花の妖精

　　　　　　　　　　　　　　　　花の妖精
　明るい茶色のやや癖のある胸までの髪の毛から少し上に尖った耳がある。明るく大きな黒い瞳ややや小悪魔な感じがしていて細い眉がその上にある。ははホームベース型の白い顔の頬はほんのり赤く小さな唇の口元が可愛らしい。鼻はあまり高くないが形はいい。明るいグレーのブレザーの下は赤いリボンと白ブラウスで青と黒のタートンチェックのミニスカートから奇麗な脚が出ている。胸はかなりある。坂口若菜はそうした外見である。背は一六二位である。
　その若菜にだ、交際相手の浜口雄二は言った。
「何ていうかね」
「どうしたんですか？」
「いや、若菜ちゃんみたいな娘ともうすぐね」
「結婚するんですよ、私達」　
　若菜は自分の隣を歩いている雄二に言った。自分より十センチ程高く痩せていて穏やかな外見でスーツを着ている彼に。
「だって雄二さんも」
「今日大学卒業したしね」
　それでスーツ姿なのだ、卒業式はその姿で出たのだ。
「だからね」
「そうでしたね、八条大学」
「いい大学だったよ」
　しみじみとしてだ、雄二は言った。
「本当に」
「それで就職は八条アニメでしたね」
「そうそう、そこだよ」
「アニメ業界って大変ですよね」
「ああ、八条アニメはホワイトだから」　
　色々言われている業界だがというのだ。
「残業もお給料もね」
「どっちもですか」
「ブラックじゃないから」
「八条グループの企業だからですね」
「そう、だからね」
　それでというのだ。
「ホワイトで評判だよ」
「そうだといいですが」
「その辺りよかったよ」
「ホワイト企業に入られて」
「うん、それで若菜ちゃんも」
　今度は雄二から若菜に言った、二人で難波の街を歩きながら。丁度夕刻のなんばグランド花月の前を二人で歩いている。
「高校をね」
「あと少しで卒業ですよ」　
　若菜は雄二ににこりと笑って答えた。
「私も」
「そうだよね」
「私は西成の企業に就職して」
　高校を卒業してすぐにだ。
「それで、ですね」
「共働きでね」
「六月に」
　若菜は雄二ににこりと笑って言った。
「籍入れてですね」
「その前に若菜ちゃんが卒業したら」
「早速ですね」
　その時からというのだ。
「同棲スタートですね」
「その時が来るのも嘘みたいだよ」
「何か全部嘘みたいですね」
「そんな気分だよ」
　実際にと言うのだった、雄二としては。
「本当にね」
「そうですか、けれどそれを言ったら」
「それを言ったら？」
「私達が付き合う様になったことも」
　このこと自体がというのだ。
「嘘みたいですよ」
「大学生と高校生の合コンでね」
「去年お会いして」
「それからだったからね」
「そう、それで」
　そのうえでというのだ。