ある晴れた日に
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345部分:白銀の月その十
白銀の月その十
「そんなに適当で能天気でよ」
「心、鍛えてるのよね」
「何言ってるのよ、おおらかで明るく」
自分ではこう言っているから始末に終えない。
「それが私じゃない」
「いいように言葉取ってない?」
加山がその静華に突っ込みを入れた。
「おおらかで明るいって」
「けれどそうでしょ」
静華も負けていない。ソフトを食べながら明るく話す。
「私細かいところにこだわらないし明るいし」
「まあそうだけれどな」
「それはね」
五人組の面々も今回は苦い顔で頷いていた。
「けれど自分で言うのは」
「どうかしら」
「いいじゃない、誰も困らないし」
静華はやはり能天気であった。
「私がいい気持ちになるだけだし」
「やれやれ、全く」
凛がここまで聞いてふう、と溜息を吐き出す。呆れた顔と目で。
「そんなのだからあんたは能天気だって言われるのよ」
「そう言われても気にしないのね」
「うん、全然」
奈々瀬に対しても同じ返事だ。やはり能天気な調子だ。
「それで誰かに迷惑かけたのなら別だけれどね」
「まあ迷惑はかけてないわ」
「それはね」
これは皆が認めるところだった。
「あんた人に迷惑かけたりはしないからね」
「それはないよな、確かに」
「それはお父さんとお母さんに厳しく言われたのよ」
ここで自分の両親のことを話に出す二人だった。
「お兄ちゃんにもね」
「人に迷惑はかけるな、なのね」
「そういうこと。だからそういうことは気をつけてるわ」
流石に静華も今は少しばかり真面目な顔になっている。
「あと悪い奴は許すなってね」
「立派な御両親じゃねえか」
「そうだよな」
このことには男組も感心して頷くことしきりだった。
「能天気なのは放置したみたいだけれどな」
「それはな」
「だから。能天気でも自分に対して適当でも人に迷惑はかけないじゃない」
静華はあくまでこう主張する。
「それでいいんじゃないの?気楽に考えてね」
「まあそうだけれどな」
「っていうかおめえが暗かったらこの世の終わりだよ」
男組も実際のところ静華のその明るさは気に入っているのである。もっともこのクラスはほぼ全員がかなり明るい性格なのであるが。
「しかし悪い奴は許すなか」
「武道家らしい言葉だよな」
「これでも活人拳なのよ」
静華はこのことも皆に語るのだった。今度は少しだけ誇らしげだ。
「うちの道場はね。だから心の鍛錬を重要視してるのよ」
「それでも急所攻撃はするのね」
明日夢はそのことを静華に尋ねた。
「それは」
「だから。あくまで非常手段よ」
「そんなの間違っても普通にやるんじゃねえよ」
「死ぬだろうがよ」
男組は血相を変えてこう言い返す。
「死なないまで人生終わりじゃねえかよ」
「考えただけでもおっかないんだけれどよ」
「他にも目潰しとかみぞおちとか脳天とか膝を狙う技もあるわよ」
静華はこれまた実にしれっと言ってみせてきた。
「後は肘とか肩甲骨とか。そういうの場所を攻撃するのもね」
「あの、静華」
明日夢の言葉は今度はかなり引いたものだった。額から汗が流れているがそれは決して夏の日差しの暑さのせいではない。それもあるが分量としては僅かなものだ。
「あんたのお家の空手って本当に活人拳なの?」
「そうだけれど」
しれっとして明日夢に答える。
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