魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica44雷光の天精~Der Anfang Fusion Ritter~
前書き
Der Anfang Fusion Ritter/デア・アンファング・フズィオーン・リッター/始まりの融合騎
†††Sideはやて†††
艦隊のバリア、艦体に対してダメージを与えられる唯一の武装端末。その特別仕様の武器を使うすずかちゃん、ヴィータ、なのはちゃん、フェイトちゃん、それにドクターの娘さんであるトーレさんとセッテさん、サポート役のクアットロさんが安心して攻撃に専念できるように・・・
――氷柱弾雨――
――ブリッツ・クーゲル――
私たちは戦闘区域から離脱しようと試みてる艦隊の直掩戦力として参戦した、偽フィレスさん(偽者だって言うのは、さっきのルシル君の通信で判明してる)と、電気変換資質持ちの雷騎士の2人と交戦中。他にも多数の仮面持ちが、武装隊や警備隊のみんなと交戦中や。
「リイン!」
『はいです!』
偽フィレスさんの氷柱や雷騎士の電撃弾を回避して、ユニゾン中のリインのサポートを受けて、設置型魔力スフィアのハウリングスフィアを発動。地雷としても使えるけど、もう1つの使い方で使用するために発動した。
『間違いねぇ! アインスだ、アイツ!』
シグナムとユニゾン中のアギトからの突然の思念通話に、アインスが血色の短剣型射撃・ブラッディダガーを発射しながら「私がどうかしたか?」って聞いた。
『いやちげぇ! あたしやアイリと同じイリュリア製融合騎で、その長男だ! 騎士団総長グレゴールや、殺戮王テウタ派の騎士や政治家と一緒に行方を晦ませてって話だったけど・・・!』
古代ベルカの歴史は、局入りしてすぐに勉強したからテウタって名前も知ってる。そやけどこれまで行方知れずやったアインスって融合騎が、大隊の一員として何百年の時を経て姿を見せたってゆうのは偶然やあらへんはずや・・・。
「とにかく今は、すずかちゃん達を護ることに専念や! あと、向こうのアインスの呼称は雷騎士で固定ってことで!」
私たちにとってのアインスは、リインフォース・アインスだけや。みんなも同意してくれたし、雷騎士の妹やってゆうアギトも、『アイ――じゃない、雷騎士のことは嫌いだし、アイツとかコイツとかソイツで十分だよ』ってことで、雷騎士で固定や。
「『ナイトメアハウル!』」
私とリインの標的は偽フィレスさんや。雷騎士は速過ぎて、私たちの攻撃やと当たらへんからな。広域攻撃でアインス達を巻き込む危険性もあるし、雷騎士はシグナムとアインスに任せることになってる。
「ザフィーラ、偽フィレスさんと雷騎士を引き離すよ!」
「承知!」
偽フィレスさんは本物のフィレスさんと同じ魔法を使うんやけど、フィレスさんの記憶を持ってくれてるおかげか、えぐい魔法は使ってきてへん。そやから説得できるかもなんて考えたみた。
「フィレスさん! 止まってください! 局員として、そして騎士としての誇りを何より大事にしていたあなたなら! 大隊のしてることが間違ってると思ってくれてるはずです!」
攻撃を一旦中断して、「だから投降してください! もう大隊は終わりですから、これ以上抵抗しても無駄です!」偽フィレスさんに語りかける。大隊の拠点に潜入したルシル君の通信によって、局と騎士団に大隊の情報が送られてるはず。そやから大隊はもう終わったようなもんや。
