ある晴れた日に
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409部分:雉鳩が消えたその九
雉鳩が消えたその九
「下着位はいいけれど他にオレンジとか黄色とか赤もいいじゃない」
「派手な色ばかりね」
奈々瀬は咲が出してきた色を聞いてこう述べた。
「咲も昔からそうした色好きよね」
「だって派手じゃない」
派手好きだというのだ。つまりは。
「それに目立つし。特にオレンジ」
「オレンジなの」
「福岡ダイエーホークスの色だったし」
実に咲らしい返答であった。
「黄色は今のソフトバンクだし。赤はまあ置いておいて」
こちらは純粋に好きな色であるらしい。
「とにかく目立ったらいいじゃない。好きな色で」
「そういうものかしら」
未晴は咲のその言葉にも今一つ納得していないようだった。
「確かに人それぞれだけれど」
「王監督も秋山さんもオレンジよ」
つまりホークスだというのである。
「それに黄色。だからよ」
「まあうちもな」
「私も」
春華と静華もそれを言えば言えることがあった。
「ヤクルトの色青だしな」
「阪神ってやっぱり黄色だし」
二人の好きな色もそれであった。女の子であるがそれでいても何処までも野球が絡む面々である。
「まあ凛は緑だけれどね」
「それでも黄色は好きよ」
一応その色も好きな凛であった。
「それに緑はその虎がいるジャングルの色じゃない」
「あっ、確かに」
「そういえば」
こういうことにすると話に辻褄が合うのだと。勝手に納得する彼女達であった。
「そういうことね」
「それなら」
六人で笑顔で頷き合ってそのうえで笑顔になっていく。
「何かそれだと少年の赤は辻褄が合わないけれど」
「それでもね」
「あっ、その少年からメールよ」
ここで凛が自分の携帯の着信音を聞いて笑顔になる。
「三日後三人でお祭に来るんだって」
「ああ、恵美と茜ね」
奈々瀬はその三人の組み合わせをすぐに察した。
「いつもの三人ね」
「西と東がまた一緒になるのね」
未晴は微笑んでこう述べた。
「それもいいわね」
「ただしあんたは別行動でしょ」
咲はその未晴にすかさず突っ込みを入れた。
「いいじゃない。行きなさいよ」
「行きなさいって?」
「だから音橋のところによ」
見れば彼女も言いながら微笑んでいた。
「行けばいいじゃない、デートに」
「デートにって」
「咲達のことはいいから」
こうまで言ってみせるのだった。
「こっちは五人で好きにやるし」
「そうそう」
「五人でね」
「楽しくやるから」
「気にしないでよ」
四人もまた笑顔で未晴に対して告げた。
「だからさ。二人で楽しくやってきたらいいじゃない」
「どうせ同じお祭に行くんだし」
彼女達なりに未晴に気を使っている言葉である。五人にしても未晴には楽しんでもらいたいのである。だからこそ言うのである。
「それでね」
「やってきたらいいわ」
「けれど」
だがそれには今一つはっきりとしない顔を見せる未晴だった。
「皆が」
「だからいいって言ってるじゃない」
凛は今度は苦笑いで未晴に返した。
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