戦国異伝供書
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第四十四話 上田原の戦いその十二
「後の二つはその一つに従う」
「その様にか」
「出ております」
「妙な星の動きじゃな」
晴信も聞いて思うことだった。
「それはまさに」
「思うに」
「その三つはわしとじゃな」
「織田殿に」
「長尾虎千代か」
「そうかと」
「そうか、あの二人か」
晴信も頷いて応えた。
「左様か」
「お館様は常に言っておられますが」
「あの二人を家臣にしたいとな」
「ご自身の両腕に」
「まさにな」
「やはりそのお二人がですか」
「三つの星の残る二つであろうな」
これが晴信の見立てだった。
「どう考えても」
「では」
「うむ、わしはやがてな」
「二つの将星をも従え」
「そして天下を治める」
「統一ではないですな」
「あの者達に勝った時統一となろう」
晴信は笑って山本に答えた。
「天下の覇を争う時それぞれ大きな勢力になっておるしな」
「その三つの勢力を全てお館様が手中に収められれば」
「その時はおのずとじゃ」
「貂かはお館様のものになっている」
「そうであるからな」
このことが充分考えられるからだというのだ。
「それでこう言うのじゃ」
「そういうことですな」
「統一はあの者達との戦じゃ」
そこで行うものだというのだ。
「そして降せばな」
「統一は成っているので」
「その後でな」
「天下を治める時に」
「あの二人の力が必要じゃ」
「ううむ、お館様は先の先までお考えですな」
「天下を一つにした後もな」
まさにその時もというのだ。
「考えておる、今天下で大きな家は三好と大内であるが」
「ですが、どちらの家もです」
実際にとだ、山本は晴信に天下のことも話した。
「広い領地に多くの民と兵を持ち」
「それぞれ巨大であるな」
「はい、ですが」
それでもとだ、山本は晴信に述べた。
「どちらもどうも」
「落ちるか」
「その様です、天下を統一するとは」
このことはというのだ。
「無理でしょう」
「そうした家ではないか」
「大内殿も三好殿も」
まさにどちらの家もというのだ。
「確かに今は大きな勢力ですが」
「どちらも落ちるな」
「特に三好殿は都も抑えています」
「うむ、公方様さえ思いのままじゃ」
「明との交易で利益も得ていますし」
このことは大内家もだ、どちらの家も明との交易を行っていてそちらでも大きな利を得ているのだ。
「南蛮の者達ともはじめています」
「交易をな」
「春かな西から来たという」
「何でもあれじゃな」
南蛮と聞いてだ、晴信は山本に言った。
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