「・・・私がオリジナルのクローンであることも、大隊が悪であることも承知・・・」
――爆ぜる凍煙・穿つ氷刃――
偽フィレスさんの両手の指の間に氷の剣が8本と生成された。説得は失敗って判断するには十分なリアクションや。ううん、まだや。戦いの中でも説得を続けてみせる。
「リイン!」
『はいです! 迎撃します!』
フィレスさんの魔法は全て見たわけやないけど、あの魔法は見覚えがある。あの剣を至近で迎撃したり防御したりするわけにはいかん。そやから「ザフィーラ、軛を準備!」って指示しておく。
「承知!」
“夜天の書”を開いて、あるページで止める。ルシル君のエネディエルやなのはちゃんのセイクリッド・クラスターのようや炸裂効果のある魔法を準備。偽フィレスさんが氷剣を投擲するべく腕を振りかぶった。私とザフィーラは偽フィレスさんから20mほどの距離を取る。
『氷剣8本すべてをロックオン!』
前面にミッド式魔法陣を1枚と展開して、“シュベルトクロイツ”を向けて魔力スフィアを1基生成。そして偽フィレスさんが氷剣を投擲すると同時。
「『クルージーン!』」
8発の魔力弾を連射。手で投擲された氷剣より私の射撃魔法の方が弾速に分がある。私たちと偽フィレスさんの距離はおよそ20m。10m圏内に進入されるより早く迎撃する。私の放った魔力弾が氷剣と衝突すると同時に炸裂して、氷剣はウニのように四方八方に氷の柱を魔力爆発の中から生やした。近くで氷剣が炸裂してたら、私たちはあの氷塊に飲み込まれて拘束されてた。
「封縛!」
偽フィレスさんが次の魔法を発動する前に、『いきます!』バインド魔法を発動。偽フィレスさんを取り巻くように展開されたバインドが急速に狭まり、彼女を直立不動の体勢で拘束できた。
「ザフィーラ!」
「承知! 鋼の軛!」
さらに偽フィレスさんの周囲に展開された魔法陣4枚から拘束杭が突き出して、偽フィレスさんを「くぅ・・・!」刺し貫いて拘束した。かと思えば、アインスが「主!」って私を呼んだ。
――ブリッツ・シュランゲ――
と同時、偽フィレスさんに殺到するのは電撃の蛇8匹で、器用に私とザフィーラのバインドに噛み付いて、あっという間に砕いた。雷騎士は、アインスとシグナムの猛攻を凌ぎながらも偽フィレスさんのフォローに入ったようや。
「余計な真似を」
――涙する皇剣――
バインドから逃れた偽フィレスさんがそう吐き捨てて、2本の氷の剣を創り出した。掠るだけで防護服どころか素肌まで凍結されるってゆう魔法や。あれで接近戦に持ち込まれたら、私やと一気に勝ち目が無くなる。
「正直、ミッド地上本部はもう・・・一から改革しないといけないと思うのね」
――神速獣歩――
「まずい! リイン、プリトウェン! ザフィーラ、私の側に!」
『はいです!』
「はい!」
偽フィレスさんが高速移動魔法を使って姿を消したことで、奇襲に備えて防御に全力を注ぐ。私が持つ防御魔法で一番の硬度を誇る「プリトウェン!」を発動。私を中心に八方に展開されるんは四層の対魔力・対物理の多層バリア。
(バリア間に隙間は無いから直撃は防げるはず・・・!)
「はあああああああ!」
――氷奏閃――
直後、気合の入った叫びと一緒に偽フィレスさんが左の氷剣でバリアを攻撃。その1発目でバリアが二層も砕かれた。振りかぶられる右の氷剣に目が吸い込まれる。1撃で二層を砕くんなら、2撃目もまた同じように二層を砕いてくるはず。それで私の防御魔法は終了や。
(急いで次の魔法を・・・!)
