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パンドラの箱

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第五章

「冗談ではなく」
「そう思うから希望を入れた箱を用意しているというのに」
「難しいことだな」
「全くです」
「こうなっては」
 ヘスティアが言うことはというと。
「北欧の神々に依頼して」
「それでか」
「またドイツに助けてもらいますか」
「一回そうしてもらってな」
「相変わらずでしたね」
「だからな、それもな」 
 どうにもとだ、ゼウスは姉妹である女神に話した。
「すべきではないだろう」
「左様ですか」
「ポセイドンやハーデスも難しい顔をしているが」
 それぞれ海、冥界を治めている兄弟達もというのだ。
「わしの予想以上に怠け者だな」
「あの家族は」
「そして今のギリシア人はな」
 このことに呆れて仕方なかった、そして一ヶ月経ってもそれでも開けなかったがゼウスは遂に痺れを切らした。古代のギリシアは神々もニンフも人間もそもそも極めて短気なので彼もいい加減我慢出来なかったのだ。
 それで自分から箱のところに行って開けた、そこで自分が家の中にいるのを見た家の者達にこう言われた。
「あんた泥棒か?」
「警察呼ぶだよ」
「悪いことしたらいけないんだぞ」
「逮捕されたらいいわ」
「わしはゼウスだ」 
 ゼウスは彼等に怒って返した。
「ずっとこの箱を開けるか待っていたのだ」
「ああ、その箱か」
「面倒くさいから開けなかったけれど」
「どうでもいいって思ったし」
「気付いたらあったけれどね」
「全く、何をしているのだ」
 ゼウスは彼等に怒ったまま言った。
「この箱には希望を入れていたのだぞ」
「ああ、パンドラの箱だったんだ」
「そうみたいね」
「希望が入っていたんだ」
「そうだったのね」
「それでどうして開けん」
 家の者達にこのことを問い詰めた。
「面倒臭がりにも程がある、だからギリシアは今危ういのだ」
「そう言われても」
「面倒臭いからね」
「学校の勉強でも面倒臭いのに」
「少しでもだらだらしたいのに」
「全く、何処まで怠け者だ。そもそもだ」
 ゼウスはここから家の者達に説教をしようとしたが。
 彼等は神に対してこう言った。
「あっ、今から昼寝の時間だから」
「シェスタの時間だからね」
「お話は後にしてね」
「人間ちゃんと寝ないとね」
「待て、わしの話を聞け」
 ゼウスは言うがそれでもだった。
 彼等はさっさと寝てしまった、それでだった。
 ゼウスもどうしようもなく怒ってオリンポスに戻った、そのうえで神の主の座からワインをボトルで何本もラッパ飲みしつつ言った。
「全く以てだ」
「あの、どうも」
 二本三本と次々とワインを開けるゼウスに言ったのはディオニュソスだった。
「飲み過ぎですよ」
「どうして飲み過ぎになったかわかっておろう」
「それはそうですが」
「何なのだ、あの家族は」
 ゼウスは真っ赤な顔で言った、怒っているせいだがそれ以上に酒に酔ってのことであるのは誰が見ても明らかだ。 
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