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おっちょこちょいのかよちゃん

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8 奪われた秘密基地

 
前書き
《前回》
 最近大野の行動が気になって尾行しているクラスメイト・冬田美鈴と出会ったかよ子。調査をするも、真相の究明に失敗する。杉山はその大野にブー太郎、そしてまる子と共に秘密基地を建造していたのであった!! 

 
 かよ子は杉山、大野、ブー太郎、まる子の四人が一体何を計画しているのか手がかりが掴めぬままだった。
(杉山君達、何の秘密があるんだろう・・・?)
 かよ子はまる子に聞いてみようと彼女に声をかけた。
「あ、あの、まるちゃん・・・」
「あれ、かよちゃん、どうしたの?」
「最近、杉山君や大野君、ブー太郎と一緒に何してるの?」
「え?いや~、ただ遊んでるだけだよお~」
 まる子は(とぼ)けた。
「そうなの?」
「あ、そのお~」
「山田!何なんだよ、さくらにそんなにしつこく聞いて!」
 杉山が現れた。
「す、杉山君・・・」
「俺達は何もしてねえぞ!なあ、さくら!」
「あ、うん・・・」
「う、ごめん、杉山君、まるちゃん・・・」
 かよ子は杉山に嫌われたような感がした。

 清水市内の高校。三河口は放課後になっても勉強を続けていた。彼は元々勤勉な一面がある。しかし、勉強ばかりという訳ではない。今どきの高校生のように、遊びほうけたい気分になる時もある。
(ふああ~、もう学校出るか・・・)
 三河口は下校しようと思った。帰りに本屋にでも寄り道しようかと考えた。その時、同級生も丁度帰る所だった。
「あれ、濃藤」
「おお、ミカワじゃん」
 メガネの男子、濃藤徳崇(のうどうのりたか)。三河口の友人の一人だった。高校に入って以降は彼とつるむ事が多い。今の三河口の性格ならクラスどころか同じ学年の誰とでも親友のようになっているが。
「今日も勉強か?」
「ああ、テストが近いからな」
「まあ、俺も同じだよ。それにしてもどうもウチの妹がさ・・・」
「君の妹がどうかしたのか?」
 濃藤には小学三年生の妹がいる。その妹は最近何かあったらしい。
「最近帰るのが遅くて気になるんだよ」
「ただ遊んでいるだけじゃないのかね?」
「いや、何かを感じ取ったみたいなんだよ」

