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ある晴れた日に

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339部分:白銀の月その四


白銀の月その四

「少しな。いやかなりか」
「かなりなの」
「普通のお化け屋敷なら一人でも入られる」
 それは大丈夫だというのである。
「けれどな。ここは無理だな」
「わかるわ。確かにここは無理よね」
「また生首か」
 ソファーの上に数個丁寧に並んでいる。少し見ればその生首が実際に生身の人間がメイクしたものであることがわかる。それだけに不気味であった。
 そしてその生首が叫んできた。マンドラゴラのように。
「こんなのだからね」
「何度見ても肝が冷えるわね」
 二人はその叫び声を横で聞いて少し引いていた。生首はそれに留まらず今度はけたたましい笑い声を立ててきた。さらに不気味であった。
「こういうのは」
「全くだよ、ここだけはな」
「それで一番怖いのは」
 しかもまだあるのだった。
「霊安室だけれど」
「出口の前のあそこだな」
「今からあそこに行くのよね」
 少しばかり溜息を出す未晴だった。
「これから」
「行くしかないしな」
 正道の言葉も少しばかり困ったものになっていた。
「出たければな」
「何時までもここにいるなんてできないしね」
 お化け屋敷に何時までもいるわけにはいかない。それは流石に誰も考えないことだ。そのお化け屋敷が怖ければ怖い程。
「やっぱり。行くしかないのね」
「そうだな。行くしかな」
「わかったわ。それじゃあ」
 こうして二人でその霊安室に向かう。しかしここで。
 二人はそのまま霊安室に向かう。霊安室は最初から扉が開いていた。そこに二人横に並んで入るとまずは暗がりの部屋の左右にそれぞれ遺体を置くベッドが並んでいるのが見える。
 ベッドはまずは平穏であるが何処にも遺体が置かれている。遺体はどれも暗がりの中でよくは見えないがそれでも何か得体の知れない雰囲気に満ちている。二人がその部屋に入るとであった。
 不意に遺体達が一斉に起き上がり二人のところに来る。まるで襲い掛かるようにして。
「えっ、来たの!?」
「いきなりか」
 二人は彼等のこの行動に驚きの色を見せた。前にいたカップルはもうそれだけで慌てて出口の方にに逃げ出してしまっていた。
「こっちだ、こっちだ!」
「きゃーーーーーっ、きゃーーーーーっ!」
 二人で何とか手に手を取って逃げ出している。とりあえず仲のいいカップルなのはわかる。しかし二人は今はそれどころではなかった。
「音橋君、来たけれど」
「安心しろ、こっちだ」
 遺体というかゾンビ達が真正面だけは空けているのを冷静に見ていた。
「このまま行けばいい、このままな」
「大丈夫なの!?」
「ああ、大丈夫だ」
 確かな声で未晴に述べた。
「歩いていけばな」
「そうなの」
「じゃあ行くぞ」
 咄嗟に未晴を自分のところに抱き寄せた。
「怖がることはないからな」
「音橋君・・・・・・」
「俺がいる」
 こう言うのだった。
「だから。安心していい」
「安心していいのね」
「ああ。だから行くぞ」
 また未晴に告げていた。
「出口までな」
「わかったわ。それじゃあ」 
 正道に寄り添ったうえで彼に答えた。
「行きましょう、このまま」
「出口までな」
 ゾンビ達も本当に襲ったりはしてこなかった。
 
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