ある晴れた日に
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499部分:冷たい墓石その七
冷たい墓石その七
「何だよ御前等またアルバム見てんのかよ」
「好きだねえ、いつもいつも」
坂上の横にいる野茂がこう言って冷やかしにかかってきた。
「柳本よ、おめえアルバム一体何冊持ってるんだよ」
「まあ結構」
具体的な数を言えない咲だった。
「多分二十冊は」
「もっとあるわよね」
「ねえ」
しかしその横で凛と奈々瀬が言う。
「だって幼稚園の頃からのだし」
「それこそ」
「ああ、私も見たけれど」
今度は茜が出て来た。
「一回咲のお家に行ったのよ、明日夢と恵美と一緒にね」
「そんなことがあったのかよ」
「そうなのよ。その時にね」
「四十冊はあったわよね」
明日夢も言う。
「アルバム」
「もっとあったような気もするけれどね」
「ってアルバムが何でそんなにあるんだよ」
今度出て来たのは坪本だった。佐々も一緒である。
「アルバムだけでよ」
「まあ何ていうか」
咲は彼等に言われて少し口篭りながらも答えた。
「アルバム作るの趣味で。やってるうちに」
「それだけできたっていうのかよ」
「凄いな、それも」
「うち等と未晴がいつも写ってるんだよな」
春華が実に楽しそうに言った。
「それこそな。どのアルバムにもな」
「幼稚園の頃だからね」
静華もこれまた極めて楽しそうである。
「もうそれこそずっと一緒だから」
「けれどよ。クラスまで一緒だったんじゃねえだろ?今みたいに」
「それでも一緒だったのかよ」
野茂と坂上はそこを突っ込んできたのだった。
「何かマジで強い絆なんだな」
「御前等と竹林って」
「未晴もいればねえ」
「全く」
未晴の名前が出て来たところでこんなことも言う彼女達だった。
「まだ退院できないのかしら」
「場所もわからないし」
「何処にいるのかしらね」
五人はこの話になると暗い顔になって俯いてしまった。
「肺炎だっているけれど」
「やばくない?これって」
「命には別状ないんでしょ、確か」
先生達が言った言葉を一応頼りにはしていた。
「確か」
「そうらしいけれど」
「けれどよ。遅いよな、退院よ」
春華も暗い顔だった。
「未晴どうなったんだよ」
「ここであれこれ考えても何にもならないわよ」
その五人に恵美が優しく言ってきたのだった。
「何にもね」
「めぐりん」
「それはそうだけれど」
恵美の仇名までさりげなく出て来ていた。
「やっぱり気になるし」
「未晴がどうなのか」
「あんた達が心配している分だけあの娘も心配するわよ」
ここで恵美はこう五人に告げるのだった。
「それだけね」
「私達が心配するだけ」
「その分だけ」
「そういうことよ。だからあまり考えないことね」
こうも五人に話した。
「あの娘だって辛くなるし。あんた達が暗くなるとね」
「そうだよね。皆が自分のことで暗くなるってわかったら」
桐生も来て五人に言ってきた。
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