ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第155話:VAVA.Ⅴ
アクセルはホワイトアクセルを解除して襲い掛かってくる警備ロイドを返り討ちにしながら進んでいた。
ホワイトアクセルは機動力の引き換えに防御力が低くなるために乱戦にはあまり向かないからだ。
そして広い部屋に出るとそこにはサイクロプスの量産型であるゴーレムに似たライドアーマーが鎮座していた。
「ゴーレム?」
「正確にはゴーレムをベースに俺専用にチューンアップしたデビルベアだ。覚えておけ坊や」
「!?」
声がした上空に目を遣るとVAVAが浮かんでいた。
そしてVAVAは専用ライドアーマー・デビルベアに乗り込んでアクセルを見下ろす。
「成る程、俺の目に狂いはなかったか。お前は潜在能力を引き出し、俺の元にまで来た。そして恐らくエックス達もここに来ることだろう…旧き世界が滅び行く直前にこんな極上の獲物共を狩れるとは…少々贅沢過ぎるかもしれんな」
「僕はあんたを喜ばせるために強くなったんじゃないよ。全てはシグマを倒すためなんだ。あいつだけは絶対に許さない」
嫌悪感を露にしながら言うアクセルにVAVAは愉快そうに笑った。
「シグマを倒したところで最早、時代の流れは戻らんさ。それでもまだ足掻くのか?まだ旧き世界に望みがあるとでも?」
「あんたとシグマを倒せば良いだけでしょ?望みありまくりだね」
「ふはは、良い目をするようになったな坊や…!そうだ、そうでなくてはな…それでは破滅の最後の一時まで愉しもうじゃないか!!」
そう言うのと同時にVAVAはデビルベアを起動させるとアクセルに挑みかかる。
「遅い…!!レイガン!!」
「おっと!!」
光速で発射されるレーザーをVAVAはデビルベアのバリアで無力化する。
「バリア!?」
「デビルベアは今まで俺が扱ってきたライドアーマーの中でもパワーと防御力はあるが、この分鈍重だからな。俺の操縦技術でもどうしてもカバー出来んところが出てくる。そのためのバリア機能だ。良いか坊や?致命的な弱点を補うことを怠らないことも一流のハンターには必要なことだ。覚えておけ」
「イレギュラーの癖にハンターを語るな!偉そうにっ!!」
イレギュラーの身分でありながらハンターの在り方を語るVAVAにアクセルは憤りながらスパイラルマグナムのマグナム弾を放つが、デビルベアのバリアに阻まれてしまう。
「やれやれ、まるで聞き分けのない犬だな坊や。新人時代のルインは素直にアドバイスを聞いたものだが……最初のシグマの反乱の際には大勢のハンターが人類に反旗を翻した。元々ハンターの大半が自分達を使う人間に不信感を抱いていたが、あれをきっかけにハンターは大幅に弱体化した。離反したハンターの中には虫酸が走るような良識を持ったハンターもいたぞ?そいつらにも分かってたんだろうよ、この世界に未来など無いってことにな」
「黙れよイレギュラー!!」
今度はフレイムバーナーを試してみるが、超高温の火炎放射でさえバリアを突破出来ない。
「ただ闇雲に攻撃しても俺は倒せんぞ?もう少し頭を使うことだな坊や…デビルスタンプ」
デビルベアで突進を仕掛けるVAVA。
アクセルはそれをダッシュで回避しようとするが、デビルベアを跳躍させ、勢い良く着地させることにより、地面が揺れてアクセルの身動きを阻害する。
「そらよ」
動きを止めた直後に予めしていたデビルベアのエネルギーチャージが完了し、アームによる高速のラッシュ攻撃であるデビルラッシュをアクセルに叩き込む。
「がはあっ!?」
「機動力がどれだけ高くてもそれを活かせなきゃ意味がないよな」
「(強い…!!)」
勢い良く壁に叩き付けられたアクセルは疑似血液を口から吐き出しながらVAVAを見る。
鈍重なデビルベアにも関わらず、寧ろその重量を利用して自分の機動力を削いで攻撃してくる。
デビルベアの長所だけでなく短所まで利用して攻めてくるその操縦の技量の高さは基本的にイレギュラーを認めないアクセルから見ても見事としか言い様が無かった。
「どうした?確かにデビルベアの最高の攻撃を喰らわせてやったが、これくらいでへばるわけないだろう?」
「っ…当たり前だよ」
立ち上がるアクセルにVAVAは不敵な笑みを浮かべてデビルベアの操縦を再開した。
「さあ、行くぜ坊や。こいつが避けきれるか!!」
バーニアを噴かして一気にアクセルに迫るデビルベア。
アクセルは今度は壁蹴りとホバーを駆使して回避するとブラストランチャーを構えた。
「これならどうだ!?ブラストランチャー!!」
そのまま手榴弾を連射し、デビルベアに直撃させる。
「チッ!!」
爆風によってバリアがクラッキングされ、VAVAはデビルベアから弾き飛ばされた。
