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ある晴れた日に

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474部分:夕星の歌その十四


夕星の歌その十四

「散々よ。おかげでグループ全体で何か訳のわからないまま賠償金支払らわさせられたのよ」
「そこの弁護士が盗聴器とか使って色々やったらしいんだ」
 彼はまた話すのだった。
「原告側についた弁護士がね」
「何かとんでもねえ弁護士がいるんだな」
「完全に犯罪者じゃない」
「何でもその弁護士は」
 ここで彼は過去に話したことも混ぜて話すのだった。
「人権派でね。国とか大企業とかそうした相手の訴訟をしてそれでお金を手に入れているって人らしいんだ」
「ああ、御前そんなこと話してたよな」
「今思い出したけれど」
 皆ここで彼の前のその話を思い出したのだった。
「そうやって正義派の仮面被って生きてるとんでもない奴がいるって」
「それがその弁護士なの」
「そうだよ。だからそういう弁護士もいるみたいだね」
 彼は話すのだった。
「名前はまだはっきりしないしネットでもあくまでちらっと見た話だけれど」
「それでもとんでもない奴がいるんだな」
「弁護士っていっても」
「うん。だから注意していて」
 彼はあらためて皆に告げた。
「そういう手合いもいるってことをね」
「だよな。確かに」
「ああ、そういえば」
 今度口を開いたのは茜だった。そうした話をしているうちに思い出したらしい。
「何かさ。最近また学校の動物とか公園の花壇が荒らされてるんだって」
「えっ、そうなのかよ」
「またなの」
「そう、またみないなのよ」
 うんざりといった感じの顔と口調で皆に話す茜だった。
「これも噂だけれど」
「噂っていってもよ」
「前にもそんな話あったし」
 皆茜の今の言葉で一斉に不機嫌な顔になるのだった。
「本当に誰がやってるんだ?」
「とんでもない奴がいるみたいだけれど」
「それに」
 ここでさらにとんでもない話が出て来た。今度言ったのは凛だった。
「あのさ、まさかって思うけれど」
「何だよ中森」
「顔真っ青だけれど」
 見ればその通りだった。話そうとする凛の顔はいつもの血色のいいものではなく蒼白になっていた。それはまるで蝋人形の様であった。
「その顔よ」
「何話すっていうのよ」
「女の子が失踪してそれで遠い場所に捨てられてるってことがあるんだって」
「この街でか!?」
「まさか」
「神戸で起こってるらしいのよ」
 八条町ではないがどちらにしろ彼等が今いる神戸でだというのである。そのせいか話す彼女の顔は真っ青になっているらしい。皆は彼女の顔を見てそう思った。
「何でもね」
「女の子が攫われて遠い場所で捨てられるのか」
「何よその物騒な話」
「しかもね」
 凛の顔は下手な怪談を話す時よりも強張ったものであった。その顔でさらに話していくのであった。
「その女の子がね。滅茶苦茶に乱暴されてるんだって」
「滅茶苦茶って」
「まさか」
 それを聞いて青くならない女組はいなかった。強気な春華や静華でさえ今の話には顔を真っ青にさせてしまっていてそれで話を聞いていた。
「言いたくはないけれど」
「監禁とかそうされてから」
「そうらしいのよ。もう皆頭がおかしくなるまでぼろぼろにされてて」
 凛の言葉はさらに暗いものになっていく。
「廃人になってるんだって。心も身体もね」
「心も身体もって」
「何なのよそれ」
 女組は今の凛の言葉にこれ以上はない程怯えてしまっていた。
「嘘だよな、それって」
「まさかと思うけれど」
「私だってそう思いたいわ」
 話す凛にしろそうだった。こうした話を事実だと受け入れることは彼女にしても到底無理なことであった。だからこそその顔を青くさせているのである。
 
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