ある晴れた日に
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405部分:雉鳩が消えたその五
雉鳩が消えたその五
「そうな」
「そんなもんか。そういえば俺のギターも」
「どうした?」
「やっぱり思い入れがあるぜ」
ややにやりと笑った上での言葉であった。
「俺のギター。あれ買うのに随分とバイトしたからな」
「だからか」
「それで思い入れがあるんだよ」
語る彼の目は実に真剣なものだった。
「俺なりにな」
「じゃあそれでいいだろう」
正道はそれでいいと頷いてみせた。
「御前がそう思うのならな」
「そうか。それじゃあな」
彼は正道に言われて笑顔になっていた。
「俺は俺のギターをそう思うな」
「そうするといい。あとは告白だな」
「そうだよな。それもだよな」
告白のことを言われるとまた目を細めさせる彼だった。
「恋をするか。俺もな」
「するといい。絶対にな」
「そうするぜ。それで御前今日はどうするんだ?」
「今日か」
「祭は確か三日後だったよな」
「そうだったな」
また彼の言葉に頷く正道だった。
「確かな」
「やっぱり行くんだよな」
また正道に問うてきた。
「御前も。彼女と」
「祭は一人で行くものじゃない」
これまた実にはっきりとした返答だった。
「出来るだけ大人数で行くものだ」
「それも彼女か彼氏がいれば」
「その相手と行く」
またしてもはっきりとした返答を出すのだった。
「そういうものだ」
「だよなあ。じゃあ俺も三日後な」
彼は腕を組み溜息か何かわからない息を出しながら言った。
「あの娘と一緒に行くことができたらな」
「そうしたいか」
「したいよ」
顔を前に出しての言葉だった。感情がそこから見える。
「絶対にな。告白するんならな」
「吉報を待っている」
本当に待っているのかどうかわからない程に感情が見えないがそれでも正道を知っている人間が見れば本当に待っていることがわかる言葉だった。
「三日後にな」
「待ってろよ。三日後だ」
もう既に燃え上がっている彼だった。
「三日後な。楽しみにしておいてくれよ」
「わかった。それじゃあな」
「彼女がいる奴が羨ましかった」
彼の本音である。これもまた。
「本当にな。羨ましかったんだよ」
「彼女ができればその羨ましいという気持ちもなるなる」
「だろうな」
これは彼にもわかる感情だった。
「できればな」
「三日後な」
「ああ、三日後な」
今度は三日後という言葉を互いに言い合う。
「楽しみにしていろよ」
「楽しみにしている」
こうして三日後のことを誓い合う二人だった。その日咲達はいつも咲が遊びに来ている天理教の教会に来ていた。そこの畳の広い部屋で着物を広げてあれこれと話をしていた。
「これ奈々瀬が前に来てたやつよね」
「そうよ」
「それでこれは凛が」
「そうそう、それそれ」
皆未晴が刺し示すその浴衣を見て頷いている。
「私はそれなのよ」
「うちはそれでな」
「咲はそれね」
「去年と同じでいいのね」
未晴はここで五人に対して尋ねるのだった。
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