ある晴れた日に
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391部分:目を閉じてその十八
目を閉じてその十八
「興味があってな」
「そんなに大事な話かな」
「そうかもな」
正道のあまりにも真面目な顔に戸惑いを見せる竹山だったが正道の顔は変わらない。酔ってはいるがそれでも目は真面目なものになっていた。
「ひょっとしたらな」
「まあ。事実は事実じゃない」
竹山は彼のその真面目に応えて述べた。
「だったら逃げても仕方ないよね」
「そうだな」
「だから。あえてそれを受けてね」
彼は正道に対してまた言った。
「何でもやっていくしかないからね」
「事実を受けてか」
「楽しい事実もあれば悲しい事実もあるけれど」
竹山はその両方を話に出してみせた。
「それでもね。そういったものを全部受けてね」
「逃げずに向かっていくんだな」
「そういうこと。それでどうかな」
「事実からは逃げられない」
正道は竹山の言葉をこうも言い換えて心の中に刻み込んだ。
「そういうものか」
「まあそこまで真面目に考えなくてもいいんじゃない?」
静華が正道の前に一杯のビールを差し出してそのうえで声をかけてきた。
「だって起こっちゃったことはどうしようもないじゃない」
「ああ」
静華の言葉も受けてそのうえで頷いてみせる正道だった。
「それだけか」
「それだけじゃない?それで今の現実はこれよ」
「ビールか」
「ついでに言えばさ」
静華はわざと能天気な笑顔を見せて正道に言ってみせた。これは彼女なりの正道に対する心遣いであった。ただ能天気なだけではないのだった。
「今は明るく飲む場所じゃない」
「じゃあ明るく飲め、か」
「そうよ。一応ビールの中にウイスキーも入れておいたわよ」
「爆弾酒だな」
正道はその酒を何というのか知っていた。韓国軍の間ではじまったものであり一気に酔えるからこうした名前になったのである。爆弾酒であると。
「それは」
「そうよ。飲む?」
「ああ、くれ」
そしてその酒を受け取る正道だった。
「明るく飲ませてもらうな」
「その意気よ。潰れたらそのままだからね」
ここでは突き放した言葉で笑ってみせる静華だった。
「それはいいわね」
「ほったらかしか」
「明るく飲んでとは言ったけれど介抱するとは言ってないから」
相変わらずの明るい笑顔ではあったが言葉はきつかった。
「ついでに言うけれどね」
「何だ?」
「酔って襲い掛かってきたら容赦しないから」
こうも言う静華だった。
「急所攻撃、覚悟しておいてね」
「誰が襲うか」
今の正道の言葉は本気だった。
「おたくみたいなのはな」
「あら、私に魅力がないっていうの?」
そう言われればかえってトサカに来る。女というものは複雑だった。それについてはこの静華も同じであると言えた。彼女も女だからだ。
「それって。そういうこと?」
「違う。安心しろ」
だがそれについては否定する正道だった。
「それはな」
「違うんならどうしての?」
「俺はもういる」
だからだというのだった。
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