「喰らえ!!」
即座にアイスガトリングの氷弾を弾き飛ばされたVAVAに見舞うアクセル。
「フライトショット!!」
対するVAVAは氷弾を数発受けてしまうが、それで簡単にやられてくれる訳もなくキャノン砲からエネルギー弾を連射して相殺していく。
「スパイラルマグナム!!」
「ファイアストリーム!!」
貫通力に優れたマグナム弾をかわしながら炎の竜巻を繰り出して反撃するVAVA。
アクセルの攻撃は単発の威力よりも手数を重視しているために並みのレプリロイドより防御力が高いVAVAからすれば攻撃を受けても逃れるのは容易だ。
「なら…」
取り出すのはルナの愛銃であるAバレットだった。
本来の使い手ではないアクセルではその性能を十全に扱うことは出来ないが。
「そのバレットは壊れた姫さんの物か?あんな出来損ないの物を使うとはいじらしいな坊や」
「黙れよイレギュラー。ルナを侮辱するな…出来損ないかどうかお前の体に思い知らせてやる!!」
ホワイトアクセルを解放してエアダッシュでVAVAに肉薄するアクセルはルナのバレットを構えたまま、VAVAに壁蹴りの要領で蹴り飛ばしてロックオンする。
「ホーミングショット!!」
バレットの銃口から放たれるのは高いホーミング性能を持つレーザーであった。
アクセルが本来の使い手ではないためか、威力に違いはないが速度や性能が変化している。
しかし、レーザーの威力は素晴らしくVAVAのボディに傷を負わせていく。
「ぐっ…」
「これがお前が馬鹿にしたルナの力だ!!」
徐々に弾の勢いは増していくが、本来の使い手ではないアクセルではホーミングショットの弾数に限りがあり、一度使い切るとエネルギーの回復を待たねばならない。
しかし、ルナのバレットのエネルギー回復を待つ必要はない。
アクセルは自身のバレットを使って追撃をする。
「ふん、中々器用なことをする坊やだな…性能が異なる武器を同時に扱うとは」
「どんな時も臨機応変に戦え、僕の養い親の言葉さ」
「ふん…ならばこいつは耐えられるか!?ヘキサインボリュート!!」
VAVAの全身から雷撃が放たれた。
ドクラーゲンのスペシャルアタックであるサンダーダンサーと似たような技だが、出力はドクラーゲンより上のように感じられた。
「…ステルスモード!!」
即座にコピー能力の応用である光学迷彩を発動する。
「コピー能力の応用で光学迷彩とは驚いたが、そんな物で俺のスペシャルアタックは…何!?」
電撃はアクセルがいるらしい場所に降り注ぐが、全て逸らされてしまう。
「(特殊な力場が発生しているのか?それで俺のヘキサインボリュートの電撃が逸らされている…ちっ…厄介だな)」
このままではエネルギーの無駄遣いだと判断してヘキサインボリュートの発動を解除する。
「このステルスもルナから教えてもらった物さ。そしてこの状態の時の僕は」
ステルスを維持したままエアダッシュし、至近距離でのアイスガトリングを見舞う。
「ぐおおおお!?」
今までとは違う威力にVAVAは目を見開きながら何とか耐え抜く。
「攻撃力が大きく上がるんだ!!」
片手にバウンドブラスターを持ち、もう片手にルナのバレットを構えて再びVAVAに蹴りを喰らわせることで体勢を崩すとホーミングショットを連射し、エネルギーが尽きたらバウンドブラスターの反射エネルギー弾を喰らわせていく。
反射の軌道は流石のVAVAも読みにくく、ホーミングショットを受けていたこともあって全弾被弾してしまう。
「ぐっ…」
あまりのダメージ量にとうとうVAVAは膝をついてしまい、アクセルがステルスを解除してスパイラルマグナムを構えた。
「終わりだよイレギュラー。僕がプロトタイプだからって舐めていたのが敗因だったようだね」
確実に殺すために貫通性能が高いスパイラルマグナムを選んだことにVAVAは胸中で苦笑する。
まだ幼いが、それ故の冷酷さを持つようだ。
アクセルの言う通り、アクセルが新世代型のプロトタイプであるために彼をどこかで見くびっていたのが自身の敗因だった。
「まさかこの俺がエックスやルインでもなくこんな坊やに負けるとはな…だが、俺を倒してシグマを倒したところで流れは戻ることはない…お前達がいる限りイレギュラーは絶対に消えん」
「関係ないね」
冷淡な声で言うとスパイラルマグナムのトリガーを引き、VAVAの頭部を吹き飛ばすアクセル。
「あんたみたいなイレギュラーが何度現れても僕が何度でも倒してやるさ」
物言わぬVAVAの亡骸を放置してアクセルは先に向かって突き進む。
目指すは全ての元凶であるシグマの元に。
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