ある晴れた日に
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447部分:辺りは沈黙に閉ざされその十四
辺りは沈黙に閉ざされその十四
「未春の為なら火の中水の中」
「天国でも地獄でもね」
「あんた達は何か地獄に落ちそうだけれど」
気合を入れる五人を茜が少し茶化してきた。
「未晴は天国だけれどね」
「何で未晴が天国で私達が地獄なのよ」
「一緒じゃないじゃない」
「そんだけ適当で能天気だとな」
「地獄だろ、やっぱり」
男組も容赦のない突込みを入れてきた。
「御前等全然とことんお気楽極楽だからな」
「だから地獄だな」
「私達そこまで悪いことしてないけれど」
「地獄に落ちるまでは」
五人は五人でこう反論する。
「そんなねえ」
「そうよ」
「だから気にする言葉じゃないじゃない」
不平を言い出した五人に今度は明日夢が言ってきた。
「ただ茶化しただけなんだし」
「それでもよ」
「未晴と一緒じゃねえなんてよ」
「それが嫌なの」
五人が言うのはこのことだった。
「それだけはね」
「今だって五人だとどれだけ寂しいか」
実際に今も近頃も五人の顔色は晴れたものではない。それが何よりの証だった。
「未晴とずっと一緒だったのに」
「いないなんて」
「落ち込んだら余計によくないわよ」
恵美はその五人に言った。
「そんな顔になった」
「こんな顔になったら」
「やっぱりよくないの?」
「未晴も喜ばないわよ」
こう言うのである。
「未晴だってあんた達にはいつも笑顔でいて欲しいだろうしね」
「そうね」
「それは確かに」
恵美の今の言葉はとりわけ五人に届いた。
「じゃあ笑えっていうのね」
「今は」
「そうよ。笑うのよ」
実際にこう告げるのだった。
「少し無理をしてでもね」
「わかったよ」
「じゃあ」
五人は恵美の言葉に頷いた。そうして何とか笑顔を作るのだった。かなり無理をしているがそれでも笑顔を作るのだった。
「そうでない場合もあるけれど無理してでも笑うといい場合があるのよ」
「無理になのね」
「そう。無理をしてでもね」
恵美は今度は千佳に述べていた。背の高い彼女とやや小柄な千佳ではかなりの差が見えていた。今は横になって歩いているから余計にわかる。
「そうするべきよ、今はね」
「無理をしてでも笑って」
「それで相手が笑ってくれたらこちらも本当に笑えるわ」
だからだというのだ。
「今は。そうしてね」
「そうなの」
「そうした方がいいわ」
また五人に述べる恵美だった。
「だから頑張ってね」
「未晴が笑うんならね」
「これでいいわ」
五人もこう言って頷くのだった。やはり無理をしてでも微笑みを作っている。
「さて、それじゃあ」
「そろそろよ」
(そうだな)
正道は今の彼女達の言葉に心の中で頷いた。
(そろそろだ)
「それで未晴のお母さんだけれど」
「見て驚かないでよ」
五人は正道の心の中の言葉には気付かずこう皆に言うのだった。
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