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ある晴れた日に

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473部分:夕星の歌その十三


夕星の歌その十三

「それ以上にね」
「それ以上に?」
「っていうと?」
「私達もやってみるべきじゃないかしら」
 こう言うのである。
「私達もね。どうかしら」
「俺達もって」
「まさかと思うけれど」
「そうよ。そのまさかよ」
 静華は胸を張って驚く皆に告げるのだった。
「大胆にたらないとわかるものもわからないわよ」
「先生達を偵察するのかよ」
「あの先生達結構以上に勘は鋭いわよ」
「大人の女性っていうか主婦特有?っていうか」
 どうやらそうした妙な能力まで持っているらしい。思った以上に厄介な先生達であるらしい。
「それに見つかったら終わりだし」
「リスク大きいんじゃないかしら」
「そんな時はこれだよ」
 ここで竹山が言いながら出してきたのは小さな四角い機械であった。それを懐から取り出して皆に見せてきたのである。
「これを使えばいいんだよ」
「あれっ、それって一体」
「何なの?」
 皆その四角いものを見てもまずは何なのかわかりかねた。
「とりあえず機械なのはわかるけれどよ」
「何なのよ、それって」
「盗聴器だよ」
 それだというのである。
「ほら、KGBとかがよく使う」
「っておい」
「何であんたがそんなの持ってるのよ」
 話を聞いて一斉に突っ込みを入れる皆であった。
「犯罪じゃねえのかよ、そんなの使ったら」
「やばいでしょ、幾ら何でもそれは」
「けれど使ったらすぐに何でもわかるよ」
 だが竹山は皆に対して平然として言うのであった。
「何でもね。どうかな」
「いや、流石に犯罪はまずいからな」
「止めておいた方がいいわね」
「だよなあ」
「ちょっとね」
 今回ばかりは皆もドン引きだった。そうして竹山が今も持っているその小さな盗聴器から視線を逸らしてそのうえで言うのであった。
「だからそれは没な」
「絶対に駄目よ」
「まあ実はこれただのおもちゃなんだけれどね」
 何とそうなのだった。思いも寄らぬ種明かしであった。
「皆そう言ってくれて何よりだよ。やっぱり犯罪はしないんだね」
「っていうかおもちゃかよそれ」
「本物だって思ったわよっ」
 皆今の彼の告白には思わず牙を出しそうになった。誰もがその髪を漫画で驚いた時の様に飛び上げてしまっている程である。
「全くよ。冗談にしても悪質過ぎるだろ」
「犯罪なんじゃないかって思ったじゃないの」
「僕でもそういうの造れないしそれに使うのは卑怯だって思うし」
「まあな。幾ら何でもな」
「スパイ映画じゃないしな」
「噂によるとある弁護士は使ってるそうだけれど」
 ここでふとこんなことを言う竹山だった。
「噂だけれどね」
「噂!?」
「って弁護士が盗聴器使うの?」
 皆今の彼の話にすぐに目をやった。
「弁護士ってそういうの使う仕事か?」
「あまりイメージじゃないけれど」
「弁護士にもよるんだ」
 彼はあらためて皆に言うのだった。
「ほら、柳本さんの会社前に訴えられてるって話してたじゃない」
「ええ、あれね」
 咲は今の竹山の言葉を受けて急に憮然とした顔になった。そうしてその顔で応えて言うのであった。
 
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