女神と星座の導きによりて
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星17 転移
あれから一週間位立ったでしょうか。
記憶がまだ曖昧ですが、ちょっとづつ戻ってきました。
私が元魚座の黄金聖闘士であった事。
アフロディーテという弟弟子が居る事。
双魚宮で暮らしていた事。
宮の裏で花園を育てていた事。
今はこの位ですね。
でも、何故でしょう。とても大事なモノ……ひと?でしょうか……忘れている様な。
胸の靄が取れません。
サガやディーテ達には言わない方が良いという予感がしますね。
本当になんなんでしょう?
まぁ、今は話さない事にしてます。
それから、私は教皇宮、サガの寝所の隣にある部屋、そこに今は住んでいます。
なので教皇……サガが合間を見て会いに来てくださってます。
いつも私に優しいです。なんていうか壊れ物に触れるかのように優しい……優しいんですけどね?
……実はもう、サガのもう一つの人格、白髪のサガに会っていたりします。
その時に言われたんですけど、
「お前はもう何処にも逃げられん。お前は、私のモノだ。絶対にこの部屋から出るな。良いな?」
えーっと?うん。
善サガはまるで恋人の様に扱ってくれて、悪サガは所有物的な?感じで接してきますね。
でも、共通点があるんですよ。まるで私がどこかに消えるんじゃないかって怯えているんです。悪サガはそんな素振り見せませんけど、ふとした時に不安そうな顔になるんです。一瞬なんでわかりにくいですけど。
何故そんな事に怯えているかというと、かれこれ二日前、とても美しい輝きが私を包み込んで、この部屋からアテナ神殿の寝所に転移した事がありまして……。
まるで誰かに呼ばれているかの様なのです。
一体誰が私を呼んでいるのでしょう?
なんだかその輝きを拒んではいけない様な気がするんです。
そう思っていたからでしょうか。
確か、コレってフラグっていうんですよね!
それが立ちました。
私が輝きの事を考えていた夜の事。
「真名!」
サガが青褪めて私の名を呼んで見つめます。
私の周りに前回よりも強い輝きが包み込んでいるからです。
「サガ」
そうサガを呼んだ時に、その瞬間気が付くと私は、また転移していたのです。
今度はアテナ神像の前まで。
今日は此処までで、おしまいなのかと思いましたが、また輝きが私を包みます。
ディーテ達に会えなかった事が残念です。だって、きっと、もう此処ではない別の場所に行く事になるかもと予感していたから。
「真名!!」
どうやらサガが短時間で私の小宇宙を探り当て、アテナ神像まで走って来てくれた様です。
「真名!行くな!!」
すごい必死な形相で私に叫ぶサガ。
「サガ……」
わたしはどこにもいきませんよ。
そう微笑んで、唇を動かしましたが、声が出ていたかまでは、わかりませんでした。
ただ……遠くで泣いている声が聞こえます。
ああ、抱きしめて慰めてあげないと、罪の意識で涙が止まらない貴方を放っておけません。
でも、今回は罪の意識ではないのですね。
ごめんなさい、ごめんなさい。サガ。
何処にも行かないと言ったのに……少しの間離れる事になるみたい。
でも、いつかは貴方の傍に……貴方を抱き締めて、こう言いたいのです。
大好きです、サガ。どうか泣かないで?
…………
そして、私はある場所で発見されます。
ギリシアから遠く離れた地。
東にある小さな島国、日本。
その国に存在する大財閥、グラード財団。総帥、城戸光政公の屋敷の庭で私は倒れていました。
赤子のアテナによって導かれて。
□■□■□■□■□■□■
うわあああああああ!
うがあああああああ!!
は ず か し い !
なんて、なんて恥ずかしい!!
いや、確かにサガの事は好きですよ!?記憶なかった私、超乙女過ぎませんかねぇ!?
すんごい恥ずかしい!!顔から溶岩が!出ないけど!そん位の熱が顔から出る!!
うああああああああ!ベッド広くて良かったぁ!ゴロゴロ転がっても落ちない広さ!ふかふかです!ありがとうございます!!
とにかく!それは端っこに置いておきましょう!恥ずか死ぬ!!
