ある晴れた日に
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357部分:天使の様なその二
天使の様なその二
「そうよ。まあ一応は」
「一応は?」
「普通に街にある場所だから」
そして今度はこんなことを正道に言ってきた。
「だから。入るのはまあ恥ずかしいかも知れないけれど」
「一体どんな場所なんだ」
話を聞いてもいよいよわからず正道は首を傾げるばかりだった。
「そこは」
「後でわかるから。けれどね」
「そこに行くんだな」
「そうなの。御願い」
また正道に対して言ってきたのだった。
「二人でね」
「わかってる。じゃあ皆に見つからないようにしてな」
「ええ」
観覧車の中でそんな話をした。そうしてその話が一段落してから景色に目をやった。下には遊園地の様々な施設やそこを行き交う人達がいた。二人でその施設や人達を見るのだった。その中でまた未晴は正道に対して言ってきた。その下のある場所を指差して。
「ほら、あそこ」
「あそこ?」
「あそこあのお化け屋敷よね」
彼女が指差したのはそこだった。二人が入ったあのお化け屋敷だった。そこを指差してそのうえで正道に対して言ってきたのだ。
「あれが」
「そうだな。あそこだな」
正道は未晴が指差したその場所を見て答えた。
「あんなに小さいのか」
「そうね。本当に小さいわね」
未晴は今度は正道のその言葉に対して頷いた。そのままお化け屋敷を見ながら。
「中にいた時はあんなに広く感じたのに」
「あそこにあるのはミラーハウスだな」
「あっ、そうね」
今度は正道がある場所を指差した。見ればそこも確かにあのミラーハウスだった。
「あそこがそうね。ミラーハウスよね」
「ミラーハウスもここから見たら小さいんだな」
正道はそのミラーハウスを見てまた同じことを言った。
「あんなに小さいのか」
「不思議よね」
そして未晴は今度はこんなことも言うのだった。
「ここから見たら何でも物凄く小さく見えるわ」
「まるでミニチュアだな」
そして正道はこんなふうに言った。
「あれだけ大きかったものが全部な」
「ミニチュアなのね」
「表現がおかしいか?」
「おかしいって言ったらおかしいわね」6
くすりと笑ってそれに頷く未晴だった。
「だってミニチュアって」
「あんまり小さいからな」
正道は今度はこう述べたのだった。
「そう見えたけれどな」
「おかしいのはね。変ってことじゃなくて」
そういう意味ではないというのだ。この辺りはしっかりと考えている未晴だった。
「面白いってことよ」
「ミニチュアみたいに見えることがか」
「ええ。言われてみれば本当にそうね」
そしてこうも言う未晴だった。
「上から見たらね。何でもそうね」
「空から見たらもう何が何なのかわからなくなるしな」
「そうなのよね。本当に点だけになるから」
だからだというのである。
「ちっぽけな位小さく見えるのよね。本当に」
「大きいように思えたことが離れてみれば小さいんだな」
『もの』とは言わなかった。無意識のうちに『こと』と言ってしまった正道だった。
「何でもな」
「そうよね。大きいように見えてね」
未晴もそれに応えてまた述べた。
「小さいのね。離れてみてみると」
「何でもそうかもな」
「見えるものはそうだと思うわ」
未晴は見える、ということに限定してきた。
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