ある晴れた日に
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393部分:目を閉じてその二十
目を閉じてその二十
「どうしようかしら。それじゃあ」
「あんたその写真自分のアルバムに入れるのよね」
恵美はそのことを指摘する。咲がアルバム作りを趣味にしていることは皆が知っていることだった。皆と一緒に映っているその写真をアルバムの中に入れているのである。
「それだったらやっぱり」
「あんたがいないとお話にならないわよね」
茜もそのことを指摘する。
「やっぱり」
「別に咲が撮ってもいいけれど」
「けれどそれだとアルバムに入れても意味ないわよ」
千佳も話に加わってきた。
「咲ちゃんのアルバムなんだから」
「それはそうだけれど」
「俺が撮ろうか」
正道がここで名乗り出てきた。
「それだったらな」
「あんたが撮るの?」
「駄目か?それで」
「いえ、私が撮るわ」
だがまた一人。名乗り出てきたのであった。皆その一人を見て言うのだった。
「未晴、あんたが?」
「撮るっていうのかよ」
「だって咲のアルバムの為の写真だから」
未晴は言うのだった。
「やっぱり咲がいないと駄目じゃない」
「別にそれはいいけれど」
「よくないわよ」
未晴はそれをよしとはしなかった。咲を気遣ってそのうえでの言葉であるのは明らかだった。
「そんなの。やっぱり咲のアルバムの為の写真だから」
「じゃああれ?」
咲はそんな未晴の言葉を聞いて言うのだった。
「あんたが撮ってくれるの?写真」
「駄目かしら。それじゃあ」
「けれどそれだと」
咲はそれを聞いていぶかしむ顔になってそうしてまた言った。
「あんたが映らないじゃない」
「何かそれもな」
「そうよね」
春華と奈々瀬は未晴が映らないとわかってこれまたいぶかしむ顔になった。幼稚園の頃からの付き合いの深さがここでも出るのだった。
「物足りないよな」
「折角皆いるんだから皆で映りたくない?」
奈々瀬は言った。
「やっぱり」
「そうよね。奈々瀬の言う通りよね」
凛も奈々瀬のその言葉に賛成するのだった。
「皆で一緒に映らない?何とかして」
「何とかしてってよ」
「写真撮る奴は絶対必要だぜ」
佐々と野茂はそこを言うのだった。
「だから一人は絶対にあぶれるぜ」
「どうするんだよ、そこんところ」
「だよな。二回撮るんならいいけれどな」
「別の奴がまた撮って最初に撮った奴が入ってな」
坂上と坪本はそのやり方を提案した。
「これならどうだよ」
「いいんじゃねえか?」
「そうだね」
加山が二人の提案に頷いた。
「それだったら皆映れるよね」
「ああ、待って」
ところがであった。ここで明日夢が皆に対して言ってきた。
「お店の娘呼んでくるから」
「お店の娘ってあれかよ」
野本はその明日夢の言葉に突っ込みを入れた。
「この店のアルバイトのか?」
「そうよ。私と入れ替わりにバイトに入ったね」
その娘だというのである。
「その娘呼ぶ?それで撮ってもらうのはどう?」
「そうね。それだとね」
咲は明日夢のその提案に乗り気になっていた。
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