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ある晴れた日に

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441部分:辺りは沈黙に閉ざされその八


辺りは沈黙に閉ざされその八

「どう思う?あれ」
「有り得ないな」
 正道もまたこの言葉を出すことになった。怪訝な顔になって。
「あの態度は」
「そうだよね。おかしいよね」
「何か隠しているのか?」
 正道はこうした疑念も心の中に持つに至った。
「先生達は」
「どうだろうね」
 加山はそうは思ってはいないようだった。首を傾げさせてはいるがだ。
「その辺りは」
「未晴は風邪だよな」
「そう思うよ」
 だが今の言葉ははっきりとしたものではなかった。いささかぼんやりとしたものだった。
「多分だけれど」
「多分か」
「ただの風邪には思えないけれどね」
 しかしこう感じてはいるのであった。
「あの態度だとね」
「入院先も教えてくれないか」
「おかしいね、本当に」
「そうだな。少しな」
「まあ。そんな状況だけれど」
 不審な目になりだしている加山だった。
「やっぱり。どうなのかな」
「おかしいのは間違いないな」
 正道は腕を組んで述べた。
「今の状況は」
「それでどうするの?」
 加山は今度はその正道に対して尋ねた。
「音橋君はさ」8
「俺か」
「うん。どうするの」 
 あらためて彼に尋ねるのだった。
「それで。お見舞いに行くの」
「行きたいな」
 本音だった。これは。
「本当にな」
「そうよね。行きたいよね」
 それは当然のことだと言う加山だった。
「やっぱりそうだよね」
「けれどな」
 しかしだった。正道は難しい顔になった。これまで以上にだ。
「それもどうかな」
「難しいっていうんだね」
「入院先がわからない」
 まずはこのことだった。
「それに先生達はあの調子だしな」
「何を言っても絶対に教えてくれないね」
「どうするか」
 正道は考える顔にもなった。それもかなり深いものだ。
「それを考えていくか」
「とりあえずはだけれど」
「とりあえずは?」
「何があるかわからないかも」
 首を捻ってこう言いだした加山だった。
「いや、何もなくて当然だけれどね」
「何もなくてか」
「そんな。おかしなことなんてないよ」
 半分以上は自分自身に言い聞かせている加山だった。
「世の中に。そんなおかしなことってないけれど」
「ないか」
「そうはないよ」
 こう言うのである。
「だから。自分でも変なことを言っているのはわかるけれどね」
「別に変なことでもないと思うがな」
「そうかな」
「世の中そんなにおかしな奴もいないだろう」
 ここでこうしたことを言う正道だった。この時彼は自分が言っていることはおおむね正しいと思っていた。少なくとも間違いではないと思っていた。
 
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