 かよ子はまる子から秘密を吐いて貰おうとして杉山から嗜められた事で杉山から嫌われそうな気がして不安だった。
(もしあれで杉山君が離れていっちゃったらどうしよう・・・?)
 かよ子はその事で物思いに更けながら下校していると、冬田が声を掛けてきた。
「山田さあん」
「ふ、冬田さん!」
 かよ子は驚いて振り向くなり踵から躓いて尻餅をつくという恒例のおっちょこちょいをやってしまった。
「あ、大丈夫う?」
 冬田は転んだかよ子を気遣った。
「うん、大丈夫だよ。ところで冬田さんはどうしたの?」
「大野君達の事、何かわかったか聞きに来たのよお」
「いや、何も・・・。まるちゃんに聞いてみようとしたけどダメだった。それで杉山君から怒られちゃったんだ・・・」
「そうだったのお・・・。さくらさん、大野君達と陰でコソコソ付き合ってるのねえ!許せないわあ!!」
(それは違うと思うけど・・・)
 かよ子は何も言えなかった。
「山田さあん、今日も大野君達を追跡するわよお!」
「う、うん・・・」
 冬田の積極的な提案に断れないかよ子であった。二人は一旦別れ、ランドセルを置くなり再び待ち合わせ、血眼になって捜索を始めた。だが、誰も見つける事ができなかった。
(もしかして今日は集まってないのかな・・・?)
 かよ子はそのような気がした。
「大野君達、いないわねえ・・・」
 二人が捜索に疲れてきたその時、一人の女性の姿が見えた。栗色のパーマがかかった長い髪をして若い成人女性のようないでたちだった。まさに美女そのものだった。
「貴女達」
 その女性は二人に話しかけてきた。透き通るような美しい声だった。
「もしかしてあの少年達を探しているのですか?」
「あの少年達・・・?」
「名前は大野けんいち君、杉山さとし君、富田太郎君、さくらももこちゃんと言いましたわね」
「・・・え!?」
 かよ子も冬田もその女性が今自分達が気になっている四人の名前を知って驚いた。
「す、杉山君達が何をやっているのか知ってるんですか!?」
「ええ、高台に秘密基地を造ったのですよ。ですが、そこに何か無駄な争いが起こる気配がするのです」
「無駄な争い・・・!?」
 二人は女性は超能力者なのかと一瞬恐ろしくなった。
「もしかして大野君達悪者になっちゃうんですかあ!?」
 冬田は我慢できずに質問した。
「いいえ、そうではありません。戦場は彼らが造った秘密基地なのです。そこを乗っ取ろうとした同じ四人の少年少女のグループと対決する可能性があるという事です」
「秘密基地・・・」
(もしかして杉山君達はその秘密基地を造る事を内緒にしていたの・・・?)
 かよ子は杉山達の秘密を知った事はスッキリしたが、秘密を知って彼らに悪いと思った事や、この女性が言う無駄な争いが起こると思うと逆に心がざわめいた。
「その秘密基地が造った高台を教えてくれますか?」
「ええ、いいですよ。私にお掴まりなさい」
 かよ子と冬田は女性の来ているワンピースのような白い布地を掴んだ。女性はいつの間にか背中に羽を生やし、ジャンプすると空を飛んだ。
(こ、この人、天使・・・!?)
 かよ子は推測した。
「あ、貴女は一体、誰・・・?」
「私?ああ、申し遅れましたわね。私はフローレンス。異世界から来た者です。私は人々の平和を維持しようと動いています」
「異世界から・・・?」
 かよ子は前にアレクサンドルとアンナの兄妹が来た時のように異世界の人間は皆この地球を攻撃する事ばかりが目的ではないと感じ取った。
「貴女は山田かよ子ちゃんですね。貴女のこの前の活躍は素晴らしかったですわ」
「え、ええ!?知ってるの!?」
「ええ、貴女の持ってる杖は私のいる世界のものなのですよ」
「そうだったんだ・・・」
「それに貴女はその杖の使い方を示した本の解読に成功なされました。貴女には不思議な能力(ちから)があるのです」
「な、何の話をしているのお?」
 冬田は二人の話についていけなくなった。
「この山田かよ子ちゃんは他の人にはない不思議な能力(ちから)があるという話ですよ」
「そうなのお!?山田さん、凄いわあ!」
「い、いや、でも、私、おっちょこちょいだし・・・」
「いいえ、貴女がおっちょこちょいなのはその能力の代償なのかもしれませんわよ。兎に角、そろそろ高台に近づきます。不意に私から手を離さないようにお気をつけてくださいね」
「はい・・・」
 三人は高台に到着した。かよ子と冬田はフローレンスから手を離すと、そこに一本の大きな木が見えた。そこに梯子があり、そこに表札が見えた。表札には「大野、杉山、ブー太郎、まる子」の名前があり、「次郎長の秘密基地」と記されてあった。
「次郎長?」
「あの四人のグループの名前ですね」
「そうなんだ、まるちゃん達、この秘密基地を造るのを秘密にしてたんだね・・・」
「大野君、私も誘ってくれたらいいのにい・・・」
「貴女達、お隠れなさい。誰か来ますわ!」
 フローレンスは足音を聞きつけ、二人に催促した。三人は低木の茂みに隠れた。その場に四人の少年少女が現れた。しかし、杉山達ではない。見知らぬ四人組だった。
「ここに俺達の町を守れる力があるのか?」
「うん・・・。そうだって言われたの・・・」
「それで秘密基地があるのか・・・。へえ、『次郎長の秘密基地』だってよ!名前も大野、杉山、ブー太郎、まる子?わけわかんねえな」
「山口、それ、グループ名じゃねえのか?」
「そのようだな、だが次郎長よりももっとカッコいい名前にしようぜ!」
「名案でやんす!」
(もしかしてあの子達、杉山君達が造った基地を・・・!!)
 かよ子は危惧を感じた。もしかしたらあの少年達が杉山や大野、ブー太郎、まる子と敵対する相手ではないのかと・・・。
「フローレンスさん、止めなくていいんですか?」
「それはまだあの子達が悪い事をしていると決まったわけではないので今は様子を伺うしかできませんわ」
「そんな・・・!」
 その時、冬田は冷静さを失って「や、やめてえ!大野君達が造った基地をお!」と絶叫してしまった。
「だ、誰だ!?」
 少年達は振り向いた。彼らが周囲を確認した時は誰もいなかった。

 かよ子と冬田、そしてフローレンスは別の場所へと避難していた。
「山田かよ子ちゃん、冬田美鈴ちゃん、彼等と貴女達のお友達との争いが起きるようでしたら、またお会いしてお伝えしますわ。それでは」
フローレンスは羽を広げ、どこかへ去った。
(杉山君、秘密を知ってごめんね・・・。でも、争いなんてやめて・・・)
かよ子は心の中で杉山に謝った。


 翌日、大野、杉山、ブー太郎、そしてまる子の四人は例の秘密基地に向かった。だが、表札を見ると「山口、川村、ヤス太郎、すみ子」と書かれており、「義元の秘密基地」と書かれてあった。
「な、何だよ、これ!」
「勝手に基地に上がり込んだ奴らか!」
「許せないブー!」
「一体この子達何処の誰なんだろうねえ!」
 四人は秘密基地を乗っ取った者達への怒りを露にするのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「交差する組織同士」
 杉山、大野、ブー太郎、まる子の四人の組織「次郎長」は秘密基地を占領した山口、川村、ヤス太郎、すみ子の四人からなる組織「義元」と顔を合わせる。だが、彼等には特殊な力があり・・・。 
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