『はやてちゃん!』
――シューティングスター――
――ヴォルカニックスカッシャー――
とその時、空から高速で飛来した魔力弾4発が、偽フィレスさんの氷剣2本を弾き飛ばした。さらに炎の剣状砲撃が偽フィレスさんを襲うけど、「この程度の奇襲で私を討とうなどと!」あっさり躱した。そやけど・・・。
「なら、もっと広い視野を持ってくれる? 私の偽者さん?」
「あぐっ!?」
偽フィレスさんの胸から刃が生えて、血飛沫を上げさせた。その背後には、本物の「フィレスさん!」が居て、デバイス・“シュロス”で偽フィレスさんを貫いてた。
†††Sideはやて⇒アリサ†††
ルシルのおかげで解放された私やアリシア、それに騎士フィレスは、大隊の拠点からアクアベール海へと転送されてきた。転送直後、「はやて・・・!」とザフィーラがまずい状況に陥ってるのが見て取れた。
「私の偽者・・・! 忌々しい!」
「アリサ、足場お願い!」
「オッケー!」
あたしが抱きかかえるアリシアのためにフローターフィールドを展開。アリシアが魔法陣に降り立つとすぐに“フォーチュンドロップ”の内の1つ、スナイパーライフルの「ブレイブスナイパー!」を構えなおした。
「フレイムアイズ!」
≪クレイモアフォーム!≫
振り上げた“フレイムアイズ”を大剣形態に変化させて、半物質化してる火炎魔力剣を大きく伸張させる。そして「騎士フィレス!」に、偽騎士フィレスの対応を任せる。
「ターゲッティングシステム・オン!・・・シューティング・・・スタァァァァーーーー!」
「ヴォルカニック・・・スカッシャーーーー!」
――神速獣歩――
アリシアが魔力弾を連射したのと同時、あたしも“フレイムアイズ”を偽騎士フィレス目掛けて振り下ろしたけど、あたし達の一撃は残念ながら躱された。
「あ、決まった」
「よしっ!」
あたしとアリシアの魔法を囮にした騎士フィレスは高速移動魔法で偽騎士フィレスの背後に回り込んで、“シュロス”で偽騎士フィレスを貫いた。
――凍てつく氷葬棺――
『こちら教会騎士、フィレス・カローラ! アリサ・バニングス二尉とアリシア・T・ハラオウン執務官補と共に、これより敵艦隊攻略戦に参加します!』
さらに凍結魔法で偽騎士フィレスを氷漬けにした騎士フィレスが、全体通信であたし達の参加を知らせてくれた。すると『こちらリュッチェンス艦長、ハルトマンです』って通信が入った。
『バニングス二尉とハラオウン執務官補は、八神二佐の指揮下へ。騎士カローラ、あなたの魔法の腕を見込んで、私の指揮下に入っていただけませんか?』
『了解。フィレス・カローラはこれよりハルトマン一佐の指揮下に入ります』
ハルトマン一佐にそう応じた騎士フィレスは、氷漬けになってる偽騎士フィレスから“シュロス”を引き抜いて、そのまま海面へと落下させた。クローンとはいえ自分自身を躊躇無く斬り捨てることの出来る騎士フィレスには少し恐れを抱いたわ。
「それじゃあ私はこれで。あなた達も頑張って」
元先輩局員として敬礼をしてくれた騎士フィレスを、敬礼返しで見送った。騎士フィレスがさらに空へと上がる中で聞こえてきたのは、成層圏に何かが居る、っていう通信だった。
「アリシアちゃん!」
「はやて!」
「アリサ、無事なようで何よりだ」
「ありがと、シグナム。事情はルシルから聞いてる。あたし達の仕事は、なのは達の艦隊攻撃をフォローすることなんでしょ」
見たことのない装備を携えたなのはとすずかとフェイトとヴィータ、それにスカラボのトーレとセッテ、あと手ぶらなクアットロ。なのは達が攻撃の合間に手を振ってくれたから、あたしとアリシアも手を振り返す。
「んじゃはやて。指揮よろしく!」
