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おぢばにおかえり

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第五十二話 おせちひのきしんその十一

「とても信じられないわ。阿波野君だってね」
「阿波野君?」
「あの後輩の子ね」
「そう、阿波野君なんか先輩と会ってね」
 あの時のことも思い出しました。
「物凄く酷いこと言ったから怒りそうになったわ」
「そうなのね」
「そんなこともあったのね」
「そうよ、先輩みたいないい人いないのに」
 入学してからのことを思い出していました、あの時どれだけ先輩に助けてもらったか。
 寮に入ってからも同じでした、後輩の娘達に言いました。
「この三年色々あったけれど」
「はい、入学されてから」
「これまでですね」
「楽しいことが一杯あったわ」
 二年の娘にも一年の娘にもお話しました。
「まだもう少しあるけれど」
「振り返られると」
「本当に色々だったんですね」
「そうなの、嫌なこと悲しいこともあったけれど」
 そして辛いこともです。
「楽しい思い出の方がずっと多いわ」
「先輩吹奏楽部でしたよね」
 一年の娘が言ってきました、この娘はテニス部で二年の娘は陸上部でした。
「そちらでも頑張っておられましたね」
「ええ。部活でもね」
 有名な部活だけあって練習は大変でしたが。
「凄くいい思い出よ」
「そうですよね」
「部活のことも」
「何もかもがね。ただ恋愛はね」
 これだけはです。
「なかったけれどね」
「えっ、そうなんですか?」
「それはなかったんですか?」
「そちらは無縁だったわ」
 本当にそうでした。 
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