちです」
「これ位の山は登れます」
「まして敵が何もして来ないなら」
「手出しできぬならです」
「何の不安もありませぬ」
「城にまで行きましょうぞ」
「そうするぞ」
こう言ってだった、横田は自ら崖に手をやった。その背中に刀を背負ってそうすると兵達も彼と同じ様にしてだった。
崖について登っていった、だがその間に。
城からは何の攻撃もなかった、それであった。
彼等はやすやすと崖を登っていく、それを観てもだった。
城の兵達はそれどころではなくこう言った。
「敵が崖を登ってきているが」
「これではどうしようもない」
「城の中で戦とは」
「どういうことじゃ」
「矢沢家が裏切るなぞ」
「急にこうなるとは」
武田家の軍勢を迎え撃つどころではなかったのだ。
「これではどうにもならぬ」
「敵が迫っておるというのに」
「何も出来ぬとは」
「門が開かれたぞ」
「誰が開けたのじゃ」
「敵の忍達が入っておるのか」
「どういうことじゃ」
何も出来ないままだった、彼等は城の中の騒ぎに向かうしかなかった。そうしている間に横田がひきいる先陣の者達がだった。
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