戦国異伝供書
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第四十五話 影武者その九
「是非な」
「はい、それでは」
「次の戦の時になれば」
「城攻めになりますが」
「是非ですな」
「我等がお役目を言われると」
「そのお役目をですな」
十勇士達も幸村に話した。
「果たし」
「そしてまたこうしてですな」
「皆で飲むのですな」
「美味い酒を」
「そうするぞ、酒をじゃ」
これをと言うのだった、飲みながら。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「我等これからもです」
「殿と共にいます」
「この国に」
「そうするとしよう」
幸村は十勇士達と共に飲んで夜を過ごした、彼はその中で夜の空を見上げた、そして星の動きを見てだった。
そしてだ、こうも言ったのだった。
「村上殿と小笠原殿は死なぬな」
「お二人はですか」
「次の戦でもですか」
「お亡くなりになりませぬか」
「将星が落ちぬ」
だからだというのだ。
「これはじゃ」
「この次の戦でもですか」
「首を取られず」
「生き延びられる」
「そうなるのですか」
「これで降ってじゃ」
次の戦で武田家にというのだ。
「我等と馬を並べてくれればよいがのう」
「ですな、お二人共中々の御仁」
「実によい戦をされています」
「その戦ぶりを見ますと」
「死なれては惜しい方々ですな」
「お館様は優れた者を求められる方じゃ」
晴信、彼はというのだ。
「だからな」
「今は出来のお二方でも」
「降られればですな」
「家臣として用いられる」
「そうされますな」
「あくまで忠義を尽くされるならじゃが」
その前提があるがというのだ。
「それでもじゃ」
「必ずですな」
「降られれば」
「その時は」
「うむ、お館様は決して無闇に人の命を奪われぬ」
幸村もわかっていることだ。
「そうであるな」
「それはありませぬ」
「戦の時に民百姓に一切手出しはされませぬし」
「その様なことを忌み嫌われていますし」
「捕らえた者を手にかけることもされませぬ」
「そうした方であられるからな」
それだけにというのだ。
「実際に信濃の国人達もじゃな」
「迎え入れておられますな」
「前に戦ったにしても」
「それでも」
「だからじゃ」
幸村はさらに話した。
「それはない」
「ですな、ではですな」
「お二方も武田家に降られれば」
「その時は」
「是非にじゃ」
幸村は自分の望みも話した。
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