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レーヴァティン

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第百七話 善政が招くものその八

「紀伊に攻める時だが」
「もういい頃だね」
 桜子が応えた。
「それは」
「そう思うか」
「内政もかなり進んでるし」
 それも順調にだ。
「兵も鍛えられているしね」
「武具も揃ってきた」
「ならね」
 それならとだ、桜子は英雄に話した。
「もういいね、今あたし達が出せる兵は」
「紀伊攻めには六万出せる」
「ならその六万でね」
「紀伊を攻めるか」
「そうするかい?」
「攻めるなら一気に攻めてだ」
 そしてとだ、英雄は述べた。
「そのうえでだ」
「さらにだね」
「あの国をだ」
「紀伊をね」
「手に入れる」
 そうすると言うのだった。
「今度はな」
「紀伊を手に入れる時は」
 今度は謙二が言ってきた。
「高野山に忍者達が」
「それでありますが」
 ここで峰夫が言ってきた。
「紀伊の山の民達も領民にしたでありますから」
「高野山は山の中にありますね」
「そして忍達もでであります」
 彼等もというのだ。
「山にであります」
「縁が深いですね」
「だからであります」 
「既につてが出来ている」
「そうであります」
「ほなな」
 今度は忍である耕平が言ってきた。
「わいもな」
「忍の者達については」
「話をしてみるか」
「そしてこちらに降ってくれれば」
「味方にしてくか」
「そうするでありますな」
「紀伊の忍達はこっちの世界でも強いっていうな」
「はい、伊賀の伊賀者や甲賀者達と共に」
 彼等と並んでとだ、峰夫は耕平にも話した。
「この浮島屈指の忍達であります」
「それやったらな」
「戦をすることなくな」
「加えたいでありますな」
「強い敵は正直な」
 耕平にしてもなのだ、このことは。
「戦わずにな」
「味方に加えたいであります」
「戦ったらこっちも大きな傷を負う」
 強い敵と戦えばというのだ。
「けれどそのまま味方になったら」
「有り難い味方になる」
「そやからな」
「是非にでありますな」
「降る様に言っておくか」
「そしてその際は」
「あんたのつてを使わせてくれるか」
 こう峰夫に頼むのだった。
「山の民達のな」
「それでは」
「そして高野山も」
 今度は謙二が言った。
「山の民達と縁がありますね」
「そうなるであります」
「それでは」
 謙二は峰夫のその返事に顔を綻ばせて応えた。
「この浮島の高野山は多くの僧兵と荘園を有しているかなりの勢力ですが」
「その高野山もまた」
 本山が名前の通り山にある、峰夫もそのことを指摘した。
「山の民達からもお話をしてもらって」
「そうしてそのうえで」
「こちらに入ってもらう」
「話で済むならだ」
 英雄もここで述べた。
「それで構わない」
「そうでありますね」
「それが最善だ」
「戦をしないことが」
「俺は戦わずして勝つならだ」
 それでと言うのだった。 
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