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戦国異伝供書

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第四十五話 影武者その二

「実際にな」
「はい、戦の場に絶対はありませぬ」
「下手をすれば命も落とす」
「勝っていても」
 総大将でもというのだ。
「そうなりますので」
「だからじゃな」
「はい、ここは」 
 まさにというのだ。
「お館様の考えはよいかと」
「二郎達を影武者に仕立ててな」
 信繁、そして信廉にというのだ。
「出陣させてよかったな」
「遠目からはです」
「わしとはわからぬな」
「敵はお館様はまだ傷で動けぬと思っています」
「思い込んでおるな」
「もっと言えば」
「ならじゃ」
 晴信は笑ってだ、山本にまた話した。
「その虚を衝くのじゃ」
「軌道ですな」
「まさにな、ではここはな」
「お二方と共に」
「仕掛けてみせるわ、ただな」
 ここでだ、晴信は。
 甘利と板垣にはだ、こう言った。
「お主達はこの度は後詰じゃ」
「我等も同じですからな」
「お館様と」
 二人は晴信に確かな笑みで応えた。
「傷を負っておりまする」
「それでまだ動けませぬ」
「戦なぞまだ無理です」
「甲斐におりまする」
「だから後詰じゃ」
 戦う場には出るなというのだ。
「出てもじゃ」
「それでもですな」
「それはお館様と同じか後」
「その時に出ますな」
「我等は」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「はい、我等はこの度は後詰にいます」
「そこで姿を隠しておきまする」
「そしてお館様は」
「これよりですな」
「そうじゃ、その様に頼むぞ」
 二人にはこう告げてだった、晴信は兵を進めさせた。そうして両軍は砥石城に向かう途中で対峙したが。
 村上は武田本陣を見て小笠原に言った。
「うむ、確かにな」
「武田殿はおらぬな」
「あの兜が見えぬ」
 諏訪のそれがというのだ。
「だからな」
「おらぬな」
「敵の数は多いが」
「それでもな」
「武田殿がおらぬのでは」
 それではというのだ。
「ここはじゃ」
「前より楽に戦えるのう」
「間違いなくな、ではこの度こそな」
「凌ぎきるか」
「そうして戦おうぞ」
 こう話してだった、二人は軍勢の守りを固めさせた。そうしてそのうえで武田の軍勢が来るのを待ち受けたが。
 ここでだ、本陣にいる信廉はというと。
 周りにいる者達にこう問うた。
「ではこれからか」
「はい、戦がはじまりましたので」
 内藤が信廉に応えた。 
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