この城戸邸の深窓の令嬢よろしく、深窓の眠り姫だった私はお医者さんの話では三日眠っていたそうで。その眠っている間に記憶も安定したのか、しっかり記憶が復活しています。手厚く介護してくださってたみたいですね。
そういえば、あの輝きの正体なんですが、どうやらアテナによるテレポーテーションだったみたいですね。何故アテナが私を此処へ転移させたのかは謎です。そもそも赤子の身でそんなことできるとかビックリなんですけど。
”彼”が私が庭に現れた時もアテナの小宇宙を感じたらしいのです。誰がですって?後でわかります。
お医者さんからもう歩いても大丈夫とお達しを頂き、私はとある部屋へ行きました。中々厳重な扉です。警備の人も居ますが、私は顔パスで中に入れます。
何故ここまで手厚くしていただいて、顔パスまで自由なのかというと……。
とある男性の言葉と、屋敷の主、光政公のお達しで自由に歩けるようになっているのです。
ちなみにとある男性というのは……、
「アイオロスー?入りますよー」
ノックをして扉を開け、そっと部屋に入ります。
部屋の隅にある大きなベッドに色々な機械でコードや、チューブ、点滴等で繋がれている男性。アイオロス。
そう、彼は生きているのです。
どうやら私が渡したキュアローズを使ったようで、一命を取り留めた様ですが、完全には治らなかったみたいで、時々目を覚ますのですが、お医者さんの話では、その時々でも意識があり、目を開ける事が出来るのが不思議なほど傷ついているそうです。でも、後遺症で喋れなかったり、足が動かせなくなっていたりしているかもとの事で……。
まぁ、小宇宙を燃やせば立てたり、ある程度歩けるでしょうけど。
でも、アイオロスは意識が戻った時、小宇宙を燃やせません。いえ、燃やしませんと言った方がいいでしょうか?
テレパシー等の簡単なモノであれば大丈夫ですが、もしもそれ以上の理由で小宇宙を燃やせば、恐らく聖域にアイオロスが生きている事がバレる可能性はゼロではありません。なので、極力小宇宙を使わない様にアイオロスは基本、眠っています。
え、でもなんでアイオロスがそんな状態でよく私の事を話せたな?って?
サイコキネシスがあるじゃないですかー。簡単なモノでしたらメモ用紙に文字を書く事なんてお手の物。つまり、私の小宇宙を感じ取ったアイオロスが光政公にサイコキネシスで紙に文字を書き、私の事を伝えて今の状況に繋がる訳です。
しかし、こう反応がないという事は眠っているみたいですね。ちょっと顔を見に来ただけなので直に退散しますか。
━━━━━真名か……。
「あ、アイオロス。起きたんですね」
━━━━━ああ。……真名、私が起きている間に君に言いたい事がある。聞いてくれるか?
「はい、良いですよ。なんでしょう?」
━━━━━すまなかった。この一年、気が気ではなかった。私とアテナが助かって、真名は一人聖域で一体でうなったのか。
あらま、もう気にしなくてもいいのにー、私は私の意志で二人を助けたかった。それだけです。
「特に酷い扱いは受けてませんでしたし、向こうでも眠っていただけだったらしいですから、気にしないでくださいな」
そう気にしなくて大丈夫ですよーっと、気さくに言います。本当の事ですしねー。
「それに、私の事より貴方の事ですよ。このままでは奇跡が起きないと、起き上がる事も出来ないとか」
━━━━━ああ、このままではアテナをお守り出来ない。早くなんとかしなければ……。
ああー、焦ってますね。仕方ないことですけど。でも、此処には私が居るのですよ!
「そう言うだろうと思いました、大丈夫ですよ。アイオロス。任せてください」
━━━━━真名?
「光政公に頼んでお庭の端をお借りしようと思いまして」
そう、キュアローズを育てるのです!聖域産ではないので品質は落ちますが、効果はちゃんと出るハズです。主に私の血を使っていますからね。
「キュアローズであれば直にとまでは言えませんけど、起き上がる位までは回復出来るハズです。それに何より、追手が来たとしても私が此処に居ます。」
私はもう”元”ではありますが、黄金聖闘士だった身。自分しか戦う人が居ないと思ってもらっては困りますね。思わずニヤリと笑ってしまいました。
━━━━━真名……。ああ!私が回復するまで、よろしく頼む。
「ええ、任せてください。アテナは私達でお守りしましょう」
これから現れるであろう、五人の青銅聖闘士達が現れるまで。いいえ、それ以降も出来る事なら……!
アテナ、どうか健やかに、穏やかにお育ちください。
……ただし、教育は厳しくしますよ。
ええ、立派な淑女にしてみせます!馬になりなさい。なんて、言わせてたまるかぁー!!
後書き
まさかの彼登場です。
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