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ある晴れた日に

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398部分:目を閉じてその二十五


目を閉じてその二十五

「咲達はね。ずっとお友達よ」
「あの連中とはずっと友達なんだな」
「そうよ。これまでも今もこれからも」
 過去も現在も未来もということだった。その全ての時間で六人は一緒だというのだ。やはりかなり深く強い絆なのは間違いなかった。
「けれど。もう一つ絆ができたから」
「それが俺か」
「だから正道君」
 また彼に顔を向けてきて声をかけてきた。
「この街。また一緒に歩いて」
「一緒にか」
「これからずっと」
 彼について言うのは未来だった。
「正道君のこと知ったのは高校に入ってからだけれど」
「そうだったな」
 時間という概念を考えれば正道は咲達には及ばない。だがそれでも未晴はあえて正道に対して言うのだった。正道のことをよく考えながら。
「一学期に知り合って今は夏休みだな」
「短いわね。時間は」
「だがそれでも絆はか」
「ええ。これからもっと強く深いものにしていきたいから」
 今度は顔は少し俯き加減だった。それでも正面を見ていた。
「またこの街一緒にね」
「わかった」
 正道は未晴のその申し出に静かに頷いた。
「またな。この街な」
「これからもずっと」
 未晴の言葉は同じことを繰り返していた。しかしこれは自分と正道の絆を確かめている言葉だった。その深く、強くなってきているものをだ。
「二人でね」
「夜だけじゃなくて昼もだよな」
 正道は今度はこんなことも言うのだった。
「それは」
「ええ。よかったら」
 また言う未晴だった。
「ずっとね。一緒にね」
「また今度な」
「有り難う。それじゃあ」
 ここで未晴は立ち止まった。立ち止まったその場所は。
「ここよ」
「ここか」
「そうよ。ここが私のお家なの」
 気付けばそこに奇麗な白い家があった。何処かドイツのそれを思わせる堅固な造りの家だった。未晴はその家の前で立ち止まったのだ。
「ここがね」
「何かこの家は」
「どうしたの?」
「童話に出て来るみたいな家だな」
 そのドイツ風の家を見ての言葉だった。彼がこう言ったのはやはりこの家がドイツを思わせたからだろう。グリム童話を連想したのであろう。
「煙突といいな」
「この煙突は飾りよ」
 煙突は家で最も目立っているものだった。未晴は正道が指差したその赤い家から出ているその煉瓦の煙突を見てこう彼に話したのだった。
「実はね」
「飾りか」
「だって。実際に煙突なんて使ったら」
 未晴の言葉が苦笑いを含んだものになっていた。
「薪だって必要だしお掃除だって大変じゃない」
「それはそうだな」
「そうでしょ?だからね」
 飾りだというのである。
「蓋もしてるし使ったこともないし」
「そうか」
「そうなのよ。本当に飾りなの」
 煙突を見ての話は続く。
「残念だった?」
「いや」
 これについては別に、といった感じの正道だった。
「まあそうだろうな」
「今の日本で煙突はやっぱりね」
 未晴の言葉は照れ臭そうにもなっていた。
「無理があるわ」
「それでも見栄えにはいいな」
 正道は煙突を見ながらこうも言った。
 
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