“フレイムアイズ”をフルドライブ・ヴァラーフォームへと変形させる。スナイパーライフルのような長い銃身の両側に反りの無い直刀が2つある、1m半くらいの長さの大剣ガンブレイドと、1mくらいのソードブレイカーの二剣。この形態なら近中遠の3距離に対応できるわ。
「ねえねえ、はやて。ザフィーラ借りていい?」
「ザフィーラを?」
「そ。狼形態のザフィーラ。移動手段が欲しくて・・・。ダメ?」
アリシアは飛行魔法を使えないから、必然的に空戦もダメになるわけで。空戦S+のフェイトの補佐っていうこともあって、空戦できるように練習はしてるはずなんだけど・・・。未だに完成の域には至ってないわ。
「ザフィーラ、ええか?」
「主の命令とあれば」
「おおきになザフィーラ。アリシアちゃん、振り落とされへんようにな」
「うん、ありがとう! ザフィーラもありがとね!」
「構わん。その分働いてもらうぞ」
狼の姿に変身したザフィーラにアリシアが跨った。まぁ酷いアンバランス感。大人の女になってるアリシアとザフィーラのサイズがなんか合ってない。子供の頃なら様になってたでしょうけど。
「何はともあれ、シグナム達と合流や!」
「ええ!」
「ハイヨー、ザフィーラ~!」
人の姿をした雷を相手に戦ってるシグナムとアインスを見るはやて。アインスの速度でやっと追いつけるレベルって感じで、それだけでも十分脅威だわ。
「敵の呼称は雷騎士や、一応憶えておいてな。で、すずかちゃん達のことは対艦班と呼称。武装のバッテリー交換時にベルリネッタに一時帰艦するから、その際のサポートも仕事や」
「「了解!」」
そうしてあたし達も、そんな雷騎士と戦うべく空を翔けて、戦闘空域に進入するとはやてが「アインス! 広域攻撃仕掛けるよ!」って指示を出した。
『承知しました! エミッションをスタンバイします!』
「そうゆうわけや! みんな、追撃の準備をよろしく!」
「じゃあ私たちは、遠距離で雷騎士の引き離しと足止めに徹しようか! ザフィーラよろしく!」
アリシアは“ブレイブスナイパー”を黒い宝石に戻して、胸元のブローチを開けて収容。そして代わり赤い宝石を取り出して、2挺の短銃型デバイスの「ラッキーシューター!」として起動させた。
「あたしも負けてらんないわね! 行くわよ、フレイムアイズ!」
≪おう!≫
右手に持つガンブレイドの銃口を、シグナムの斬撃を躱した直後の雷騎士へと向ける。にしても、シグナムの猛攻を至近で躱し続けられる雷騎士が凄過ぎるわね。
『シグナム! あたしとアリシアで弾幕を張るわ!』
『一応注意ね!』
『判った。タイミングはお前たちに任せよう』
『間違ってあたし達を撃つなよ~?』
アギトの本気半分からかい半分の言葉にあたしとアリシアは『要らぬ心配よ!』と返して、位置が激しく入れ替わるシグナムと雷騎士の動きを注視。そして雷騎士が腕を振り払うことで生み出した電撃の鞭を防ぐことなく躱したシグナムが、そのままアイツから距離を取った。
「ホーミングシューット!」
「プロミネンスウィップ!」
アリシアは、防御か迎撃されない限りは追い続ける誘導操作弾8発を連射。あたしはヴァラーフォームでのみ発動できる砲撃を発射。この魔法はフレイムウィップの強化版で、本来は同じように鞭として攻撃範囲内を薙ぎ払うものだけど、熱線砲としても利用できる。砲速もかなりあるし、何より魔力消費も他の大火力魔法より少ないから連射も出来る。
「カートリッジロード!」
≪応よ!≫
カートリッジが続く限りは撃ち続けられるわ。アリシアの誘導弾を移動速度にものを言わせて引き離し、あたしの砲撃を軽やかに回避し続ける雷騎士。
――ブリッツ・ケッテ――
