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戦国異伝供書

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第四十四話 上田原の戦いその十三

「やたら身体が大きい者達じゃな」
「はい、それがし実は上方に行ったこともありますが」
「都や堺におるのじゃな」
「鬼そっくりです」
 そうした外見だというのだ。
「お館様の様な大きなお身体で」
「わしと同じだけか」
 晴信は大柄なだけでなく筋骨隆々とした身体をしている、その体格は猛者が多い武田家の中でも傑出している。
「大きいか」
「そして目は青や緑で」
「そうした色か」
「我等と同じ色の者もいますが」
 それでもというのだ。
「そうした目の色の者もおります」
「そうなのか」
「そして肌は白く顔の彫は深く鼻もかなり高く」
「随分変わった身体の様じゃな」
「そして髪は縮れ金色や赤や茶色です」
「まさに異相じゃな」
「しかもやけに毛深く髭も濃いです」
 そちらのこともだ、山本は晴信に話した。
「随分と異相です」
「確かに鬼に似た姿であるのう」
「そして獣の肉を好みます」
「肉をか」
「はい、牛や馬まで喰らいます」
「猪や鹿ならわかるが」
 山にいる獣達ならというのだ。
「しかし牛や馬までもか」
「美味いと言って」
「ああしたものは美味いのか」
「どうやら」
「わしは食ったことはないがそうは思えぬがな」
「他にも変わったものを多く喰らっています、血の様な赤い酒も」
「ああ、それはわかる」
 酒についてはだ、晴信はすぐに述べた。
「異朝の詩であったわ」
「そちらからご存知ですか」
「唐の頃の詩でな」
 それでというのだ。
「葡萄の酒じゃな」
「そちらはご存知ですか」
「何かと思えば赤い色の酒とのことじゃ」
「そちらはご存知でしたか」
「異朝でも普通に獣は食う」
「牛や馬もですな」
「何でもな、このことはわしも書で知っておる」
 そうだというのだ。
「一応な、そして南蛮の者達もじゃな」
「左様です」
「獣の肉を喰らうか」
「そして船から蘇を出し」
「ほう、蘇か」
「あれは間違いなく蘇でした」
 この食べものだったというのだ。 
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