| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十三話 関東のことその五

「失っているであろうな、敗れることもな」
「有り得ると」
「今のわしは油断しておらぬが負けるとはじゃ」
「思っておられませぬか」
「全くな、必ず勝つとじゃ」
 その様にというのだ。
「確かにじ思っておる」
「そう思えることはやはり」
「真田家と上田が手に入ったからじゃ」 
 この為だというのだ。
「ではな」
「まずは林城に入り」
「そこからじゃ」
「信濃の北に兵を進めますな」
「あらためてな、そして先陣じゃが」
「甘利殿と板垣殿ですな」
「あの二人に任せる」
 その彼等にというのだ。
「あの二人ならばな」
「この度の戦の先陣は」
「必ず果たしてくれる、そこに源次郎と十勇士達も入れる」
 甘利と板垣が率いる先陣の中にというのだ。
「こうすればじゃ」
「何があろうとも負けませぬな」
「源次郎は天下一の武士になる男じゃ」
 晴信はこのことも確信を以て述べた。
「必ず戦の場では大きな働きをしてくれる」
「それ故に」
「先陣にはあ奴も入れる」
「そして十勇士達も」
「あの者達は文字通り一騎当千」 
 そこまでの強さがあるというのだ。
「ならばな」
「あの者達も先陣に加えれば」
「必ず勝てる」
「先陣の戦で討ち崩し」
「そこからじゃ」
「さらに攻めてですな」
「葛尾の城もな」
 村上家の本城であるこの城もというのだ。
「攻め落とす」
「ですか、ですが」
「砥石の城もか」
「あの城もありまする」
 村上家にはというのだ。
「あの城も攻め落とさねば」
「葛尾城を攻め落としてもな」
「まだですぞ」
「村上家に勝ったことにはならぬな」
「そして小笠原家にも」
 この家に対してもというのだ。
「ですから」
「わかっておる、しかしな」 
 ここで晴信は顔を曇らせて山本に話した。
「あの城はな」
「むしろ葛葉城よりもですな」
「攻めにくいそうじゃな」
「はい、ですから」
「攻めるにはな」
「かなりの工夫が必要で」
 それでと言うのだった、山本もまた。
「兵の数を頼りに攻めましても」
「攻め落とせぬな」
「はい、ですから」
「ふむ、ではな」
「攻める時には」
「迂闊に攻めることなく」
 そうしてとだ、晴信は山本に答えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