そんな回避中にも電撃の鎖9本をあたし達に向けて高速で伸ばしてきた。誘導機能を持っているのか回避しても追ってくるから、左のソードブレイカーに炎を纏わせる。
「タイラントフレア!」
爆炎の斬撃で鎖を焼き滅ぼし、右のガンブレイドで雷騎士への攻撃を続行。アリシアも、ザフィーラが鋼の軛によって鎖を迎撃してくれたから無事で、高速射撃の「スティンガーレイ!」を連射しまくる。
「よしっ! アインス!」
『はい!』
あたし達からある程度引き離して孤立させ、雷騎士をその場に押し留めたことで、はやてとアインスの広域攻撃の条件が整った。
「『遠き地にて、闇に沈め! デアボリック・エミッション!』」
雷騎士を挟み込むように発生した広域空間攻撃。雷騎士はあたし達の足止めによって回避できず、強力なバリア発生阻害効果のある魔力爆発に飲み込まれた。はやてとアインスの強力な魔法の直撃ってこともあって、これで決まったでしょって一息。
『油断しちゃだめだ! アイツは、雷騎士は、あたし達イリュリア製融合騎の中でも特に頑丈で強いんだよ! 最初にロールアウトされた試作騎のクセに! だからまだ、終わってないかもしんない!』
アギトからの念話で、相手にしてるのが融合騎で、アギトやアイリの兄に当たることを、いま初めて知ったんだけど・・・。でもアギトは完全に敵として見ているみたいだし、このまま容赦せずに攻撃を続ければいいのね。
『雷騎士を確認! 海へ向かって墜落中!』
大隊の男メンバーの制服である学生帽やマントがボロボロ崩れて、力なく海面へと向かってく。それを見過ごすわけにはいかないのが局員よ。対象を浮かせる魔法、フローターを発動しようかと言うとき、雷騎士は宙を蹴って勢いよく海の中に飛び込んだ。
『警戒! 何を仕出かすか判らへんよ!』
――ユニゾン・イン――
はやての言葉の直後、雷騎士が落ちた箇所から光の柱が立った。そしてその光の中から「騎士フィレス!?」が姿を現したんだけど、背中からはバチバチと放電する電撃の翼を6枚と展開としていて・・・。
「ユニゾンした・・・!?」
「うそ、致命傷だったはずだよ!?」
あたしとアリシアが驚きの声を上げて、はやてが「魔力量が跳ね上がってる! 手強いよ!」って注意した。肌にビリビリ感じる魔力の圧からよく判るわ。
「命令を受諾。これより当該空域の敵性戦力を殲滅します」
――ゼンゼンマンフォルム――
偽騎士フィレスとユニゾンした雷騎士は、彼女の全身を電撃のローブで覆い、電撃の大鎌を生成した。するとアギトから『アイツの全力だ! 気を付けろ!』っていう切羽詰った警告。
――ブリッツ・トラバント――
雷騎士の周囲に放電する魔力スフィア9基が展開されて、彼は「脅威レベル高の撃破を最優先する」って言って、あたし達だけじゃなくて艦隊への攻撃を行ってるなのは達、それに上空(きっと騎士フィレスね)にも1条の「レーザーサイト!」を照射。
「全隊、砲撃注意!」
『撃たれる前に墜とします!』
――ブラッディダガー――
「おおおおおおーーーーーーーっ!」
――ナイトメア――
「撃たせない!」
――ブルーバレット――
「火力でゴリ押すわよ!」
はやてとリインは高速多弾射撃、アインスは砲撃、アリシアは射撃連射、そしてあたしはガンブレードの剣身に炎を渦巻かせ、「ストームフレア!」火炎竜巻状の砲撃として発射させた。
――雪風の鉄壁――
雷騎士が球体状の猛吹雪に覆われて、あたし達の攻撃がどれも防がれてしまったわ。本体は吹雪の中、魔力スフィアはあたし達の攻撃をヒラリと躱して無事だ。となれば・・・。
――ブリッツ・シュレッケン――
