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ある晴れた日に

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476部分:夕星の歌その十六


夕星の歌その十六

「彼女なんだよ。いいだろ」
「ちぇっ、何でこんなのに彼女がいるんだよ」
「不公平じゃねえか」
 とどのつまりはやっかみであった。それによる言葉だった。
「ったくよお。まあそれでもな」
「身体張って守れよ」
 それでもこう言いはする二人であった。
「男の役目だからな。それはよ」
「いいな」
「わかってるさ。それはな」
 坪本も真顔で彼等の言葉に応える。
「本当に身体張ってな」
「とにかく今はね。用心しよう」
 話をまとめるようにしてまた言う桐生だった。
「女の子はね」
「私も注意しないと駄目ね」
 明日夢も店のこと以外で珍しく真剣であった。
「いざって時はそれこそ蹴っ飛ばしてもね」
「まあ御前の蹴りだったらな」
「まず大丈夫だろうけれどな」
 野茂と坂上は今度は彼女に対して突っ込みを入れた。
「それでも用心しとけよ」
「やばい客だっているしな」
「そういうお客さんはいつも速攻で張り倒してるけれどね」
 意外と戦闘力があるようである。よく見てみればその身体つきは小柄ながら筋肉自体はしっかりとしているものであった。
「速攻で」
「御前も強いんだな」
「伊達にボクシング部のマネージャーもやってないし」
「けれど蹴りなんだな」
「キックっていいのよ」
 笑いながらの言葉であった。
「どうしても下半身のガードって弱くなるしね」
「そうそう」
 明日夢の今の言葉に同意して明るく言ってきたのは静華だった。
「だからね。急所攻撃なんかが」
「御前それ好きだな」
「まずそれなのね」
「変な男がいたらそれで一撃よ」
 実に楽しげに語ってさえいる。
「もうね。そこを潰したらどんな大男でも終わりだから」
「こいつとだけは喧嘩したくねえな」
「だよな」
 男連中は静華のその楽しげな言葉に顔を青くさせてしまった。
「潰されたら終わりだからな」
「生きていてもそれでもうな」
 男ならば誰でも恐れる場所である。
「っていうかこいつの家の空手って何なんだよ」
「殺人拳か?」
「何言ってるのよ。活人拳よ」
 自分ではこう言う静華であった。
「だから。自分の身を護る為には時としてよ」
「急所攻撃もか」
「必要っていうのかよ」
「そうそう。少年もさ」
 男連中にここまで話したうえであらためて明日夢に言うのであった。
「やってみたら?思い切りとんでもないお客さんにはね」
「急所を一撃ね」
「そう、それで終わりだから」
 強い声で右手に拳を作ってさえの言葉であった。
「立っていられなくなるから」
「わかったわ。じゃあやってみるわ」
 明日夢も確かな笑みと共にその言葉に頷く。
「急所ね。蹴るのよね」
「それで一発だから」
 なおも言う静華であった。
 
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