ある晴れた日に
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50部分:妙なる調和その十一
妙なる調和その十一
「特に江夏先生な」
「それでも見てるところは見てるじゃない」
「そうかもな」
話を聞いてもこれには今一つ納得できないようだった。
「あの先生達がドレッシングか」
「しっかりしてるからね。やっぱり安心していいと思うわ」
「じゃあそうさせてもらうか。それでよ、竹林」
「何?」
「カレー作ろうぜ」
カレーの話を未晴に切り出すのだった。
「俺達もな。さて、米でも研ぐか」
「お米研げるの」
「まあな」
こう答える正道だった。
「これでも料理は好きなんだぜ。家でも作ったりするんだよ」
「へえ、そうなの」
「意外か?」
「悪いけれど」
謝ってからまた述べてきた。
「そうは思わなかったわ」
「妹が五月蝿いんだよ、結構な」
ここでうんざりしたような顔を未晴に見せてきた。
「男でも料理作れってな。何かとな」
「妹さんいるんだ」
「生意気なのが一人いるぜ」
忌々しげに未晴に語る。
「残念なことにな」
「そうだったの」
「親父やお袋は言わないのにな」
頭の後ろを右手でかきながら話す。
「あいつだけ言うんだよ」
「男の人もってこと?」
「男は料理してナンボだってな」
忌々しげな顔が続く。
「ったくよお、掃除やら洗濯やらもやらせてな」
「家事好きなの」
「大嫌いだよ」
口を尖らせて未晴に言い返す。
「あいつが言うからな。仕方なくしてやってるんだよ」
「あまりそうは聞こえないけれど」
「けれど本当だぜ」
言いながらも目が少し泳いで未晴と合わせようとしない。
「それはな」
「だったらいいけれどね」
「それでだ。お米研ぐからな」
「ええ」
「竹林は何するんだ?」
「私!?」
未晴は正道に声をかけられて彼を見たまま目をしばたかせた。
「私なの」
「そうだよ。何するんだ?」
あらためて未晴に尋ねてきた。
「肉とか野菜切るか?何するんだ?」
「それかしら」
首を少し捻ってから答える未晴だった。
「やっぱり。私は」
「それか」
「女の子だから」
こう前置きしてからまた述べてきた。
「家でもお料理とかするのよ、やっぱり」
「あんたのグループじゃ珍しいんじゃないのか?」
「そう?」
「どう見たって料理する面々じゃないだろ、あれは」
咲や春華達をイメージしての言葉だ。
「どうせくそまずいのばっか作るんだろうな」
「それはないわよ」
しかし未晴はそれは否定する。
「咲も春華もお料理は得意な方よ」
「そうか?」
「皆ね。ただ」
しかしここで眉を少しだけ顰めさせて言う未晴だった。
「味付けは。皆癖があるわね」
「癖か」
「咲は甘党で春華は辛党で」
この二人はそうであるらしい。
「奈々瀬は塩辛いのが好きなのよ。静華は油っこいのがよくて凛があっさり派で」
「全員違うのか」
「特に咲ね」
「あいつか?」
「そうなの。彼氏が和菓子屋さんの息子さんだし」
それがかなり関係しているという。
「お菓子も好きだし」
「そういやよく食ってるな」
咲が昼食後いつもお菓子を食べているのを思い出す正道だった。
「チョコレートやらクッキーやらな。好きだよな」
「だからダイエットにも気をつけてるし」
「食い過ぎなきゃいいんじゃないのか?」
率直な正道の言葉だった。
「あいつ。果物だって好きみたいだしな」
「それも大好きだけれど」
「やっぱりな」
このことにも納得する正道だった。
「甘いものばっかだな、本当に」
「あのままいったらその彼氏と結婚するでしょうしね」
「結婚か」
話が凄い方向に飛んできていた。
「まだ十五でか?」
「十六になったら結婚できるじゃない」
「いや、それでもな」
冷静に言う未晴に少し戸惑いつつ言葉を返す正道だった。
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