攻撃を許してしまった。スフィア1基から砲撃1発が発射されて、レーザーサイトどおりの射線を通った。砲速は恐ろしく速く、射線が判っていても躱せたのはかなり運が良かったわ。
「騎士フィレス! そちらは平気ですか!?」
『ええ、大丈夫! ただ、そちらと私の居る高度の狭間で戦う他の航空隊員には危険な攻撃だから、次は撃たせないように!』
騎士フィレスの言葉にはやては「了解です!」と返して、今なお続く吹雪へと目をやった。なのは達も安否を確認するまでもなく無事な姿で飛んでいるのは肉眼で確認できるし、たった今5隻目の戦艦を撃沈させた。
「砲撃を発射した時点でスフィアは消失したわね!」
「再発動か、アレ以上の魔法が使われる前に捕まえるよ!」
「アギト。雷騎士の大魔法は今のか?」
『確かそう・・・だったはず。あれから何百年って経ってるし、別の魔法を使えるかもしれない』
断言できないことに『悪い』って謝るアギトだけど、何百年って年月から考えれば仕方ないことだわ。シグナムだって「気にするな」ってフォロー入れてるし。
「とにかく今は雷騎士を墜とすことに専念や!」
はやての言葉に応じるようにあたし達は吹雪へと向かって攻撃を開始。いろんな角度からの射砲撃を放ち、アインスの多弾砲撃ナイトメア・ハウルでとうとう吹雪を突破。吹雪の内部で魔力爆発が起きて、中から雷騎士が飛び出してきた。
『ハルトマンです。セインテスト調査官より、現在この戦闘に投入されている兵器の詳細が送信されてきました。対艦班、騎士カローラ、チーム海鳴にデータを送ります』
ハルトマン一佐からの通信と、兵器データが送られてきたけどゆっくり眺めてる暇はないわ。何せ今相手にしてる雷騎士は大鎌を振るって、「ブリッツ・フリーゲンデ・シュナイデン」大鎌の刃の部分を飛ばしてきたから。フェイトのハーケンセイバーのように高速回転するものや、シグナムの空牙のように回転しないで飛ぶ斬撃の2種があるけど、どちらとも段違いに速い。
――悪魔の角――
大鎌を振るい終わった後すぐ、螺旋状の氷の杭を50発ほど展開して、雷騎士は「墜ちたまえ」と一斉発射。はやてやアインスのブラッディダガーレベルの高速射撃が、あたし達を襲う。あたし達はそれぞれの方法で杭の迎撃を行いつつ・・・
「「『ナイトメアハウル!』」」
はやての5発、アインスの10発の計15発の砲撃が、雷騎士の全方位から襲い掛かる。
――ブリッツ・シュネリヒカイト――
電撃を纏っての超高速移動で砲撃を回避した雷騎士は、さらにシグナムの連結刃による「シュランゲバイセン・アングリフ!」による包囲攻撃も回避。とそこで高速移動魔法の効果切れか、身に纏ってた電撃が消失。
「フリンジングボム!」
雷騎士との距離が近くなっていたあたしは、ガンブレイドの銃口前で生成したバスケットボール大の火炎弾を4発と発射。本来は着弾時や至近で爆破して対象にダメージを与える魔法だけど、躱された後もあたしは爆破することなく維持。何故なら・・・
「ハリセ~~~ン・・・スマァァァァァッシュ!!」
アリシアがあたし達のフォローに入ろうとしていたのを、視界の端で捉えていたから。右手の“ラッキーシューター”を、魔力攻撃を跳ね返せる“ハリセンスマッシュ”に変えていたあの子の姿に、あたしはどうすればいいか判っていた。
「なに・・・!?」
振るわれた“ハリセンスマッシュ”によって跳ね返された火炎弾4発は、雷騎士の至近距離まで飛んだ。距離を取られる前に「バースト!」トリガーを口にすると同時、火炎弾は一斉に大爆発を起こして、雷騎士を飲み込んだ。
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