女神と星座の導きによりて
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番外 ミロ
真名が居なくなった。
アテナがアイオロスに暗殺されかけて、その場に居たらしい。
教皇から聞かされたのは……、
真名がアテナを救った事。
サガと共に行方不明になったらしい事。
真名とは、もう会えないかもしれないという事……。
アテナを救ったという事は英雄じゃないか!なんで姿を晦ます必要がある!?
なんで、居なくなったんだ!
忘れたのかよ!
約束したじゃないか!
サイコキネシスを扱て小宇宙のコントロールが上手くなったら、皆と一緒に食べるアップルパイを作ってくれるって!
俺、アンタレスを撃てるようになったぞ!
アロエヨーグルトだってカミュと楽しみにしてたのに!
他にもお前から教わる事が一杯あるんだ!
だから、帰って来いよ!
真名!!
□■□■□■□■□■□■
「カミュ……」
「……なんだ?ミロ」
此処はカミュの守護する宝瓶宮。
カミュの小宇宙の影響で少し寒いけれど、我慢できない程ではない。本来なら。
……真名が居なくなった日から今日で一年。
あんなに皆で修行したり、皆で菓子食ったりしてたのに、それがぱったり無くなった。
カミュだって平気そうにいつもの無表情でクールに徹してるけど、この宝瓶宮は一年前に比べると寒さが倍になっていた。ぶっちゃけ我慢できん程寒い。
でも、今日の自主練が終わってカミュの所に来てみると、いつもより寒さが落ち着いている気がする。
何かあったのか。
そう思って、とにかく宝瓶宮の居住部屋に行ってみた。
扉を開け、リビングの椅子に座って何か手に持っている。
紙の様だ。
「宝瓶宮の中がいつもより冷気が少ないが何があった?」
「……」
カミュは一瞬目を伏せたが直にこちらに目線だけ合わせて、手に持っていた紙を俺に渡してきた。
「なんだ?」
あいす、ぼっくすくっきー(かみゅくっきー)の作り方……?
「ん?」
クッキー?
「真名からだ。」
「は?」
真名からだと?
「アフロディーテが真名の部屋の机の中から見つけたらしい。私達、全員分あるそうだ」
全員?
「俺の分もあるのか……!」
カミュから渡されたクッキーのレシピ紙を近くにあったテーブルに叩き置いた。
「恐らくある。行ってこい」
カミュに挨拶のつもりで片手を上げて軽く振り、宝瓶宮の居住部屋から駆け足で出て行く。
真名からの手紙!
俺は急いで双魚宮に走って向かった。
カミュの手紙には書いていなかったと思うが、真名の行方を知れるキッカケになるのではと思ったのだ。
「アフロディーテ!」
目当ての人物は直に見つかった。まるで待っていたかのように。
「……ああ、ミロか。君にはまだだったな」
そう言って、居住部屋から封筒を持ってくる。
我慢しきれなくて直に開けようとしたが、俺のではない別の手によって阻まれた。
「此処で開けない方が良い」
そうアフロディーテに言われ、どういう意味なのか分からなかったが、とりあえず言う通りにした。
軽く礼を言って急いで自分の宮に帰る。
何が書いてあるのか、その内容に期待が膨らんで鼓動が早くなっていた。
急いで帰っていたからか、下りだからか、どちらか分からないが、思っていたより早く天蠍宮に着いた。
居住部屋に入り、直に封筒を開ける。
真名は一体俺に何を伝えたかったのか。
今更になってハタっと冷静になる。
カミュにはクッキーの作り方だった。そんな内容で、俺に真名の行方を知らせる様な事を書くだろうか。
とにかく、読んでみないと始まらない。
そう思って折りたたまれた紙を広げる。
「は?」
俺は確かに最初期待した。真名の行方のヒントになるのではないかと。
だが、この手紙の内容を見て冷静になった。そう、冷静になったのだが……。
「”ロドリオ村の出入り口から北に向かって歩け”?」
手紙にはそれしか書かれていなかった。
一体どういう意味なのか。
俺は日の高さから見て夕方にはまだ早いと判断し、今から行く事にした。
十二宮を下り、最初となる白羊宮に着く。
双児宮は真名と同じく行方不明になっているので無人の宮だが、白羊宮の主は行方不明になったのではない。大分前に前の修行の地に戻ったのだ。
ムウは手紙の事を知っているだろうか。
もしかしたら一番最初に渡さているかもしれないと予想ではあるが、そう思う事にした。とにかく、今はロドリオ村に向かわなければ。
聖域から出てテレポーテーションを使い、ロドリオ村付近に到着する。
そして、村の出入り口に着き、手紙の内容を確認した。
「ここから北か……」
そう呟き、歩き出す。
しばらく歩くと農園に出た。こんな所に農園なんてあったんだな。
そこでまさか目的地はここじゃないよな?と思っていると背後から人の気配がして振り向く。そこにはつなぎを着た少し年老いた男が歩いて近付いてきた。
「ああ、貴方様はミロ様ではありませんか。お待ちしておりましたよ」
”待っていた”だと?
俺が少し不審に思っていると
「真名様からお預かりしているものがあります。着いて来て下さい」
そう言って男は歩き出す。
とりあえず、それに着いていくことにした。
農園の中を歩き、しばらくすると
「こちらが、真名様よりお預かりしていた。”木”でございます」
俺は唖然とした。
何故かって?何故なら……
「林檎の木……」
そう、真名からの俺宛の物はレシピでも行方のヒントでもない。
”林檎の木”だった。
「馬鹿……野郎」
真名は馬鹿だ。俺は”皆で食べれるアップルパイ”が食べたかったのであって、”皆で食べれる林檎”を望んでいた訳ではない。だが、これは……。
「ミロ様、あと、これを……」
男が収穫小屋から封筒を持ってきた。俺の名前が書いてあるからどう見ても俺宛だ。
それを受け取り、その場で封筒を破き中身を取り出す。
そこには
「……ははっ。やっぱり馬鹿だな真名は」
封筒の中身、手紙を開いて読んでみた。
そこには
”知ってますか?ミロ。ギリシア語で林檎ってミロっていうらしいですよ!はっはっは!思う存分ご自分を食すが良い!なんてね。”
真名は馬鹿だ、そんな事知ってる。俺はギリシア出身だぞ?知らない方がおかしい。
その時、頬に何か流れる感覚がした。頬を拭って見ると、俺はどうやら涙を流しているらしい
こんな事で泣くだなんて俺はいつから涙脆くなったんだ。
あと、手紙の最後には
”皆で美味しく食べてください”
なぁ、真名。
アイオロスがアテナを暗殺未遂をしなければ、お前はまだ此処に居たのかな……。
真名が居なくなって、皆バラバラになってしまったぞ。
早く、聖域に戻って来い。馬鹿者め。
後書き
まさかの真名がアテナの救世主……。
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