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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第四幕その六

「もてたことはね」
「一度もないっていうのね」
「子供の頃からね」
 今に至るまでというのです。
「そんなことはなかったから」
「だからなの」
「そう、だから結婚とかね」
「絶対にないのね」
「運動音痴でこの外見だよ」
 野暮ったいものだからだというのです。
「だからね」
「もてなくて」
「結婚もね。妹には来日してここに来る度に言われているけれど」
「いや、人間外見じゃないわよ」
 お静さんは先生に真面目に言いました。
「はっきり言うけれど」
「それ皆から言われるけれどね」
「だってその通りだからよ」 
 真理だからだというのです。
「幾らお顔がよくてもね」
「性格が悪いとだね」
「もてないわよ、品がなくてもね」
 この場合もというのです。
「駄目よ、けれどね」
「けれどっていうと」
「先生は紳士だし親切だし公平で」
 お静さんも先生の長所はちゃんとわかっています。
「女性にも礼儀正しいじゃない、悪いこともしないし」
「モラルは守らないとね、それに紳士でありたいとはね」
「いつも思っていてよね」
「ちゃんとしているつもりだよ」
「しかも服装もしっかりしてるし」
 外出の時はいつもスーツです。
「清潔だしね」
「だから身だしなみはね」
「ちゃんとしないと駄目っていうのね」
「お掃除は皆がしてくれるし、服の手入れも」
 動物の皆を見て言うのでした。
「だからね」
「身だしなみもなのね」
「奇麗にしてね」
 そうしてというのです。
「やっていけているんだよ」
「そうなの」
「僕一人じゃ生活力もないからね」
「それはどうとでもなるわよ、先生ちゃんとした収入もあるし」
 大学教授としてのそれがというのです。
「何も不足はないから」
「だからなんだ」
「絶対にいい人とね」
 お静さんも他の人達と同じく確信して言えました。
「結婚出来て幸せにもね」
「なれるんだ」
「ええ、なれるわ」 
 間違いなくというのです。
「本当にね」
「そうなのかな」
「私は化かすけれど嘘は言わないわ」
 お静さんはまた断言しました。
「だからね」
「僕も結婚出来るんだ」
「いい人とね」
 間違いなくというのです。
「それが出来るわ」
「そうかな」
「そうよ、安心していいわよ」
「果たしてそうかな」
「何なら占ってみるわよ」
 お静さんは先生にこうも言いました。
「猫又の妖力を使ってね」
「お静さん占いも出来るんだ」
「そうよ、じゃあいいかしら」
「それじゃあ折角だからね」
「ええ、はじめるわね」
 こう答えてです、お静さんは虫眼鏡を出してでした。 
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